後世から見たジェイク・サンストーン サファイア王国侵攻時
ニコニコにも漫画が投稿されておりますが、ランキングにいて心底ぶったまげました。
皆様ありがとうございまあああああああああす!
当時のサンストーン王国において、外交上最大の懸念はいきなり国境を接することになったサファイア王国との関係だったが、それはサファイア王国から見ても同じだった。
パール王国の一部に加え、エメラルド王国全土を飲み込み、国内の安定が最優先となったサンストーン王国。
いきなり巨大国家に変貌した存在と、真っ正面からの戦いを避けたいサファイア王国。
この二つの思惑はある程度一致しており、公的な使者が派遣されて不可侵条約の話が話し合われていた。
しかし、あくまで【ある程度】の一致である。
サファイア王国から見れば、強大な国家が常に存在し続けるのは不安でしかなく、可能ならば排除したかったのが本音だろう。
第二王子ジュリアスとサファイア王国の関係は今現在もはっきりしておらず、協力や裏工作があったかも定かではない。
だが事実としてこの両者は、全く同時に裏切りを働いた。
片方は反乱。片方は不可侵条約を話し合っている最中の奇襲という最悪の裏切りを。
ここでアゲート領に視点を移す。
戦争前のアゲートは黄金時代に足を踏み入れかけていた。
ジェイクの手腕によって良港が整備され、旧エメラルド王国領の復興拠点として最適だったこの地は、様々な人、金、物資が集まっていた。
その上、忌むべき地の管理に不備がなかったかどうかを確認するため、アマラとソフィーの双子姉妹が滞在しており、繁栄することはあっても陰ることはなかった。
更にこの時期、後の第一王妃レイラ、後の第二王妃エヴリンの名が確認されており、若き大公は公私共に輝く日々を送っていただろう。
このタイミングでジュリアスの反乱と、サファイア王国の軍事侵攻が重なり、ジェイクは即座に国境へ援軍として赴くことになる。
その速度は驚くべきものだったが、慣習的に不可侵条約締結中はどこも軍事行動を控えるのが当たり前だったため、ジェイクがサファイア王国の攻撃を想定していたとは考えにくい。
つまりサンストーン王国の混乱に備えていたジェイクが、リソースをサファイア王国に振り向けたのだろう。
当時のサファイア王国が慣習を無視した奇襲攻撃を行った理由ははっきりしておらず、その後の混乱で資料は消え去った。
このため断言する根拠は乏しいものの、総大将だったライアン・サファイアが主導した可能性が高い。
と言うのもこの人物、錯乱王子・失策王子の異名に相応しく、軍事的常識が明らかに欠けているのだ。
戦争分析班が整理した資料によると。
指揮系統をはっきりさせないまま、仲が悪い貴族を組ませる。
騙し討ちをしておきながら、国境のサンストーン王国軍に降伏を勧告する。
兵站を軽視して侵攻後にすぐ補給が途絶える。
本隊がアゲート軍とぶつかり、逃げ出した兵の統制が取れず、総大将のライアンが戦死した。
など、多数の失策が目立つ。
この軽視できないミスを重ねたサファイア王国軍に、ジェイク率いるアゲート軍は襲い掛かり、圧倒的な勝利を収めることになる。
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推測すればするほど頭が痛くなる時期にようこそ♡
あれこれ推測してお話しする大先生達が、この辺りになると急に当時の資料だけ書いて誤魔化すのはいつものことと言えば、面倒臭さが伝わるだろうか。
きちんとした資料を残さないということは、後世どれだけ変えられても文句を言えないということだ! を合言葉にしている歴史学者が、戦争の混乱で空白になっている時期を弄らずにいるのは……。
一言で言えば、意味不明。これに尽きるからである。
いくら長年の平和から急な戦乱に突入したとはいえ、国家を運営してきた者達が補給を軽視するどころか、ほぼ無視していたのはなぜか。
軍を幾つにも分割したのはなぜか。
指揮系統をはっきりさせなかったのはなぜか。
慣習を破った裏切り行為を働いておきながら、受けいれられると思っていたのはなぜか。
総大将がのこのこと最前線までやって来て、しかも普通に戦死しているのはなぜか。
誰かがおかしいと思わなかったのか? 気が付かなかったのか?
全員が全員、これでいけるから大丈夫だと思い、そのまま死に突き進んだ訳は?
アンバー王国崩壊後の千年、王がいて、王子がいて、貴族がいて、国家をずっと保ってきたのに、この時だけ全員が無能だからとしか言いようがない理由は?
それら全てをひっくるめると、なぜか唐突に無能になった。としか言えないだろう。
戦争分析班は泣いていい。
さて、少しは真面目な話をしよう。
事実上サンストーン王国の属国かつ、王家から嫌われている自覚のあるジェイクは、不意打ちを仕掛けてきたサファイア王国との戦いを避けることが出来なかった。
子供に説明すれば、ジェイクが出陣したのは義憤と正義によって。となるだろうが、現実問題として騙してきたサファイア王国を信用することなど無理。奇跡的にサンストーン王国が防げた場合、戦後の立場は地に落ちるため、若き大公に選択の余地がなかったのだ。
やはりこの時期のジェイクの日記は存在しないが、もしあれば、身内も敵も好き勝手しやがって馬鹿野郎! と罵っていたことだろう。
最終的にサファイア王国軍はご丁寧に最前線へやって来たライアン・サファイアが戦死。本隊壊滅。分割された軍も各地で散々ボコボコにされ壊滅した。
どうしてなんでしょうね?(煽りではなく本心から)
さて、サンストーン王国が混乱したことにより、サファイア王国との戦いを意識せざるを得ない地域は、きちんと機能する名前であるジェイク・アゲート。もっと言えばジェイク・元サンストーンを意識した。
なんせ王は捕まってるし、王都は反逆者が掌握。正統性の旗頭であるレオはこの時点で生死不明となれば、ジェイクが中心になるのは当然のことだろう。
しかしながら第一王子レオが生きていたためこの発想は不必要となったが、ジェイクが気を抜くことはなかった。
生きていた【戦神】レオが政治的に無能かつ、アゲートを明らかに軽視した動きを見せたのだ。
ジェイクが兄二人に言及した記録はほぼ皆無だが、彼の子供が記した日記で僅かに把握出来る。
曰く、世界は大きいのだ。深く掘り進むのは、広く浅くを知ってからでも遅くはない。
このジェイクの言葉は一芸に特化し過ぎて自滅したレオとジュリアスを反面教師にしたと思われており、金融で大きな力を発揮した第二王妃エヴリンとの子供が、日記として記録に残していた。
ところでこんな馬鹿騒ぎはこれで終わりだと思った初心者のあなた。入口だから気をしっかり保つんだ! 特にサファイア王国は二回も変身を残しているぞ!