後世から見た第三王妃リリー
リリー。
サンストーン王国、ジェイク・サンストーンの第三王妃。
ジェイクの王妃の中で最も謎が多く、彼女がいつ頃王妃になったかも定かではない。
第一王妃レイラが神の娘とまで呼ばれた存在だったためか、影が薄い第三王妃を誰も気にしなかったようだ。
アボット公爵を筆頭とした三公爵も面識がなく、リリーの名が貴族の日記や資料に記されることはなかった。
それ故、極端に情報が少なく経歴が不確かなのだが、近年の研究である一つの仮説が生まれた。
ジェイクには長年付き従った従者がいたようで、リリーはその妹なのではないかという説だ。
アルフレッドという名前の従者は、ジェイクがアゲート大公だった時期から資料に名前が残っており、常に彼の補佐を行い、戦場にも同行していたようだ。
しかしアゲートの生まれが確定している訳ではなく、幽閉されていた頃のジェイクの周りは色々と管理が雑だったため、使用人として正式に記録されていないアルフレッドが、ジェイクに付き従っていた可能性もある。
そしてアルフレッドは、ジェイクが即位するとやはり付き従い、今度はサンストーン王国の資料で名前が散見されるようになり、ジェイクが隠居した際も、彼の身の回りの世話をする責任者として同行したようだ。
話をリリーに戻そう。
この最も謎めいた王妃が、婚約者としての経緯を辿ったレイラ、エヴリンと違い、いきなり王妃として現れ、しかもほとんど存在を知られていない理由。
それはリリーがアルフレッドの妹でジェイクと個人的に親しいながらも、身分的には不釣り合いだったため、内密の結婚をした結果なのかもしれない。
そんな経歴に謎が多いリリーだが、他の王妃との関係は非常に良好だったようで、全員から妹のように思われていたらしく、色々と可愛がられていた記録が残っている。
余談だが、この一家がクラウスの登山と称する未来の王の人間登りは、リリーの頭部が最初の登頂で、彼女が王妃の中で最も小柄だったことが分かる。
リリーの子たちは歌や踊りなどの芸能面で才能があったらしく、王の子でありながら国政とはあまり関わりがない、特殊な家を興して文化面で活躍した。
◆
☆第三王妃リリーについて☆
王妃時代については語れるけど、どうやって王妃になったかについては一切語れない御方。
冗談のように思われるかもしれないが、本当にいきなり現れた王妃で、推測や陰謀論は数あれど、確固たる真実は全く残っていない。(というか第一、二、三王妃の経歴があやふやとか、どうなってんだこの王家?)
そのため完全にフリー素材と化し、虎視眈々と姉貴分たちの隙を伺い、チャンスと見ればジェイクを横取りしようとする女として描かれたり、酷いものになると裏の世界の帝王の娘で、ジェイクはその操り人形だった。みたいなことを述べている本がある。
真実は? 知らね。
反面、ジェイクや他の王妃の日記にはよく名前が登場しており、単なる私生活はかなり詳細が残っている。
それに加え、自分や他の王妃の子供とのエピソードも多く、子供達にとって遊びをお願いしやすい女性だったらしい。
しかしながら、リリー個人の日記は現存していない。もしくはサンストーン王家が表に出していないため、彼女の内面を我々庶民が知る術はない。
晩年は他の王妃たちと同じくジェイクの隠居に同行し、お茶やお菓子作りを探求したり、割とフットワークの軽い自身の子供が孫を連れてくると歓迎したりと、穏やかな生活を送ったようだ。
◆
作者的独り言
スーパー暗殺娘。
本編中では、本気ではあったが自身の命を含め、後先を全く考えてないマジ中のマジを発揮していない、純粋人類堂々ナンバーワンの強さ(レイラは人類の範囲外)。なおマジ中のマジはジェイクに直接危害が加えられた場合のぶち切れモードなので、起こらなくてよかったよかった。
レオ、序盤に死んだ最強冒険者イーライ、神王国の馬鹿側近の実力がどっこいで、通常なら最強争いを出来るのだが、リリーは纏めて殺せる。
作者の頭の中じゃレオもイーライもクソ強いが、それ以上にデバフまき散らしてたお嬢様がヤバかった。
理性の糸が切れて人間を完全にやめてるレイラは流石に無理だが、彼女が通常時かつ、よーいドンではなく闇討ちで、しかもリリーが捨て身ならワンチャン勝てるバグ枠。
尤も倒せたとしても、感情とか関係なく物理的に殺しきれないからレイラはやっぱ例外。首切られても普通にくっつくし、心臓が無くなったら生える。
とはいえ劣化品である【傾国】の、更なる劣化【傾城】でありながら、戦闘力という一点で【全能】に指をひっかけることが出来る史上最強の暗殺者であることに変わりがない。
歴史だけではなく神の視点すら合わせて、底を見せず歴史に埋もれた完成品。