コミカライズ連動 エメラルド王国との戦争中 苦労人公爵
コミカライズでついにこの方が出たので(*'ω'*)
(あ、危うい……危うすぎる……!)
よりにもよって第一、二、三王子だけではなく、王であるアーロンすらも戦場に行くことが決定したため、後に苦労人公爵として名を残すアボットは崖っぷちに立たされていた。
(それならまだ、第三王子が残ってくれた方が最後の保険になったのに……)
サンストーン王国存亡の危機に、王族全員が出陣するのはまだギリギリ理解出来る。
だがきちんと準備したレオの計画を無視して、遠征軍に王族全員が合流するのは馬鹿げているとしか言いようがなく、万が一があれば国家が傾いてしまうだろう。
それならいっそ、実質追放されているとはいえ王族直系のジェイクだけを残し、アーロン王とジュリアスがレオを追いかけた方がマシだった。
(最悪の場合は恐らく無残に縮小するだろうが、それでもサンストーンの名は続く筈……)
尤もジェイク一人が残っても、かなり立場が弱い王が誕生してしまうし、残されたレオ派とジュリアス派が好き勝手して、サンストーン王国が縮小するのは間違いない。
しかし、アボットが死を覚悟して盛り立てたら、なんとか国の名が残る程度の勢力は維持出来る筈だった。
(いかにレオ殿下が【戦神】とはいえ、味方が足を引っ張るとどうなるか分からない……)
不敬ではあるが、国家に関わる者として当然の疑念をアボットは抱いた。
スキル【戦神】を持つレオでも、より大きな権限を持つアーロン王が邪魔をすると、敗れる可能性は十分にあるように思えるのだ。
しかもそこに、常日頃から敵対しているジュリアスまで加わるのだから、救いようがない状態に陥っても不思議ではない。
(それに私の軍も練度はよくない……やはり保険は必要だな)
アボットは自分も省みる。
彼の領地は他国と国境を接していない山間部が多いため、兵は自領の安全を守るために存在する。勿論、他国との全面戦争を想定した訓練はほぼ行っておらず、レオが率いる主力軍の活躍がなければ厳しいだろう。
「バート」
「はっ」
アボット公爵が呟くように名を呼ぶと、三十代後半の逞しい男性が影から現れた。
まだ未来の話だが、アボット公爵に手紙を託されたはいいものの、レオとジュリアスが政治的に木っ端微塵に弾け飛び、その扱いで心底苦労することになる裏方の人間だ。
「我が軍がエメラルド王国に敗れた最悪の場合、第三王子を連れて逃げよ」
「はっ。閣下はどうされます?」
「殿軍が必要か否かによって変わってくる」
「……」
「頼んだぞ」
「はっ……」
アボットはバートに、ジェイクの命を守れと厳命する。
ジェイクの世話を任せるという王命を承った以上は、家臣としてそれを成し遂げる必要があった。
そして全軍壊走なんていう最悪中の最悪が起こった場合、アボットも死地に立たなければならないため、信頼できるバートに後のことを任せるのだ。
(ジュリアス殿下は思慮が足りない……いや、人のことは言えないか。私だって若い頃に戦が起これば武功を求めるだろう……それでも途中から口を挟むことは……)
貴族としての責務を果たす立場のアボットは、物言いたげなバートを敢えて無視して次の王位について考えた。
アボットだってレオやジュリアスと同じくらいの年齢だったら、男としての価値を証明するため武功を求めただろう。
しかし、戦略方針が決定した後に立ち上がり、それをぶち壊すのは酷い行いだ。
ちなみにエメラルド王国への侵攻自体はアボットも賛成している。
というかジェイクを含めたサンストーン王国全体が肯定的で、奇襲戦争を仕掛けたエメラルド王国がパール王国を飲み込んで、国力差が大きくなるのは国家の安全保障上認める訳にはいかなかった。
(……国王陛下が自らの名のために戦場へ赴こうとしているのは間違いない。だがそれとは別に、ジュリアス殿下を王都に置くことに不安を感じたのではあるまいか?)
ふとアボットは一つの推測を思い浮かべる。
流石にジュリアスが遠征中のレオを妨害するため、兵站に工作することは考えたくなかったが、多少の嫌がらせ程度を行なう可能性は十分にあった。
それを考えるとジュリアスを戦場に連れて行けば、自分の命もかかっているので全力の補給体制を維持するだろう。
これはかなり極端な推測だが、想定しなければならない程に二人の王子はいがみ合っていた。
(早くレオ殿下に決まればいいが……)
アボット視点では、戦略を無視して口を挟んできたジュリアスへの評価は一段落ちた。
そしてレオは長男だし神の名を持つスキルだって持っている。更に明確に国防の脅威となったエメラルド王国に襲い掛かっているため、無理なく王位を継げるように思えた。
不思議なものだ。
まだ【戦神】は鞘から勝手に抜けないと思われていた。
【政神】が反逆までするとは思われていなかった。
ましてや【無能】が玉座に座るなど、想定すらされていなかった。
だが本当の想定外。
アボットが死ぬまで知らなかった存在がいた。
『おほほほほほほほほほほほほ! おーっほっほっほっほっほっほっほっ!』
世界に大きな波紋が生まれると同時に、壊れ果てているナニカが忌むべき地で光り輝く。
粛清機構が眠りこけ、才能の卵が孵っていないこの時期に抗える存在は皆無だった。
本当に可哀想(:_;)




