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1.無敵の絶対強者

「みんな、こいつを倒せば平和に一歩近づく‼全力で行くぞ‼」

 勇者ユーリの掛け声で、赤髪の剣聖・青髪の賢者・スキンヘッドのアサシンで構成されるパーティメンバーと討伐隊の兵士は武器を構える。

 彼らは密林の奥に潜む魔王の配下の討伐に来ていた。


 敵は死運ぶ毒蛇の王(ナーガ)

 上半身は女性だが下半身が15メートル程の大蛇の体を持つ、『色欲』の魔王配下の幹部だ。


 ナーガの周囲は毒の沼となっており、周辺には溶かされた討伐隊の人間達や生き物の骨が転がっている。



 ユーリは一人前に進む。そして右手に持つ漆黒の聖魔剣『バルムンク』を地面に突き刺し、詠唱を行う。


「バルムンクよ…魔の力ですべてを消し去れ‼」

 その詠唱と共にバルムンクより出る黒い光が、地面を侵食する。それと同時に毒の沼は一瞬で消滅する。

 『有』である物を『無』に変える闇の力。それを『魔聖の勇者』であるユーリは使う。


 バルムンク…浄化の光の力と消滅の闇の力を宿す聖剣。

 強い光と闇の魔力を宿さねば、剣に命を奪われる。つまり光の魔力のみを宿す歴代のような『神聖(しんせい)の勇者』だと、バルムンクを使う事が出来ない。

 この聖剣はユーリを除けばかつて一人しか適合した者はいない。



 ユーリは光と闇の魔力を宿す。

 光の魔力を宿す人間は少ないが、闇の魔力を宿す人間は殆どいない。


 闇の魔力を宿す人間は忌子(いみご)とされ、魔に()ちる前に処刑される。

 だが処刑されない例外がある。それが光と闇の魔力を同時につかさどる事である。

 光の魔力を宿す者は神の使いとされ、人を導く立場にある。その為光の魔力を宿さない者には殺せない…いや神の使いを一般の者が殺す資格がないとされている。


 かつて世界を創造した者は光と闇の魔力を両方とも宿し、万物を創造したとされる。その為ユーリはその創造主以来となる為、数千年に一人の逸材だ。

 バルムンクも創造主の武器とされており天地を開闢(かいびゃく)する魔聖剣として伝承に残されている。


 つまりバルムンクは現在はユーリ専用の武器と言っても過言ではなかった。

 バルムンクを使える代わりに、ユーリは先代の勇者が使っていた強い光の魔力を宿す聖剣『エクスカリバー』には適合出来なかった。




「毒の沼は消滅した‼みんな、行くぞ‼」

 金色の髪をなびかせ、ユーリは一目散にナーガの元に突っ込む。

 他のメンバーの怪我を少なくするため、ユーリは真っ先に先陣を切った。




「下等生物風情が…調子に乗るなぁ!!」

 ナーガは怒り狂った様子で、猛毒の霧を口から吐き出す。


 ユーリは剣でガードする体制を取った。

「聖なる力よ!!魔を払え‼」

 勇者の持つバルムンクから聖なる光が放たれ、毒の霧を蒸発させ無害な蒸気に浄化した。


 光の力…それは『魔』より生まれたものを浄化する力。魔力から生まれた全ての事象は光の力で浄化することが出来る。



 ナーガは渾身の攻撃であった為、反撃に対する準備が不十分だった。何故なら毒の霧を吐く事で大抵の大軍ならば溶かされて、反撃などしてこれないからだ。

 しかし大軍ではなく、一人で何とかされるとは彼女は全く想像をしていなかった。


 一瞬のうちにユーリはナーガに近付き、バルムンクでナーガを斬りつける。

 ナーガは両腕でガードするが、バルムンクにより斬られた部分は消滅し、両腕はボトリと地面に落ちた。


「うぎゃぁぁぁあ」

 ナーガは悲鳴をあげる。



 悲鳴と同時に下半身の尻尾でユーリに反撃するが、後に続いていた短髪の剣聖ストルはユーリの頭上に飛び上がった。身の丈程の大剣をかかげ、目にも見えない剣技により、ナーガの下半身はぶつ切りに斬られてしまう。


 ナーガは再度毒の霧を吐こうとするが、さらさらのロングヘアーをなびかせた賢者フィリアの魔法陣がナーガの周りに浮かび上がる。それと同時に地面は槍の様に変形し、数百の槍はナーガの体を貫き身動きを取れなくする。


