後世から見た、アゲート大公時代初期のジェイク
アゲート大公時代の、ジェイク・アゲート。
当時は忌むべき地と呼ばれていた土地の支配者となり、アゲート大公を名乗ったジェイクだが、アゲートの民にすれば縁も所縁もない部外者で、しかも若い青年である。大きな不安を感じていたのは間違いなく、ジェイクは早急に成果を出す必要があった。
そのため、彼が選んだのは法の徹底である。
税を不当に徴収していた役人を捕縛して死罪にした件は、多く人間が驚いた。
この驚きは基盤が整っていないアゲート大公が、役人をいきなり死罪にしたことが半分。もう半分は機を窺っていたチャーリー卿に対するものだ。
アゲートに来たばかりのジェイクが、すぐさま役人の不正を見つけて捕縛するのはまず無理だ。ここから考えられることは、以前から役人の不正を苦々しく思っていたチャーリーが、支配者の交代を転機と捉えたことだ。
極稀に、アゲートにはジェイクの関係者や協力者がいたのでは。そこから情報を得ていたのではと囁かれることはある。しかし、アゲート大公時代の後期ならともかく、つい最近までほぼ軟禁状態だったこの時点のジェイクに、大規模な情報網が存在する訳はなく、陰謀論の類である。
ジェイクが法や法に関わる者を重視していたエピソードは多々ある。
この時代、アゲートも含め死刑執行人の待遇は非常に悪い。住むところは指定され、給金も僅かな臨時収入のような扱いだった。そのため彼らは副業をしても厳しい生活だったが、ジェイクは待遇を引き上げ、後にサンストーン王国でも適用された。
また、ジェイクが人治主義を嫌っていた話も残っている。
息子であるクラウス王は、例えばの話、我々が意味もなく不必要に法を犯したなら、父は絶対に裏から手を回さず、定められた量刑に従えと言うだろう。と述べた話がある。
そのような事件は実際起こらなかったが、権力者は減刑や特別待遇があって当然と思われていた時代に、王が身内にすら法を守らせようとするのは、かなり異端であると表現してもいい。
そんなジェイクだが、法とは無縁な存在とみなされていた傭兵を積極的に雇っていたことが知られている。
ただ、アゲートにいた商人達の日記には、自分の知っている傭兵ではない、専門家の集団だった。金を払えばその分の仕事をこなす、傭兵の理想像がいた。などという記載が目立つ。
この質のいい傭兵を用いたことは、ジェイクが人材を見極める確かな目を持っていた証なのだが、ジェイクに売り込んだ先見の明がある傭兵がいて、その伝手を利用した。などの意見もある。
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☆アゲート大公時代の国王陛下についてのお話☆
能力ある奴を野放しにするとどうなるかの事例。
現代では世界最大の商業圏アゲートだが、当時は忌むべき地として名高く、言い方は悪いがゴミ扱いの土地だった。
ついでに言うとサンストーン王国とアゲート大公国の国力差は百倍どころの話ではないため、入念な監視が必要なかった。
その結果、ある意味で好き勝手した国王陛下はアゲートを商業圏として成長させ、自分だけの勢力を構築する。
なお兄二人も、勢力の構築は上手くやっていたのだが最後は瓦解しており、維持し切ったからこそジェイクが勝者となったのだろう。
話を戻そう。
ぶっちゃけるとこの時代もジェイクは日記を記載してないため、当事者から見た視点の話が書けず、世に溢れているのも作り話ということが多い。
唯一近しいのは臣下筆頭チャーリー卿の日記だが、こっちはこっちでジェイクと似たような問題がある。
今では信じられないだろうが、当時木っ端な存在だったチャーリーもまた、日記を子孫に残す必要性を感じていなかったようで、業務日誌のようなものしか書いてないのだ。
ついでに述べるとこの人物、時代を考えると珍しいことに守秘義務を厳守していたようで、会議の内容や不必要、もしくは出したらマズい類の情報を一切残していない(なお嫁とイチャイチャしてた時期の日記はしっかり残って保管されている。可哀想)
そのため、死期を覚った老年のチャーリーが昔を懐かしんで、大公時代のジェイクに関する思い出を綴ったりはしているが、当時そのままの情報はかなり限られている。
なお死刑執行人一族はジェイクに関する日記を記載しているのだが、ジェイクを称賛し続けているので、客観的なものとは言い難い。見る時はしっかり覚悟をしましょう。
ただそれでも、不安を感じていたのは間違いない筈だ。
サンストーン王国はエメラルド王国を丸ごと吸収してしまい、サファイア王国との国境が不安定化。明らかに対立しているレオ王子とジュリアス王子。それを収拾できないアーロン王。
国土は倍になったとしても、内から崩壊しかけているサンストーン王国は、誰がどう感じても不安しか齎さないだろう。
そして不可侵条約を交渉中に奇襲してきたサファイア王国と、ジュリアス王子反乱が重なる。
辺境伯の攻撃ではなく、国家規模の戦力が国境に迫り、反乱ではレオ王子が生死不明。王都は反逆者ジュリアスが制圧というダブルショック。
よく滅んでねえなこの国……。
次の項目はサンストーン王国史上最大の国難。もしくは歴史家が一番研究したくない時期について述べる。
かるーく説明すると、なんで? どうして? いや、そうはならないでしょう。でもなってる……が頻発します。これまた覚悟してください




