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私の人生(まだ半ば)  作者: 緋月
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妹は行方不明常連

 私の波乱万丈人生――の一端――を聞いて欲しい。

 自分でも、何故今無事に生きていられるのか、不思議な程に波乱だから。


 とは言っても、幼少時はごくごく普通――だろう、多分――な日々だった……ような気がする……よね? 普通だよな?

 あれ?

 物心ついたのは――というか、今考えるとその時が自分としての記憶の始まりだという時期は――小学校二年くらいのことである。

 え? 遅すぎる? んなこと言われても。

 その次期に引越しやらなにやらの、環境的変化のあれこれで、それ以前の記憶が吹っ飛んだという可能性もあるが、今現在自覚がないので、小学校二年からということにしておく。暫定。

 小学校二年で、泥棒は犯罪であるということを学び、小学校三年で、盗作は犯罪なのである、ということを学んだ。クラスで事件が起きたお陰である。

 更に小五で財布盗難事件があり、小六でいじめ事件が勃発した。

 こう考えると、小学校時代は常に教室内がぎすぎすしていたような気もする。教師が一人辞任することになった。

 因みに、私はどの事件にも、当事者として関わったりはしていない。ついでに言えば、第三者としても殆ど関わってはいないような気がする。

 存在が希薄過ぎて、他者に認識されていなかったのでは? と今になっては思うが……多分、小四の一年間、学校に通えなかったのも理由の一つなのだろうと思う。

 小四の一年間は何していたのか、って? 山篭りしてました。旧家の分家に属する我が家は、一桁代の一年間、本家に監禁されることが伝統であり、拒否することが出来ないのである。何だそりゃ?

 そんな小学校生活を無事? に終え、中学に上がると……更なる波乱が待ち受けていた。所々の記憶がないのである。

 まず中一の夏休み中、私は行方不明になっていたらしい。八月に入ってから突如として姿が消え、末日に戻ってくるという、実に学生に考慮した行方不明期間……なのだけど、宿題が全く終わっておらず、二学期中に補講を受けるという事態に……。

 次は中二の二学期。期末テストを目前にした行方不明。こちらは一週間程度で戻ってきたらしいが、これについても、全く記憶がないのだ。

 その次は中三まるまる一年間。これも記憶がなかった上に、中三をもう一度やり直す事態となった。

 高校に入ると、本来なら絶対に聞こえないはずだろう、音やら声が聞こえ始めた。

 この辺で、もしかして自分、ちょっと精神的におかしいのでは? と考え始め、年の離れた兄の協力を経て、そっち系の医者に相談してみたりしたけれど、診断的には“ふつう”どこもおかしくはないとか。

 年を経るごとにその音や声は大きくなってきて、やがて形を取り始めた。

 その音というのが、木々のきしむ音だったり、地面が揺れる音だったりとか、系統としては『崩壊』に類するんじゃないか、と思われるもの。

 声については更に悪く『もういっそ滅ぼして』とか『終わりにして欲しい』とか。極めつけは『助けて』であったりした。

 さりとて、そんなことを言われても……とどうしよもなく日々を過ごして、大学へ。

 行方不明生活再び……である。やっぱり記憶はない。

 でも、何かこう、繋がった感じはした。

 行方不明のきっかけは判らなかったけど、戻ってきた後にちょっとした変化があったからだ。

 どやら私は『助けて』という声に、強制的に答えるさせられているらしい。即ち、記憶がないままに助けている。というのも、戻った後に声と音が一種類ずつ減っているからだ。

 記憶が全くないので、その間何をして助けたのかは判らないし、当然何を助けたのかも判らない。

 あんまり行方不明期間が長くて(総合して)、結局大学は中退。比較的緩い専門学校に入りなおして、何とか卒業。

 その後、ルーズも極まったバイトを続け、その間も行方不明状態は続いた――が、ある時唐突に突発的行方不明状態が解除された。

 バイト仲間で気の合う相棒だと思っていた親友――だと思っていた――が、突如として我がアパートにやってきて(住所は教えてなかった)、金銭的に辛かった為に同居していた兄を巻き込んで、包丁を振り回してくれた結果、二人して死に掛けたからだ。

 どうやら奴はストーカー化しており、私が親友だと思っていたものが、あっちは恋人関係だと思い込み、ついでに同居している兄を浮気相手と勘違いしていたらしい。

 余談だが、相手はきっちりと男である。

 後に、兄が「男女で親友はない。ないなー」と笑って言っていたが、恋人って親友が一歩進んだやつじゃないのだろうか?