「蛇の蒲焼を作るには、後は内臓を取り出さなきゃ…」

 フィリアは邪悪な笑みを浮かべながら呟き、再度杖を構える。


 頭に刺青の入ったアサシン・イロスもベストなタイミングで攻撃を伺っており、両手にダガーを構えている。

 討伐隊から見た勇者達のチームプレイは完璧だった。




 ユーリもナーガの胴体をバルムンクで斬りつけ消滅させる。ナーガはあっという間に上半身だけとなる。更にフィリアの魔法により殆ど身動きが取れなくなっていた。


 だがナーガは脱皮するかの如く、自らの上半身を脱ぎ捨てた。それと同時に少しだが再生し、上半身だけでユーリに向かって飛び掛かる。


 待っていましたと言わんばかりにユーリは万全の態勢で剣を構えた。

「これで終わりだ‼」

 ユーリの大きな蒼い瞳は見開かれ剣に力を込める。



〈一閃〉

 目に見えない速度でナーガにトドメを刺す…



 はずだった…

------------------------------------------------------------------------------------


「クソがあぁぁぁぁ!!」

 城内に大きな叫び声が響き渡った。魔王サタナスの咆哮が轟きわたる。

 白銀と呼ぶにふさわしい程の美しい魔王が、憎悪により漆黒(しっこく)の醜い姿になってしまうと思えるくらい怒っていた。遠く離れた者もその憎悪を分かってしまうほどの大声が城に響き渡っていた。



 魔王サタナス…彼はほんの数秒前まで勇者ユーリであった。しかし今は勇者ユーリではなく、『憤怒』の魔王として存在している。


 ユーリが止めを刺す瞬間に意識が変わり、魔王サタナスに変わったのだ。意識が変わるだけの為、現在ユーリの体は無意識で無防備である。最悪ナーガから攻撃を受けて死んでしまっているかもしれない。


 自らの体が無防備でしばらくは戻れない状態である…サタナスが激昂するのも当然だった。


-肝心な時にまた魔王の体になってしまった。

 ユーリは勇者の時に感情が高まると魔王サタナスに意識が変わってしまう。正確にはこれは原因ではないかもしれないが、経験的に感情が高まった時に変わる事が多いため彼自身もそうだと確信していた。




 魔王となった彼の深紅の瞳は憎悪の光がギラギラと浮かび上がっていた。彼はもしユーリが殺されていたら、この世界を全て滅ぼして更地に変えたい程に怒りに身を震わせていた。

 比喩(ひゆ)ではあるが比喩ではない。魔王である彼にはそれが出来てしまうから…




「サタナス様…いかがされましたでしょうか?」

 大きな声を出した魔王サタナスの元に、灰色の髪のサキュバスが駆けつける。彼女の白いワンピース姿を見るや、サタナスは何も考えられなくなり体が石の様に固まる。黒く染まった心が真っ白になるくらい彼女は美しかった。


