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第24話 一件落着……?

 ほどなくして、リラとノドカがこちらに駆け寄ってきた。

「やったね、ポルタ様!」「大勝利~!」

「マジでありがとな。みんなのおかげで、なんとかなったよ」

「……あっ、ソデコ! こっちこっちー!」


 最後まで魔物と戦っていたソデコとも合流。何だかんだコイツも、MVPの一人だ。

「どうしたノドカ。全裸にマントとは、ついに痴女として目覚めたか?」

「目覚めてないよ~……。ミセリアたんに燃やされちゃったの~……」

「お前、《隠身(ステルス)》の魔法が使えただろう? あれを使えばよいのでは?」

「あっ……。す、すっかり忘れてた~……!」

「……さっさと使えよな」

 そういえば、騎士団の建物に忍び込んだ時に使ってたな。アルドルに一発で掻き消されてたから、俺もあまり印象に残ってなかった。

 ノドカは早口で詠唱して、ぱっと姿を消した。世界最硬の壁役(タンク)で姿まで消せるって、コイツも大概チートだと思うんだけどな……。


 というか、これからのことを考えたら、仲間たちの使えるスキルや魔法を一通り確認しといた方がよさそうだ。……とりあえずは、ゆっくり休んだ後で。


「ふぅ、拙者も疲れたぞ。ポルタ、宿に戻ったら肩と腰を揉め」

「……まあ、それぐらいならお礼にしてやってもいいよ。魔王城には絶対に連れていかないけどな」

「チッ、つまらん……。ところで、トニトルスの最期はどうだった?」

「んー……」俺は少し配慮して「……原作再現だったよ」とだけ答える。

 しかしソデコは、パチンと指を弾いた。

「そうか! 見逃した! 口惜しいっ!」

「お前なぁ……」

 それでも推しか……。推しなんだろうな……。

 つくづく、他人の趣味はよくわからないものだと思った。


「ポルタ君……」

 今度はミコが来てくれた。剣は鞘に収めている。武器を持っていないだけで、さっきまでの勇猛な戦いっぷりが嘘のように、普通の女の子に見える。

「おう、お疲れ。ミコもだいぶ疲れただろ」

 そう言った俺の方が、ぶっちゃけ疲れきっていた。今すぐ倒れて寝込みたいぐらいだ。

「うん……少しね。でも、すごく晴れやかな気持ちなんだ」

「そっか……よかったな」

「ポルタ君のおかげだよ。ボクを支えてくれて……信じてくれて、ありがとう」

「今までの君の努力が報われただけだって。俺は、何もしてないさ」

「そんなことないよ! 今日だって必死に戦ってくれたし……。それにあの時、親身になって話してくれたの、本当に嬉しかった。ボクにあんなこと言ってくれたの……今まで、師匠だけだったから」

 ってことは、アルドルの代わりが少しは務まったってことかな。彼との友情が本物だったんだって再確認できた気がして、胸の奥がじんわりと熱くなった。


「ボク……絶対に魔王を倒すよ。それまで、力を貸してほしい」

「ああ、もちろんだ」

 ミコはたくましく微笑んでいた。今朝までの弱気な彼女とはすっかり別人だ。


 これならきっと――もう大丈夫だろう。原作とのズレはまだ残ってるけど、今後の戦いはミコやラピスたちに任せておけば、絶対にいい方向へ向かっていってくれるはずだ。

 つまり、ようやく現実世界に戻れる目途が立った。今後は毎日、放課後にでもちょくちょく様子を見に来て、異変があれば手助けするって感じで事足りるんじゃないだろうか。

 ようやく、一安心だ。そう思った途端に体の力が抜けて、眠くなってきた。


「それで、その……。世界が、平和になったらさ……――」

 と、ミコがおずおずとこんなことを言ってきた。

(ああ、ドレスを着たいってことか)

 そんな予想を容易く裏切る一言が、耳に届く。

「ボクを、ポルタ君のお嫁さんにしてくれる?」

「…………へっ?」


 今、なんて言った? 一瞬で眠気が吹っ飛んだんだけど。


 傍で聞いていた騎士たちが皆、「おおー!」っと、どよめき出す。

 ってことは、聞き間違いじゃない……のか……?


