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プロローグ・また陰謀

日間ハイファンタジー3位ありがとうございますうううううう!!!


昨日嬉しくて飛び跳ねたもんですから、予告なく2話連続投稿しております。

 サンストーン王家と貴族はまた沸いていた。原初の王国であるアンバー王国の生き残りであるアマラとソフィーが、スキル【怪力】や【測量】を持っている者達など、建設に役立つスキルを持つ者を雇って、急速に完成しつつあるエレノア教の大神殿で暮らすと宣言したからだ。そしてこの大神殿は既に居住区画は完成していたため、宣言したその日に双子姉妹はそこに荷物を降ろしていた。


 だがエレノア教とは違い、この2人は信仰という背景がなかったため普通の民には関りがなく、あくまで沸いていたのはサンストーン王家とその周りの貴族達だけだ。とはいってもその王家や貴族にとっては、エレノア教が大神殿を建設した以上の慶事だ。サンストーン王国も含めて、古代アンバー王国から分裂した国々の王がそのルーツであると主張する王家が殆どのこの世界で、原初の王の直系、またはそれに限りなく近いとされているアマラとソフィーが王国で暮らすことは、そのまま自分達に流れる貴き血の正統性を裏付けていることに他ならなかったのだ。


 その上でアマラとソフィーは、挨拶にやって来ようとする貴族に先んじて、お前達が仕えているのはアンバー王国ではなくサンストーン王国であり、原初の王ではなくアーロン王であるから、サンストーン王家の王権を蔑ろにするような真似は止めてここに来るなと宣言して釘を刺したため、そのアーロン王も双子姉妹がそういう配慮を出来る者達だと安心したし、断られた形の貴族も寧ろ、流石は貴き血の源流。一味違うなと思うことになった。


「貴族と関わって継承権争いに介入する気はない」


 尤も、イザベラが大神殿を建設しようとしたときと同じく、別にサンストーン王家の顔を立てたからではない。


「第一王子と第二王子の争い。共倒れでジェイクしか継承権のない状態となれば命の危険がなくなるから理想だが、妾達の武器は他所の王家への伝手なのだ。介入して不信を持たれたら切れ味が落ちる」


「確かに」


「そうですわね」


 アマラ、ソフィー、イザベラの姉さん女房3人組が、エレノア教の大神殿で女の付き合いをしていた。ここにいる数少ない聖職者もまたスライムだが、他の神を信奉する男の聖職者なら、彼女達が発している熟れた色香に禁欲を忘れてしまうだろう。


「第一王子の侵攻だが上手くいきそうか?」


「どうもエメラルド王国に狙いを定めたようですけど、そのエメラルド王国側は気付いた様子がありません。パール王国への奇襲が成功して、美味しい肉をもっと味わうために奥に進んでいますから、ここでレオ王子達に後方を叩かれて兵站が潰れると、下手をすれば全面敗走するかもしれません」


「根回しをせんからそうなる。あそこの王は我慢が出来ん。占いはいいから不老不死の薬を出せと迫ってきてな。ほんの数十秒待つだけだぞ? 無視してソフィーが占った後に渡したが、小瓶ごと飲み込もうとしたくらいだ」


「あれは呆れた」


「まあ」


 当時のことを思い出して肩を竦めるアマラと、冷たい表情のまま首を横に振るソフィー。


 彼女達の強みはその各国の王家の伝手もそうだが、選別の役目のために王と王子を試してきたため、その性格を多少なりとも知っていることだ。


「まあそれは置いておいて、となると勝った場合は継承権争いは第一王子が優勢になるか」


「さて、今まで戦がなく存在感が薄くて劣勢でしたから、互角になる程度かもしれません」


「アーロン王は?」


「迷う、というより2人の派閥が大きすぎてどうしようもない状況ですね」


「根回しをせんからこうなると言ったが、こっちはさっさと決めんからこうなるだな」


 自分の子なのだから強力なスキルが宿ると考えたアーロン王は、先に生まれたレオ王子にスキル【戦神】が、1歳年下のジュリアス王子には【政神】が宿ったことで大喜びしたが、そこで強力なスキルの方を王位継承者にしようとしたツケが回ってきていた。どちらも甲乙つけがたかったため悩んでいるうちに、それぞれが派閥を大きくしていった結果、今や王ですら手が付けられない状況になってしまったのだ。


「あの王子達、いつ死ぬか分からないけど、どちらも終わり自体はよくない」


「まあ、空間魔法は神への冒涜ですよ?」


「私達は聖職者じゃないし嫌ってるから大丈夫。それに今まで見た王達は薬に目が眩んで気にしてなかったし、姉さんの薬でもう忘れている」


「これはいけませんわね」


 ソフィーが異空間からジェイクに割られた物の代わりの水晶玉を取り出すと、その神の領分を侵したイザベラが苦言を呈したが、神の呪いに縛られていたソフィーが神を敬うはずもない。しかし、これ以上お前が言うなという状況もないだろう。なにせイザベラは不敬どころか神を直接弑して、しかもその名を利用しているのだ。