 あまりに美しい透明感溢れるサキュバスだ。悪魔として人間をたぶらかす存在とは思えない程神々しい淫魔(いんま)である。



「エヴァか…リリスの部下のナーガが勇者ユーリに倒されたかもしれん…リリスの元への援軍の用意をせよ。」

 サタナスはエヴァと言うサキュバスに指令を出す。サタナスは口は動くがまだ体が固まったままだった。


 意識はユーリとサタナスで共有している。つまり精神年齢は17歳のユーリのものなのだ。思春期の男子にとって、サキュバスは刺激が強い…

 ユーリは思春期に女子を見ると、緊張して固まってしまうタイプの男子なのだ…




「姉さ…リリス様の元にですか…この城の守りはいかがしますか?」

 エヴァは心配そうな顔でサタナスに質問した。



「愚かな人間が獣人の奴隷売買をしてる街があるだろう。そこを支配し奴隷を城の警備に加える。無いよりはマシな程度だが、今はリリスが心配だ…」

 サタナスの言葉にエヴァは少し悔しそうな顔をした。彼女は姉のリリスに嫉妬していた。



 そう言ってサタナスは右手を何もない空間にかざす。

「ゲート・オープン」

 その瞬間、右手の前の空間が歪む。瞬く間にサタナスが通れるくらいの門が出来上がる。


 サタナスは時空を操る魔王だ。だから移動の為の転移空間を創造するのも容易い。



「では街を支配してくる間に、援軍の準備は任せたぞ。」

 そう言うとサタナスは門をくぐる。瞬く間にサタナスの姿は消えてしまった。

 エヴァは出発するサタナスの方を向いて頭を下げたままだった。


 サタナスの姿が消えた所で彼女は早速準備に取り掛かる。





 一件平凡な街並みの中で、ひときわ浮いて見える豪邸があった。豪邸の中では今日も宴が開かれていた。

 太っていて目付きの悪い男が妻と子供達とで食事を取っていた。豪華な夕食だ…



 首輪をつけられた犬の顔の獣人が食事を運ぶ。その場にいる獣人は全員やせ細っていた。全身の体毛はつやが無く弱っていた。

 男が普段食べる食事とはかけ離れた食生活をしているのが一瞬で分かる状態だ。

 男は弱弱しい獣人の足を引っかけ、わざと転ばせる。


「あぁ」

 獣人は転び、運んでいる食事は床に落ちてしまう。


「ちぃ、獣人風情が…飯もろくに運べんのか‼」

 そう言うと男はムチで獣人を叩く。


 何十回と叩くうちに獣人は地面にうずくまり、起き上がらなくなった。

 その間、男の家族は下品な笑い声をあげていた。



「汚い獣人を片付けろ‼」

 男はその起き上がらなくなった獣人を片付けるように、他の奴隷に命令した。


 奴隷達は憎らしげな目で男を見る。だが何も出来ず、従わざるを得ない自分達が悔しかった。

 男は獣人の憎らし気な目に気付きながらも、何も出来ない彼らに対して優越感に浸っていた。



「その必要は無い‼」

 いきなり空間から銀髪で深紅の細い瞳をした人間らしき者が現れる。

 邪悪な空気が部屋中を覆う。翼が生え、耳も長く、鋭い爪を持っていた。男は最上位の悪魔アークデーモンだと瞬時に気付く。一瞬で危険な存在だと理解した。




「4年振りだが、相変わらずだな…」

 サタナスは呟く。

-勇者として来ていた時から、全く変わっていないな…


「は?」

 太った男は悪魔が呟いた意味が分からなかった。だが意味を深く考える事はしなかった。

 瞬時に命乞いの為に、椅子から地べたに這いつくばり土下座をする。男はこの瞬間に椅子に座るべきはこの悪魔だと思考を切り替える。1番偉い立場ではなくなった以上は様子をうかがわなければならないと男の本能が告げた。

