“エメラルド王国・パール王国戦争中の時期”・面倒臭い二王子の婚姻問題
マンガよもんが様、ニコニコ様でこの近辺の漫画話が上がっているため裏話的に投稿
隣国エメラルド王国がパール王国に攻め入ったことで、サンストーン王国も騒がしくなっていた。
(頭が痛いな……)
そんな喧騒の中、肥満のアーロン王が執務室で頭痛を堪えていた。
(レオとジュリアスは基本的な政略結婚を理解できるか?)
この王が悩んでいるのは息子二人の婚姻だ。
もういい加減、婚約者を定めなければならないのに、優劣を付けられないアーロン王はそれすら先延ばしにしていた。
もしどちらかの婚約者を先に決めれば、忽ち次の王は自分だと言い出すのは目に見えていたためだが、それとは別の問題も含んでいる。
(ジュリアスの方は多分大丈夫だが、レオはかなり怪しいな……)
恐らくジュリアスの方は政治的に割り切って女との関係を築けると思っていたアーロン王だが、レオの方はそもそも女に対する欲求があるのかと、疑問に思えるほどにストイックだ。
もしこれで嫁いできた嫁の実家から、レオが娘と夜を共にしないと苦情を入れられても、アーロン王はやっぱりそうなったかと思い、頭を抱える自信があった。
(流石のレオも断絶をするとは考えにくいが……)
一応、常識的に考えるとレオも王になれば血を残すだろうが、若干ながら不安になる程度には、アーロン王は息子を客観視できていた。
(とはいえジュリアスもレオほどに極端ではないが……)
一方、その点では恐らくレオよりマシなジュリアスも、女の噂など全く存在せず、妾がいる形跡がない。
(やれやれ。少しは父に似ればいいものを)
女好きなアーロン王は思わず肩を竦めた。
とは言え流石にアーロン王と同じ水準の好色は問題だったが、王家の血を残すという点で、レオとジュリアスの兄弟にも問題があるのは間違いない。
なお頭から綺麗さっぱり消え失せている末の息子はこの点に関してのみ花丸満点で、彼の屋敷には国を傾かせられる美女たちが勢揃いしている。
ついでに後年は子沢山だし、その子たちは様々な分野で活躍するため言うことはないだろう。
「はあ……」
溜息を吐いたアーロン王が重要な部分を思考する。
(……単純に嫁の格で張り合うだろうな。そして公爵家で揃えると決定的に国が割れる)
レオ、ジュリアス共にどちらの嫁の家格が高いかで張り合うのは目に見えている。そして簡単な解決方法に思える、一応ながらも同格の三公爵家の中から嫁を選ぶという手段を取った場合、サンストーン王国は完全に二分化してしまうだろう。
これまた余談だが、名前も思い出さない末の息子は、古代アンバー王国の双子姉妹、エレノア教女教皇とも結ばれるため、嫁の家格という点では古今無双と言ってもいい。
(エメラルド王国との戦でどうなるかだな)
またアーロン王は問題を先送りしたが、現状ではエメラルド王国との戦で、レオがどれほど活躍するかを判断基準にするしかない。
パール王国にエメラルド王国が攻め入ると、レオ派は即座に軍事侵攻の準備を整え、そう遠くないうちに遠征を行なう手筈になっていた。
(恐らく上手くいくはずだ)
軍事的知識に乏しいアーロン王から見ても、エメラルド王国の補給を根元から断ち、満身創痍で帰還する遠征軍を撃破。
その後、混乱し切っているエメラルド王国本土を占領する戦略は、分かりやすく確実性の高い王道的な戦い方だ。
後は戦術的な面でどれほど被害を減らすかが肝心で、これに成功すればレオが王。しくじればジュリアスが王になるだろう。
武功というのはいつの時代も分かりやすい判断基準となり、幾らあっても困るものではないのだ。
通常なら。
(恐らくレオは上手くやるだろう)
レオは【戦神】なのだから、アーロン王は戦争で不安を抱いていなかった。
そのためレオがエメラルド王国を降した後に、アーロン王がその武功を前面に押し出して、絡みに絡んだ王位継承問題をなんとか終わらせる算段だった。
まさかレオが王命を無視して軍権を握り続けるという、反逆手前どころか明確な反逆を行なうことなど予想外も予想外。
そしてジュリアスが、多くの貴族が見守っている中で決して退かないと宣言したのに、安全な地帯を求めて退き全軍敗走の切っ掛けを作りかけた上で、王に敬意を欠片も示さない傭兵を連れて来たのだから話にならない。
(そうなるとレオの嫁はパール王国の姫を貰った方がいいか?)
捕らぬ狸の皮算用とでも表現しようか。
この時点では、恐らくレオが王になると多くの人間が思っていた。
だからこそジュリアスが戦場に出ると言い出し、そして王の本能にかられたアーロン王までも出陣する騒ぎになってしまうが……。
顛末は無能の極みと言っていいだろう。