 学生時代の殆どを、行方不明と記憶喪失に費やした私には、人間関係はちょっと難しい。

 ともあれ、命の危機に瀕したからなのか、以後、声と音は聞こえなくなり、突発性行方不明状態も解除された――らしい。

 とまぁ、そんな風に、暢気に思っていられたのも、一年ちょい位だった。

 このところ、マジ平和ぁ。と、バイトから正社員になって働き始めた結果安定収入が見込めるようになり、そろそろ兄に頼るのもやめられそうだし、一人暮らしを――なんて計画していた時のことだった。

 本当に、突然に、予兆もなく、ついでに自分の覚悟も全くないままに、戻ったのだ。行方不明中の記憶が、全部。

 トータル三年分くらいだろうか、地球時間で。それが、一気に。

 脳が焼ききれるかと思った。

 さて、その戻った記憶をお話する前に、ご存知だろうか。ホラー界において【異界】と呼ばれるものが存在するのだと。

 私は最初は知らなかったし、話を聞いた時も都市伝説チックなものだと思っていた。

 そもそもそういった現象に名称を与えるなら、本職から言わせると【常世】という名称になるので、まさか異界と名付けられたそれが、常世と同じものだとは思ってもみなかったのだ。

 しかしながら、どこからか知らないが、じわじわと広がったその名称は、現在も様々な文字に形を変え、存在し続けている。

 とは言え、本職はどうやら常世で名称を統一しているらしいので、そっちを使う。

 何が言いたいのかと言えば、私が行方不明時に行っていた場所の一つが、常世だったわけである。

 一つが、という言い方でお分かりだろうが、当然他の場所にも行っている。平行世界、異世界、時には他惑星。

 助けを求められる度に呼び出され、そこで起こっている大問題を解決する。

 ファンタジーストーリーで言うところの、召喚勇者とか召喚聖女とかに近いのだろうが、あれは大体人間の魔術師とかが召喚するのに対して、私の場合は世界の根源――意志が呼び出すので、勇者やら聖女やらに与えられる困難や支援は存在しない。

 そんな記憶が戻った時、私はやった。

「ステータス」

 と、異世界の記憶が存在するなら、誰もが一回はやっちゃうだろう可能性が否めないことを。

 だって、ゲーム好きなんだ。

 そして、ステータスは――現れた。目の前に。文字色白だから、周囲の風景に溶け込んではっきり見えないけど、確かにステータスチックなものが。

 レベル上限がどこなのか知らないが、999レベル表記に驚愕の思いを抱えながら、見えた職業欄に度肝を抜かれる。

 職業:存在の根源(世界を創造したる十柱の一。世界を存続たらしめる三柱の一)封印中/救世主(()()

 何じゃ、そりゃー!

 色々突っ込みたいところはあるものの、一番突っ込みたいのはここだろう。

 何故、救世主なのに、その説明が飯屋!? メシアとかじゃなくて!?

 愛じゃなくて、ご飯で世界を救うのか!?

 確かに巷に溢れた異世界ものって、飯テロ確立高いけれども! って、そうじゃない!

 その突っ込みを、まだ同居中の兄にぶつければ、兄は酷く呆れた顔で言った。

「いや、一番突っ込みたいところって、職業で一番最初に表記されてる方じゃなくて?」

「ん?」

「それ、マジなら、お前、神ぞ?」

「……おぉ?」

 むしろ、そっちはどうでも良かった。そっちの方は、まだ自覚も記憶もないので。封印中って表記があるんだから、きっと自覚と記憶に至れない何かがあるのだろう。どうでも良い。

 やっぱり重要なのは、救世主(飯屋)である。

「おかしくね? 私、そんな料理好きくないし、美味くもない」

「大丈夫だ。食べられはする」

「そりゃそうだろう。日本企業の味へのこだわりは、ドン引きを通り越してると思う」

 何せ、あっためれば自分で作るより美味いものが作れる現実。金はかかるが。

「んなことより、そんな記憶が戻ったってことは……復活するかも? 突発性行方不明」

「あうち!」




 そして私は、現在もあっちこっちに呼び出され、恐怖に料理と戦っている。

 ぶっちゃけ、飯屋は救世主とは何ら関係がなかった。異世界にはレトルト食品がなかったので、自分で作れなきゃ死ぬ。ただそれだけの、実に尤もな真理に基づいたものであったのだ……。

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