 悪どく生きて来た以上、自分より上の悪にはこびへつらう(すべ)を男は学んでいた。


 男の様子が一瞬で変わった事に家族は気付く。先程までは笑っていた妻と子供達も泣きそうな顔になる。




 サタナスは左手を使い、右胸ポケットからリボルバー式の銃を取りだし男に向けて構えた。


「助けて下さい…ここにいる私以外の者は好きにして良いので、私だけでも助けて下さい‼」

 男は頭を地面にこすりつけながら、必死に命乞いを行う。ただ一人生き残る事だけを考えていた。今いる家族は見殺しに、生き残ったら新しい家族を作るつもりでいた。



 サタナスはニヤリと笑みを浮かべた。

「良いだろう。お前『だけ』は助けてやる。だが他の者は好きにするぞ‼」

 サタナスは男の言葉を復唱した。


 男は安心したのか、頭を上げて一息ついた。

 サタナスは先程ムチで叩かれ地面に横たわる獣人に向けて銃を撃つ。撃たれた獣人はビクンと反応した。



「ひいっ」

 奴隷の獣人達はその恐ろしい光景を見て、力が抜け地面に尻餅(しりもち)をついた。

 男以外のその場にいる者は、その瞬間皆殺しにされると思った。


 サタナスは先程銃を撃った獣人に歩み寄り、右手で立ち上がらせる。

「立ち上がれ。お前の怪我は治した。」


 獣人の怪我はまるで無かったかのように元通りの体に戻っていた。



「ななな…何をした?殺したのではないのか?」

 男はサタナスが何をしたか理解出来なかった。


「好きにした。だから時を戻した‼」


 時間逆行…サタナスは獣人の時間を戻しただけだ。時間を戻したのだから、怪我は無かった事になる。それが死であっても無かった事になる。

 時間逆行の代償としては自らの時間を使う事だが…




「獣人達よ。後はこの人間達を煮るなり焼くなり好きにしろ‼」

 サタナスは獣人達に言う。


「はっはっは。奴隷紋のせいでこいつらは人間様には逆らえん。」

 男は勝ち誇ったように笑う。


 奴隷紋は奴隷が逆らえないように、契約魔法を施した紋章だ。

 奴隷が気に入らなければ、契約者の意思で痛みや死を与えられる。




「はぁ…」

 サタナスが右足を上げ、〈ダンッ〉と地面を踏みつけた。


 すると瞬時にその場にいる人間と獣人は、吹雪(ふぶ)いている一面雪景色の銀世界にワープした。この状況をサタナス以外に理解している者はいない。

 ワープした瞬間、人間はあまりの寒さに凍え、母親と子供達は身を寄せ合った。



「奴隷紋を使い獣人を殺せばお前達人間は凍死するな…生き残るには獣人と協力するしかないぞ‼」

 獣人が獣人であった事で人間と立場が逆転した。この場で防寒具を持たない時点で人間の凍死が確定したからだ。




 だが獣人はその場から動こうとしなかった。


「どうした?その人間どもは死ぬのだ。助けるも殺すも好きにすれば良いだろう?お前達の主人の気持ちを知るには良い機会だぞ!!」

 サタナスは戸惑う奴隷に声を掛けた。


 だが奴隷が動く前に男が動く。

「助けて下さい。今までの事を謝りますから。あなた達しか頼れないんです‼」

 先程と同じように男は獣人に対し土下座をして命乞いをした。



 先程地面に倒れていた獣人が笑顔で男に近付き右手を差し伸べた。

 男はその右手をつかむ。


 掴んだ瞬間、左手で男の肩をつかみ右手で男の右腕を引きちぎる。

「俺たちは今までお前達に命乞いをしたが、助けてはくれなかったよなぁ‼」


 そのまま獣人は男の首筋に噛み付いた。あっという間に男は死んだ。

 獣人は許せなかった。自分より弱い人間に支配されたままの弱い自分が…

 助けられたのに仲間を見殺しにしてしまった弱すぎる自分が…

 過去の自分と決別を着ける為に、獣人はオオカミのような雄たけびを上げた。



 それに続き奴隷の獣人達は雄たけびを上げ、家族を殺す。長年の恨みが募っていたのだろう。銀世界は一瞬にして深紅の景色に変わった。



 サタナスは家族が皆殺しになった光景を確認し、先程と同じように地面を踏みつけた。

 サタナスと奴隷は元の部屋に戻る。家族の死体は連れては来なかった。今後この家を奴隷たちの物とするために、ごみは必要ないと考えた…




「この度は本当にありがとうございました。なんとお礼をすればよいか…」

 部屋に戻ると同時に奴隷達は土下座をし、サタナスに感謝の意を述べた。


「昔ここでポーチという獣人に世話になったからな。その礼だよ。あとはこの街の他の奴隷と一緒に好きに生きれば良いさ。」

 サタナスはもう一度右足を上げ、地面を〈ドン〉と踏みつけた。


 瞬間街全体が先程の銀世界に移動する。


「この街は我が領地に移動させた。自分に代わり他の奴隷も助けて欲しい。あとは獣人だけの街にするも良し、人間と共存するなり好きにせよ。」

 サタナスは一息入れて

「それと後でお前たちの力を借りたい。また後程ここに戻って来る。」

 サタナスは終始威厳のある声で獣人に告げる。



 その後サタナスは右手を空間にかざす。

「ゲート・オープン」

 瞬く間にサタナスはその場から消えた。


 獣人達に好きにしろと言ったが、サタナスは人間と共存出来る未来になって欲しかった。だが今まで囚われていた獣人たちの自由意思を尊重する。

-憎しみを乗り越えて分かり合える未来が来て欲しい…


 それが支配者たる魔王であり、平和を願う勇者でもある彼の希望だ。




-そろそろ魔力が無くなるころかな?

 サタナスは城に戻る。この間わずか10分の事だった。


 城に戻るやすぐに玉座に座り、エヴァを呼びつける。

「あと半日したら先程の街から獣人を連れてくる。街を移動させる魔力を使ったのでしばし休む。援軍は先にリリスの元に向かわせておいてくれ。」



 そう言うと同時にサタナスの意識は遠退く。


 魔王から勇者に戻る条件…それは魔力を使い切る事。

 魔王である以上、魔力は膨大だ。だが街を移動させたり消滅させたりすれば、あっと言う間に魔力は空っぽになる。


---------------------------------------------------------------------------------

