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11話

 あれから、また3か月が過ぎた。


 今日は珍しくもオルキスさんが来ている。何か用でも?と聞いたら、話があると返答があった。


「……イツキ、単刀直入に言う。そなたの嫁ぎ先が決まった」


「え、早くないですか?」


「いや、遅いくらいだ。ちなみに婚姻相手はあのローザの兄君だ」


 あたしは驚きのあまり、固まる。ローザさんのお兄さんだって?!

 ちょ、ちょっと待ってよ!

 頭が追いつかない。どういうこと?


「……あの、ローザさんって兄弟がいたんですね」


「ああ、正確に言うと。異母兄だがな」


「けど、いいんですか?」


「何がだ」


「あたしなんかが嫁いだら、先方様のご迷惑になるのでは?」


 かなり、ネガティブな発言だとはわかっているが。それでも、口にせずにはいられない。オルキスさんは何とも言えない表情になる。


「……イツキ、そなたは何を言っている。あたしなんかだと?」


「いや、事実と言いますか」


「バカなことを言うな、謙遜はしてもいいが。卑下をするのはダメだ。そんな自己評価の低さでは、この先やっていけんぞ」


「はあ」


「……イツキ、そなたの相手だが。オーランド・ウェイリー公爵だ。彼がローザの兄君になる」


 はい?

 こ、侯爵?それとも、公爵?

 あたしはパクパクと口を開け閉めすることしかできない。よりにもよって、辺境伯嫡男に現侯爵に現公爵って。な、何でたかが知れてる側妃のあたしがそんなお偉方と結婚できんのよ!

 内心でのたうち回る。


「…………ちなみに、一番家格が上の公爵家の当主だ。オーランドもそなたの事情は知っているぞ」


「あ、そうなんですね。ウェイリー公爵閣下は独身なんですか?」


「ああ、未だに婚約者もいない。ちなみに年齢は22歳だ」


 年齢を聞いて、あたしはまたも驚いてしまう。まだ、若いじゃないの。まあ、あたしも20歳ではあるが。そんなに離れていないからか、ちょっとだけ親近感が湧く。


「まあ、まずは。婚約をしてもらう。期間は3年だ。それまでに身につけるべきことは沢山あるぞ」


「……はあ、わかりました」


「では、話はこれまでだ。後宮には3年間はいてもらう。そなたの頑張り次第ではあるが」


 オルキスさんはそう言って立ち上がる。もう、話すことはないからとサッサと部屋から出ていく。あたしは見送りながら、ほうと息をついた。


 現在は12月で季節は冬だ。おかげで、寒さに震え上がりながら毎日を過ごしている。ローザさんもとい、マリーローズさんが色々と防寒具を譲ってくれた。

 ちなみに後でローザさんの過去話を聞いた。オルキスさんがウェイリー公爵様のことで話しに来た後にだ。

 ローザさんは謝ってから、ポツポツと話してくれた。

 確か、ローザという名前は元々、二つ名もといニックネームらしい。本名はマリーローズ・ウェイリーさんという。

 ローザさんのお母さんは平民の出身らしく、先代の公爵様の愛人だそうで。つまりは自身は庶子だと彼女は言っていた。お母さんは名前をマリーさんといい、明るくて朗らかな女性だったらしい。

 ところが、マリーさんはローザさんが13歳の頃に流行り病で亡くなる。

 ローザさんはお葬式をすませた。それから、半月後にウェイリー公爵家から迎えが来る。先代の公爵様が数年前からローザさんのことを探していたと聞かされたとか。

 公爵邸に引き取られてからは、毎日お勉強に武術の鍛錬と忙しない期間だったとローザさんは苦笑いしていた。成人年齢である18歳になってからはお兄さんに頼み込み、王宮の諜報部に就職する。こうして、現在に至ると彼女は話を締め括った。


「私は本当は後宮の女官ではないんです、諜報部隊の隊員ですから。けど、陛下の命もあってあなたの護衛兼お世話係をしています。まあ、やぶさかではないんですがね」


「そっか、陛下には感謝しないとね。あたしに3年間は後宮にいていいとおっしゃっていたし」


「そうだったんですか、なら。余計に私どもも頑張らないといけませんね」


 あたしはローザさんと頷きあった。しばらくは、あたしの過去話も聞いてもらった。


 ゆっくりと時間は流れていく。早くも、あたしがバルサリーニ王国に来てから、半年が過ぎていた。既に年が明けてあたしは数え年で21歳になった。後宮にいられるタイムリミットが2年半となっている。ローザさんやアレクシアさん、エレインさんは相変わらず来てくれていた。


「イツキ様、今日は雪が降っていますよ。寒いでしょうから、厚手のショールを持ってきました」


「ありがとう、中を見てもいいかな?」


「ええ、構いませんよ」


 アレクシアさんが両手に紙袋をさげていた。受け取って中を確認していいかを訊いたら、頷いてくれる。あたしは2つもある紙袋をテーブルの上に置いた。なかなかにズッシリと重い。中を見てみると紙包みが入っており、3つはある。そのうちの1つを手に取り、包装を解いてみた。出てきたのは鮮やかな藍色の厚手のショールだ。持って広げてみたら、可愛らしい花柄が染め抜いてある。よく見ると冬に咲く山茶花によく似た花だ。


「色や柄が凄く綺麗だね、厚手で生地もしっかりしているし。早速、使ってみるね!」


「喜んで頂けて良かったです」


 アレクシアさんは嬉しそうに笑った。あたしは肩に掛けて前身頃で結んだ。確かに、空気を通しにくい感じだし暖かくはある。他の品も見てみたら、色違いのショールやマフラー、手袋やニット帽があって驚いた。皆にお礼を改めて告げたのだった。

 

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