表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

218/230

後世から見たコーネリウス・アボット公爵黒幕説

 大逆賊ジュリアス。アマラ、ソフィー・アンバーが滞在するエレノア教大神殿を放火。双子姉妹、イザベラ教皇行方不明。


 この歴史上最も愚かと称される行いは、瞬く間にサンストーン王国に広がった。


 しかし謎が多い。


 常識的に考えてジュリアスがこのような行いをするメリットなど全く存在せず、寧ろ即死してしまう自殺と同義だ。

 既に反逆を行っているジュリアスだからあり得るという論が偶に散見されるが、それは王になるという明確な目的があってこその行いである。

 一方、この大逆悪にはデメリットしか存在せず、何を目的にしたものかはっきりしない。


 そして当時の様子を別宗派の司祭たちが日記に残しており、多くの兵が取り囲んで夜にはかがり火が大神殿を囲んでいたと記している。

 このため末端の兵が暴走した結果、もしくは何かしらの不手際で大神殿が炎上したというのが一般的な意見だ。


 イザベラたちの逃亡も、強い権威を持つ司祭たちの伝手を使えば、あり得なくないだろう。

 行き先については当初、レオ王子の支配地域を目指していたものの、レオの手腕に疑問符が付くため、アマラ、ソフィーが多少の縁を持つアゲートを頼った。という意見が多い。


 だがここで筆者は一つの説を唱えたい。


 内乱期のサンストーン王国において不気味な存在感を放ち、王都に強力な伝手を持つ大貴族が存在しているのだ。


 コーネリウス・アボット公爵である。


 今現在は三大公爵筆頭として扱われ、清廉潔白の代名詞として扱われる彼だが、馬鹿正直なだけで生きていける程貴族の世界は甘くない。


 内乱後の彼はのらりくらりとジュリアス派の要請を断りながら勢力を維持しており、ジュリアスにとって碌に動けないレオより厄介だった可能性もある。


 さてこの人物、エメラルド王国との戦争後、かなり急に自領へ引っ込んでおり、幾つかの貴族の日記によれば王に鬱陶しがられて、事実上関係が途絶していた。

 しかもレオが王命に反して、軍権を握り続けた事件も直接目撃しており、サンストーン王国の将来を危うんでいたかもしれないし……反感を募らせていたのかもしれない。


 いずれにしても王に疎まれ、その直系のレオも危ういとなれば、コーネリウスは自身の立場を守る必要がある。

 幸い伝手はあった。

 そう、エメラルド王国で共に戦ったジェイク・アゲート。元サンストーン王国の血族である。


 筆者がなにを言いたいのか、その結論は、コーネリウス・アボットが黒幕という説だ。


 幸い大神殿は火がついても不思議ではないため、コーネリウスの配下が大神殿を放火。王都にいた時の伝手で包囲網に意図的に穴を空けると、三人の女がそうとは知らず逃走した可能性がある。


 常識的に考えて、いきなりの事態にも関わらず古代王権とエレノア教皇が王都から無事抜け出すより、何百年も王都に伝手があるアボット公爵家の助力があったと考える方が自然だと言っていい。


 そしておそらく、逃走の案内をした者はレオが上手くいっていないことを教え、それとなくアゲートに誘導したのだろう。


 結果は誰もが知っての通り。


 ジェイク・アゲートは大義の軍勢を率いてサンストーン王国を再統一し、偉大なる王として名を刻むことになる。


 その上、ジェイク・サンストーンの息子にして次代の王であるクラウスは、アボット公爵家の娘と結ばれており、コーネリウスは邪魔者を全て消し去り盤石な地位を築き上げることに成功したのだ。


 ◆

 ◆

 ◆


 ーーーーーーーーーーー


 ★苦労人アボット公爵について★


 しょっちゅう陰謀論者のおもちゃにされる苦労人。

 まともな歴史学者はこの時代のことをあまり研究したがらないので仕方ないね。


 当時の資料でクッソ真面目な堅物だったのはほぼ確定。多分早死にするだろうなあと、かなり多くの貴族が思っていたらしい。

 実際、王に疎まれるわ、第一王子は猪だわ、第二王子は反逆者だわで、胃の休まる時はなかっただろう。


 ところがどっこい。

 今でも、え? そんなに長生きしてたの? と思われることが多く、なんとクラウスと自分のところの血族の娘が子供を産んだ時期でも普通に生きてた。毛根の寿命は短かったが、代わりに本人の命は長らえたようだ(ハゲ公爵というあだ名が残ってる悲しい人)

 つまりそれだけジェイク一家と関わりが長かったが、それはもう宿命だと思って諦めてもらう他ない。


 晩節を汚すようなこともなく、最後は穏やかに亡くなったらしい。


 さて、陰謀論なのだが……ちょーっと怪しいのも事実というか……。

 現実問題、ほぼ包囲されていた大神殿からどうやって、古代王権と教皇が逃げ出したのかと問われれば、アボットが裏から手を回して逃げやすいようにしていた。と説明する方が楽と言えば楽だ。

 ついでに言うとジュリアスを即死させられるので、動機がない訳でもない。


 しかしながらバレた時のデメリットが半端ではなく、アボット公爵家は族滅確定だし、下手すりゃジュリアスどころかサンストーン王国が砕け散るため、リスクとリターンが合っていない。


 たまーにジェイクこそが黒幕だったのではと考える者もいるが、伝手や王都で工作出来る人員が間違いなく存在しないため、やはり黒幕説はアボット公爵が主流である。


 正直分からね。だから偉い先生方は、この時代をあんまり触れたくないんだなと実感する。


 横道に逸れたけど、次こそは内乱終結。

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
胃痛枠アボットに黒幕説出てて草 実際あそこはレオの暴挙を知った使者の超ファインプレーとしか言いようがないんだよね
事実を書いたとしてだれが信じるか!! まさかスライムが集団でスライムとは思うまい ぷるぷる、僕達わるいスライムだよ
>常識的に考えて 常識的に考えたら未来永劫真実にたどり着けないやつだ… でもトンデモ論としてイザベラの自作自演説を提唱したりして真実に限りなく近い 解を出したとしてもまあ、即叩かれて陽の目を見ないだろ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