「お~い。ユーリ・サイファー君…そろそろ起きようか‼」

 目の前には心配そうにユーリの顔を覗き込む剣聖・ストルとアサシン・イロスの顔がある。


「あぁ、おはよう‼」

 ユーリは呑気に挨拶をする。


-どうやらナーガは倒せたようだな…

 ユーリが意識を失った後、彼は地面に倒れた。ナーガはそれを作戦だと思い、後ろへ引きガードの態勢に入った。隙をうかがっていたイロスがその一瞬の隙を着いて首を裂き、トドメをさしたようだった。



「またバルムンクに意識を奪われたのか?」

 ストルはユーリを心配する。ユーリはコクリと頷く。

 ユーリは自身が意識を失う理由を『バルムンクを使いこなせていない。』と仲間に嘘をついている。

 実際意識が無くなる理由は明確ではないが、バルムンクが理由の可能性もあるとユーリは思う。



「とりあえずナーガは向こうでフィリアと兵士達が解体している。」

 イロスは低い声で、ナーガの死体の方向に顎を向け状況を説明した。


 ナーガの解体をしているフィリアは楽しそうな様子で内臓を取り出していた。恍惚の笑みを浮かべながら解体する彼女に、討伐隊の人間は引いていた。



「フィリアを呼び戻してくれ。多分だけどナーガを倒した事で魔王の軍勢がここに来る。早く逃げよう。」

 そう言ってユーリは立ち上がり、魔王リリスの領地から離れるべく準備を始める。

-多分じゃなくて、絶対に来るから。言う事を聞いてくれよ…


 ユーリ、ストル、フィリア、イロスはすぐさま逃げる準備を整えた。若干フィリアは解体し足りないようで、ナーガの方を惜しい顔をして眺めていた。



「さぁ討伐隊の皆さんも一緒に逃げましょう‼」

 ユーリ達はナーガ討伐隊の人間に注意を促す。


「いえ、私達にはまだ任務がありますので。」

 討伐隊のリーダーらしき人間は提案を断る。


-毎度ながら弱い魔物から財宝の略奪か?

 ユーリは討伐隊の人間が魔物から財宝を奪うのだろうと分かっていた。弱い人間を助けても、その人間が自分より弱い魔物から略奪する行為を…

 だが見て見ないフリをする。どうせすぐに殺されると分かっているから…


 ユーリ達と討伐隊はその後別行動となった。




 何もない更地に着くと、フィリアはどこからともなく大きな絨毯(じゅうたん)を召喚した。

「魔法の絨毯よ!!」

 フィリアに促されるままにユーリ達は魔法の絨毯に乗る。


「じゃあ近くの安全な場所に向かうわね~」




絨毯に乗りながら見る真っ赤な夕焼けはまるで血塗れの空だった。今日も人が魔物を殺し、魔物は人を殺す。当たり前の様な日常が続いている。

 当たり前のような血塗れな日常…


 こんな日常を終わらせたかった…

 争いのない…人と魔物が出来る限り戦わない世界になって欲しかった…



 勇者ユーリ|《魔王サタナス》には夢がある。

 いつか勇者であり魔王である彼を中心に、人間と魔物が共存出来る世界を作る事。



 ユーリは勇者だ。だから人間の良いところや悪いところを知っている。魔物が恐い事も知っている。

 サタナスは魔王だ。だから魔物の良いところや悪いところを知っている。人間が狡猾なのも知っている。


 両サイドの良いところや悪いところを知る彼だ。今は分かり合えないが、お互いが歩み寄ればいつか分かり合えるかもしれないと断言出来る。

 この架け橋となりうるのは自分しかいないとユーリは確信している。



 だからまず目標として争いを生む他の5体の魔王と悪政(あくせい)を強いる王や支配者を倒さねばならない…



 勇者であり魔王である彼は休息が殆どない。ずっとどちらかの意識を行き来するからだ…

 だから彼らの疲れは殆ど取れない。


 休めない事はデメリットかもしれない…

 だが他の人間|《魔物》より倍の時間行動が出来る。



-人より恵まれた時間の多さを使い、世界を平和にしてみせる。

 きっとそれは絶対強者(ユーリ・サタナス)にしか出来ない世界統一|《世界征服》の仕方だ。

 最後まで読んで頂きありがとうございます。


 この小説が面白い・期待出来そうと思ったら、ブクマや下の☆☆☆☆☆から評価して頂ければ幸いでございます<(_ _)>

 まだ書き始めですが、アドバイスなどございましたら教えて頂ければ助かります。


 駆け出しですが作品を面白くしていきたいです。

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