「なら現実的に共倒れの可能性があるか。“石の冠”、実在するのか?」


「はいここに」


「よくもまあ私に冒涜と言った」


「私、聖職者である前にジェイク様の女ですので」


 アマラの問いに、イザベラも異空間から外見上は石で出来た神の気配溢れる冠を取り出したが、ソフィーの皮肉に悪びれもせずそう言い放った。


「なら共倒れになった場合、妾達の連名でジェイクが正統なる古代アンバー王国の継承者であると宣言して石の冠を戴いたら、そのままジェイク・サンストーン王、いや、ジェイク・アンバー王の誕生まで一直線か。まあ、本人が望めばだがな」


「理想は愛の巣での生活」


 普通の王は激務であり心労が絶えず、ジェイクも王位を望んでいないため、アマラとソフィーは彼の身が安全な現状では、態々騒ぎになるようなことを起こすつもりはなかったが、原初の王冠を作った神々のうちの1柱であり、それを直接回収したと言われる女神エレノアに表向き仕えるイザベラがジェイクにそれを戴かせ、その最初の王の血族である双子姉妹が、神々から新たな王を決めるための選別を命じられて今まで生きてきた。そう発表したうえでジェイクがそうだと宣言すると、世界中に激震が起こるだろう。それを否定すると、下手をすれば自分達の王権自体を否定することに繋がりかねなかった。


「アーロン王の新しい王子が生まれるかもしれませんよ?」


「好色の噂で溢れているのにジェイク以降から子が生まれてないんだ。もう男として役立たずになってるんだろうさ」


「まあ」


 このように姉さん女房3人組は、少々、いや、かなり危険で下世話な女子会を開催しているのであった。


 ◆


 一方でジェイク邸。


『古代アンバー王国の2人が来たからちょっとお勉強ですわ。アンバー王国は神と言われる存在が無理矢理王を決めたから王国と言われているだけで、実際はかなり原始的な時代ですの。弓の概念がないので石礫、製鉄技術もなかったから棍棒を振り回してたくらいですわ。尤も、あの2人が生まれた末期頃には原始時代は抜け出してましたけど』


「ふむふむ」


 基本的にジェイクはほぼ毎日【無能】から講義受けているのだが、無能から一体何を教えられるかというと歴史である。彼女曰くただ単に起こった事を語るのは無能でも出来る。後はそこから自分で飲み込めと言うことらしい。


「第三王子でほぼ廃嫡されてようが、基本的な礼儀作法は覚えておけ。ジェイクの妻になるつもりなら夫に恥を掻かせるな」


「はい」


 その間、ジェイクと同じく殆ど屋敷を出ないレイラが何をしているかというとやはりお勉強なのだが、それはジェイクと違って多岐に渡り、リリーからは護身のための技術や【傾国】の鎮め方、エヴリンから基本的な金の流れ、イザベラから各宗教とサンストーン王家の関り、そして最近やって来たアマラから王族の礼儀作法、ソフィーからは初歩的な魔術の心得を学んでいるというとんでもない状況だったが、スキル【傾国】を持つレイラは全てを吸収していた。


 なおレイラとアマラ、ソフィーの初対面だが、レイラはイザベラの時と同じように、古代王国の双子姉妹を差し置いて自分が第一夫人と思うのは無理があると怯んでいたが、実は双子姉妹は幾ら外見が若々しい美女でも生まれは大昔だったゆえに感性が古く、しかも正統な王位を巡って各王族が群雄割拠していた時代のため、王位も奥の序列も順番が一番無難だと考えていた。


『で、ですが、物語とかじゃ男子を産めなかったら……』


『なら20人産め。そうしたら男も生まれる』


『は、はい!』


 だからその時やった事と言えば、それでも不安に思ったレイラの尻を先人として蹴り上げただけだ。


 こうしてレイラは、急速にとんでもない淑女として完成していったのだが、その様子は内助の功を受けているジェイクと少々違い、外見上は誰よりも美しいのだが、手の掛かる妹として教育されているかのようだった。まあ普段はボケっとしているジェイクも弟の様だと言えるのだが、本当に極稀にだが男の顔を見せるので、その時はいつも彼女達をどきどきさせていたのだった。

もし面白いと思ってくださって下の☆で評価して頂けるとすっごい嬉しいです!!!!!!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 姉さん女房(1000年単位)
[一言] 日刊ハイファンタジー〔ファンタジー〕1位おめでとうございます!!
[良い点] それぞれの個性がいいね 愛が重い?いやいやw良き妻の内助の功でしょ! [一言] 日刊ファンタジー1位おめでとうございます。  (2022/5/09 17:00現在)
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