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後世から見た神王国の前後

 クォーツ民意国との戦争直後、サンストーン王国には第一王子クラウスが誕生して、戦争の圧倒的勝利と合わさり、国中が慶事で沸き立つことになる。


 ジェイクの私的な日記も喜びが溢れ、短い期間だったが平和を感じる文言が多く記載されている。

 特にジェイクの性格を感じ取れるのは、クラウスの名前に関する事柄だろう。若くして称えられた王だが、子供の名前に関しては悩みに悩んでいたようで、日記には度々名前の候補が端に書かれていた。

 そして、思いついた名前の最後はアーサーと大きく書かれ、〇で囲むほどの力作だったようだが、子の名前はクラウスになっている。


 一説によると王妃レイラがクラウスという名を考えたことでジェイクが譲ったとされているが、この説が正しい場合、夫婦揃って子供の名前で盛り上がっていたのだろう。


 ただ、面倒事が積み重なっているため喜んでばかりもいられない。


 クォーツ民意国が戦争直前、アルバート教以外の布教を禁じる政策を打ち出し、サンストーン王国は逃れた聖職者からこの情報を入手すると、様々な意見が飛び交った。


 アルバート教の総本山は我々の名を騙る者は全て背信者だと宣言したものの、どこまで関与しているのか。本当に極一部だけが暴走しているのか。クォーツ民意国とアルバート教はどの程度の協力関係にあるのか。こういった謎が重なり合っていたのだが、戦場で直接信徒と兵を引き連れたアルバート教の司祭が確認されたため、サンストーン王国、並びに王政同盟はアルバート教総本山に使者を送ることになる。


 そして戦争後、それらの疑問を遥かに凌駕する事態が引き起こされる。


 クォーツ民意国で政変が起こり、布教の禁止どころかアルバート神こそが唯一の神であると宣言した神王国が成立したのだ。


 敗戦直後のクォーツ民意国は粛清の嵐が吹き荒れ、資料を残す者が少なかったが、神王国の設立はきちんとした情報が残っていた。

 それによるといきなり表舞台に出てきたアルバート教の背信者デクスターが、神の如き威光を纏い、愚かなクォーツ民意国の指導者達は裁きの力で息絶えた……とされている。


 この裁きの力だが、建国直前まで粛清が盛んだったことから、一部では悪名高きスキル【粛清】の力だったのではないかと推測されることがある。


 しかし筆者は違うと判断する。


 なぜなら本当に、一夜三千人殺しとも伝わる【粛清】なら、この後に発生するサンストーン王国との戦いで発揮され、容易く勝利を収めることが出来る筈だ。

 しかし後に詳しく語るがこの戦いは神王国の完全敗北という形で終結しており、デクスターの力は【粛清】ではない。もしくは、伝説で語られるスキルは、いつの間にか過大な評価を受けただけで、実は大したことがなかったのだろう。