「だ、だから、ボクを……ポルタ君の……。えっと、ボクと……結婚してください……」

「まっ……マジかよ!?」

 頭が真っ白になった。オルタナの発生に立ち会ったのと同じぐらいの衝撃だ。

 なんで、ミコが、俺と……? 全くそんなフラグはなかったと思うんだが……?


「あの、ちょっまっ――」「待つんだミコッ……!!」

 俺が口を開こうとすると、横から飛び出してきたラピスに押しのけられた。

「貴様、何を言っている……。コイツと結婚だと? ふざけているのかっ!?」

「た、戦いが終わった後の話だよ。魔王を倒すまでは、真剣に戦うから」

「そうではない! なぜ、よりにもよってこの男と……?」

 憤りで顔を真っ赤にしたラピスが問いただすと、ミコはまったく勇者らしからぬ態度で、もじもじしながら答えた。


「え、えっと……。ポルタ君と一緒にいると、師匠みたいに安心できるから……かな。師匠は年が離れてたから、そういう気持ちにはならなかったんだけど……」

「そ、それは、私も……師匠に似ていると思う瞬間はあったが……」

「えっ? も、もしかしてラピスも、ポルタ君のこと――」

「違うっ! そうではない! そうではないが、結婚には反対だ……!!」

「……ふーん、そう。反対されても知らないよ。ボクは、ポルタ君が好きなんだ。こんな気持ちになったの生まれて初めてだから、たとえラピスでも譲らないよ」

「くっ……!!」


 くるりとこちらに向きを変えるラピス。なぜか俺が、唾が飛ぶほどの勢いで怒鳴られた。

「ポルタ貴様ぁ! いつの間にミコをたらし込んだっ!?」

「えっ、あっ……ちがっ……」

「何が違う? お前が妙なことを吹き込んだのだろう? 貴様、せっかく信頼してやっていたというのに、誰彼構わず手を出すスケコマシだったのか……!?」

「だから誤解だって! 勘弁してくれ……!」


「うわー……よかったね、ポルタ様。初カノを飛び越えて奥さんができちゃった」

「うむ、めでたい。ついでにラピスも落とせそうだな」

「ポルタ様~、おめでと~! あたしも奴隷として飼ってブヒ~!」

 クラスメイト三人は勝手なことばかり言っていた。

 自分が俺の立場だったら、絶対助けを求めてただろうに……。


「だから、待ってくれよ……。俺まだ、なんも返事してないのに……」

「えっ……――」

 ミコは激しく動揺した様子で、突然力なく項垂れた。

 両目に涙を溜めて、それまでとは別人のように絶望しきった顔で――

「ごっ……ごめん。やっぱり……嫌だったよね……」

「へ……? あっ、いやその、ミコのことが、嫌いとかじゃなくてな……?」

「ボク、一人で舞い上がってたんだ。ありがとうポルタ君、いい夢を見せてくれて……っ」

「まっ、待て待て! だから、断るとも言ってないだろ……!?」

 これはまずい……。もしかしなくても、ここでフッたらめちゃくちゃ落ち込んで、今回の覚醒がチャラになるんじゃないか?

 でも結婚って……。俺、ミコには言ってないけど、本の外の人間なのに……。


「俺は単に、びっくりしただけだから! 結婚したくないわけじゃないから! なっ!?」

「じゃあ……結婚してくれるの?」

「そっ、それは、まあ……なんつーか……」

「して……くれないんだ……」

「あっ……あのな! 今は急すぎて、気持ちの整理がついてないだけなんだよ! 魔王を倒すまでには、ちゃんと返事するから……!!」

「本当に!?」

「うっ……――」

 俺が長い間を置いて「うん」と頷くと、再び騎士たちの歓声が上がった。つまり彼らが証人になってしまったので、適当にごまかすことはできなくなったってことだ……。


(どうする……《忘却魔法(オブリヴィオン)》を使うか? でも、ミコが俺を好きなのが変わらないなら無意味だよな……)なんてゲスなことを考えていると、リラがクスクス笑いながら言った。

「ちゃんと責任取りなよ、ポルタ様。なんでもチートで片付けようとせずにさ!」

「……見抜かれてんのかよ」


「フッ、当たり前だろう。もはや、お主の考えぐらい読めるわ」

「ポルタ様ったら、最低の外道……。あ~ん、たまらないよ~……」

「……それ、誉め言葉になってないから」

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