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後世から見た内乱中期のジェイク・サンストーン

 戦神レオ、健在。

 この報告はすぐさまサンストーン王国全土に齎され、敵味方問わず大きな影響力を発揮した。少なくともこの時は、だが。


 当時レオ派だった貴族が残した日記によると、レオは裏切った近衛兵、なんと百人を相手取って王都を脱出したとある。しかしながら、いかに【戦神】とは言いえ百人の人間から逃れられるとは考えにくく、プロパガンダの一種と思われる。

 恐らくどちらかというとレオに近いながら、ジュリアスとも一定の関わりがあり、内乱時でも勢力を保つことに成功した、アボット公爵が直前に情報を入手。それがレオに伝わったものの、準備も出来ないギリギリの脱出になり、近衛兵と交戦はしていないと思われる。


 さて、ジェイクにとっては内乱の選択肢はない。正統性はレオにあり、反逆者ジュリアスは政治的に論外。地政学的にもアゲートはレオ派に囲まれていたため、常識的に考えるとレオの下にはせ参じる必要があった。


 ところがジェイクが協力した国境貴族の日記によると、ジェイクが派遣した使者をレオは冷遇。殆ど追い返すように扱い関係が悪化する。

 これは政治的に悪手としか言いようがない。

 功績を正しく評価して扱わない人間を、下の者達は疑ってしまうものであり、記録にはあまり残っていないが多くのレオ派が混乱しただろう。

 そして国境貴族だけは明確に、この件に関する不満が記載されており、面子を潰されたと考えていたようだ。


 レオの失策はまだ続く。

 元々武闘派の貴族を抱えていたレオだったが、政治・経済に長けていた者達が少なく、武力はあってもそれを支える力が乏しかった。結果、大増税に踏み切ろうとした記録が残されており、盤石とは程遠い有様だった。


 一方、この時期のジュリアスは王都を問題なく支配していたが手を緩めず、隣国パール王国を利用した。


 レオがパール王国に国土を売り渡した。しかもパール王国から送られてきた暗殺者を、自分とアーロン王を暗殺する前に始末したと主張したのだ。

 この主張は謎が多く、ジュリアス派はパール王国の陰謀であると記録に残し、一部のレオ派はジュリアスが暗殺者を送って来たと記載している。


 一方、アゲート大公国で暗殺騒ぎが起こった記録がない。もしパール王国の陰謀が存在していたなら、サンストーン王家の血脈が流れるジェイクもターゲットになっていた筈だ。


 残念ながらこの時期を境にパール王国は急速に勢力を落としたが、それが陰謀とどう絡んでいたかは資料がなく、世に溢れているのは全て推測に過ぎない。


 ◆

 ---------------


 ★内乱初期から中期のジェイク陛下★



 ザ・罰ゲーム。


 以上。


 真面目な話をしたいところだがマジで罰ゲームである。

 あまり歴史に興味がない人間は、ジュリアスは王都を無茶苦茶にしたと思っている者も多いが、この時期の彼はほぼ完全に王都を掌握しており、レオを取り逃がしたこと以外は完璧だった。

 まあ、その唯一の失敗が洒落にならないが。


 これまた興味のない人間は、レオは戦わずして敗れた三下と思っているだろう。しかし、当時の人間は、戦場に出ればレオが負けることはない。という共通認識を持っていた。

 だからこそジュリアスには経済戦争を仕掛けられ、ジェイクには権威の塊(世界最強)でぶん殴られたのだが、逆を言えばまともに相手が出来ないと思われていた証でもある。


 つまりこの時点でのジェイクは、王都を掌握したジュリアスと、軍事的な強力さと政治的不安定さを併せ持つレオという、面倒臭すぎる二人と関わらなければいけないのだ。

 なお保有する戦力差は人間と虫レベルで、虫がアゲートである。


 無理無理。よく生き残ったわ。常人なら千回やってもどっかで死ぬだろう。

 伝わってはないが、毎日身内を罵ってたに違いない。


 それはともかく、色々言われているが反逆した立場の癖に王都を制圧したジュリアスと、数百年ぶりに一国(エメラルド王国)を粉砕したレオは、ポカを考えなければ、世界に轟く再統一王の兄と言えるだろう。

 ポカを考えなければ(大事なこと)


 具体的には……知らない者はほぼいないだろうが念のため。

 この二人、当時の頂点に喧嘩を売っているのだ。


 ジュリアスは双子姉妹、アマラ・アンバーとソフィー・アンバーが滞在するエレノア教大神殿を、教皇イザベラがいるのに焼き討ち。

 レオは双子姉妹が要請して成立したアゲート大公国を事実上攻撃。


 ヤーバイでしょ(震え声)。


 そんなこと知らねえよ。大したことじゃねえと言える反権威主義の方々はいるだろうか。


 今でこそ政治からは距離を置いているエレノア教と、生きた王権だったアマラ、ソフィーの死で最盛期の力はないアンバーの名だが、当時は神の次に重い存在である。それを攻撃したことは、事実上神を攻撃したに等しい。


 はい、レオとジュリアス。特にジュリアスは死にました。

 古代王権とエレノア教を両方敵に回したのは、記録に残っている限りジュリアスが最初で(なお最後ではない)、政治的には死人に等しかった。


 まあ、ボヤ騒ぎが大きくなったのか、攻撃だったのか、事故だったかは分からない。だが事実として、この二大権威はアゲートに逃げ込んだ。

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
事実は小説より奇なりってのを改めて思い知らされるな…
>古代王権と最大宗教に敵対 たくさんのセミ()が蠢いて羽化()後に変態してた集団がいましたねぇ
古代王権とエレノア教を両方敵に回したのは・・・最後ではない。 最初で最後じゃないんかい!?
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