 それよりも世界各地で観測された、違和感を覚える敬意こそが彼らにとっての切り札で、デクスターによる死刑執行は単なるパフォーマンスの一環だったと考えられる。


 そしてこの奇妙な敬意は非常に強力だったらしく、全ての国で観測されており、特に発生源に近いとされるサンストーン王国や王政同盟では、非常に多くの記録が残っている。

 ここで特に注目すべき点は、会ったことがない筈なのに、ひょっとして神なのではないかと誤認している点だ。


 奇妙な敬意は今現在も詳細が不明なのだが、アルバート教の背信者はこれこそが神の力であると宣言し、堂々と表舞台に立った根拠となったようだ。


 この力で神王国は最後の暴走に突き進む。


 ◆


 ★クォーツ民意国が大暴れした直後の情勢★


 痛み分けで終わった王政同盟とクォーツ民意国の争いだが、王政同盟は戦費を回収できず経済的大ダメージ。クォーツ民意国は人的損害が挽回不能なレベルだった。

 そして一人勝ちしたサンストーン王国は、偉大なるジェイク・サンストーンを称える日記やら資料が多数見つかっており、明確な勝者と敗者が生み出された。


 そしてジェイク個人にしてみても、内乱後に起こった初の国外戦争を勝利に導き、長男が誕生したことで盤石を超えた盤石の立場を手にした。


 この一連の流れはサンストーン王国の貴族にこれ以上ない安心を与え、アボット公爵の日記には安堵の言葉が連なっている。

 なおこの気苦労公爵、ジェイクが戦場にいる最中は、アマラ・ソフィー・イザベラの相手を担当しており、胃が爆散する寸前だったらしい。

 なおなお、周辺各国どころか王政同盟参加国まで混乱しているけど、第一王子クラウスの結婚相手どうするんだろう……と心配していたが、この懸念は約十年後に綺麗さっぱり片付く。自分のところの血族から次期王の妃が出るという新たな気苦労と共に。


 さて、面倒なので語りたくないが、クォーツ民意国に話を移そう。


 いきなりアルバート教以外の布教を禁じたことで、露骨にぼろを出したこの国は、軍事作戦の失敗を身内に押し付ける作業に没頭した。

 色々あって詳細な記録に乏しいが、それでも毎日誰かが吊るされていたようで、人々は外出を控えるような有様だったらしい。


 ちなみにアルバート教の背信者はどこまで関与していたのか? という考察は混沌としている。

 現代の主流は、サファイア王国の水攻め直後に活躍したアルバート教の信徒の行動を、背信者が乗っ取る形で食い込んだ。という考えだ。


 しかしながら一部では、背信者が神の国を建国するため、サファイア王国の上層部に水攻めを進言して、引き起こされた混乱を自作自演で利用したのだと主張する者もいる。

 これは水攻め直後に活躍したとされるアルバート教の信徒のタイミングがよすぎたことで生まれた論だが、この後のことを考えろ! 馬鹿と楽観で行動してた奴らならこれくらいの無計画は実行する! と言われると否定しずらい。なんて時代だ。


 まあそれは置いておこう。


 やはり資料が乏しくいきなりになるのだが、アルバート神だけを認める神王国が建国されると同時に、世界各地で訳の分からない敬意が生まれたらしい。


 本当にこの敬意については謎で、詳しいことをあまり述べることが出来ない。

 そこで後世に登場するのが皆のおもちゃ、スキル【粛清】君と【傾国】ちゃん。


 伝説で語られる禁忌スキル二大巨頭が神王国で手を組み、世界征服を企んだという陰謀論である!


 つまり奇妙な敬意を【傾国】が魅力で振りまき、【粛清】が国内の反乱分子を処分していたんだ!


(ヾノ・∀・`)ナイナイ


 だってその場合、我らがジェイク率いるサンストーン王国は、古代から伝わる禁忌中の禁忌タッグに勝利したことになるもん。

 それに伝説で語られるところによると、【傾国】に魅了された人間は違和感なんて覚えないし、【粛清】は一瞬で三千人も殺してるんだぜ?

 ジェイク陛下が【傾国】の魅了を耐え抜き、【粛清】発動前に打ち勝った姿は感動的でしたね(存在しない伝説)


 デクスターが大臣やらを粛清しまくりながらも、敬服してしまう輝きを纏っていた……という記録が残っているため、このような発想が生まれたのだろう。

 なおこのせいで、【傾国】という言葉の都合上、デクスターちゃん女の子説が囁かれているようだが、深く考えてはいけない。


 ただまあ、それはそれとして奇妙な敬意は詳細不明で、通常スキル以上、禁忌スキル未満のナニカだったという意見が強い。

 案外、世界征服のために【傾国】を人工的に作り出す計画があって、アルバート教が劣化コピーを生み出したのかもね(陰謀論)


 そんで最終的に……。


 千年も眠っていた“本物”の権威にぶん殴られ、木っ端微塵になる。

後世の陰謀論よりヤバい連中をよろしく!↓

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
一周回って当時のジェイクサンストーン国王が見てたらすげぇ~って言いそうな論文レポートになってきている・・・ 粛せ…デクスターちゃん無知無知駄々っ子で可愛いネ!
>なんて時代だ。 ラストバトルだけあってヤバいこと起きまくったからな… 粛清の力が過大評価扱いされてて笑いが止まらない宿命さんを幻視してしまう
某オダノブナガばりに女体化されまくるデクスターちゃんと申されたか
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