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秋葉原ヲタク白書96 聖地ライアーズ

作者: ヘンリィ

主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。

相棒はメイドカフェの美しきメイド長。


この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナのためのラノベ第96話です。


今回は、莫大な信託預金を狙う女ペテン師と実の娘を殺害した金満家夫妻に過去の誘拐が絡む難事件が発生します。


ペテン師が嘘つきに法螺を吹き、誰が誰を騙しているのか疑心暗鬼の中で、緊迫のDNA鑑定の結果は、まさかの…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 血塗れホッパー


珍しく新橋鮫がミユリさんを呼ぶ。

彼女は、出勤前に私服で万世橋(アキバポリス)へ。


「話って何?」

「あ、ドアを閉めて。まぁ掛けてょ。でさ。カミさんが本好きでね。始終何かしら読んでる。大抵くだらん小説だ。空港で買って読んだら棄てる類」

「ふーん」


あ、新橋鮫は万世橋(アキバポリス)の敏腕刑事ナンだが、僕は彼にはたーくさんの貸しがアル。

その話に相槌を打つミユリさんは、御屋敷(メイドバー)のメイド長で僕は彼女のTO(トップヲタク)ナンだ。


「で、カミさんが、ココ何ヶ月か、しつこく俺に読め読め、と勧めるのが…」


ココで新橋鮫がハードカバーの本を出す。

おお!表紙絵は稲妻の下で抱き合う男女。


タイトルは"ヲタクな流血"w


「見覚えは?」

「ないわ」

「この作家も知らない?」

「ええ、全然。なぜ?」

「探偵2人組の話なんだ。美貌のメイド長とヲタクな相棒のね」

「ウソでしょ?」

「2人はマンションの同じ部屋に住む警察の顧問だ。名前こそミユリとテリィじゃないがな。それでもさ。このオグデと言う作家は、君達をかなりよく知っているぞ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


外神田3丁目。中古マンションの解体現場。


「何をボンヤリ突っ立ってるんだ?立ってるだけの奴には給料は払わんぞ」

「監督!ソレが木材破砕機(ウッドチッパー)に何か詰まっちまって…」

「フザけるな。昨日は動いてた」

「修理業者を呼びました」

「いつ来る?」

「午後には」

「おいおいおい。今日中にあと10箇所、伐採して整地しないと基礎が打てないんだぞ。どこが詰まった?」

「多分ドラムと刃の間じゃないかと」


作業員が止める間も無く、血気盛んなデブ現場監督が破砕機の中に自分の手を突っ込むw


「…取れた。こんなモンが詰まってた。さぁ作業再開だ!働け!」

「止めて!監督、今すぐに!」

「何だ?」

「コレを見て!」


作業員の手には、血塗れの警察手帳だ。

ギョッとなった監督がホッパーを覗く。


あ、ホッパーって逝うのは、処理物を仮受けするコンテナのコトだけど、中が真っ赤だw


文字通りの…血の海w


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜、今度は、新橋鮫から僕にお呼びがかかって、万世橋(アキバポリス)地下の暗い検視室へ出向く。


桜田門(けいしちょう)エリートの目も当てられない末路だ。まぁ未だ念のためにDNA検査で確認中だが、元捜査官のアンダ氏に間違いナイ。工事現場の先で車も見つかってる」

「じゃ桜田門の仕事になるワケ?」

「ソレが、連絡を入れたら、彼はもう退職した民間人だから所轄が捜査しろ、と。あれ?ミユリは?」

「ミユリさんは、御屋敷(メイドバー)の営業中は抜け出せないょ。抜け出して来てもメイド服だw他にアンダ氏の情報は?」

「捜査官として34年立派に務め上げ、仲間にも慕われてたらしい。一昨年退職し、妻と金沢に移住。7ヶ月前に戻ってきた」

「コレが元捜査官だとして、破砕機にかけられる前に体を切断されてるね」

「現場のチェーンソーを調べたら、1台に血痕があった。犯人が使ったんだ」

「この臭いは痴漢撃退用の唐辛子スプレーだな。検視官に伝えてくれ、この袋の中身は恐らく顔だ」

「検視官もさぞかし助かるだろうょ」

「靴跡からして彼は自ら現場へ向かってる。唐辛子スプレーは近距離用だから、襲われたとしても、かなり接近してたハズだ」

「顔見知りに呼び出されたのか?」

「捜査官は大柄な男だった。破砕機まで誘き寄せたんだろう。念のため奥さんがチェーンソーを使えるか確認を」

「なぜ妻を疑う?」

「彼の持ち物に、財布や腕時計の残骸はアルけど結婚指輪がナイ。ソレに、この袋には皮膚や骨と一緒に、ラテックスとホイール風の破片が混ざってる。コンドームを少なくとも1つ持ち歩いてたようだ。アンダ元捜査官に死ぬ備えはなかったが、お楽しみの備えは万全だった」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


翌日、新橋鮫は元捜査官の妻を呼ぶ。

何処にでもいる、警察官の妻タイプ。


あ、事情聴取は取調室で行われてて、僕とミユリさんはマジックミラー越しに参戦スル。


「浮気はなかったわ。少なくとも女とはね。夫は仕事と浮気してたの」

「でも、ご主人は退職されてたのでしょう?」

「ええ。それで金沢へ移住した。でも、仕事に戻りたいと落ち着かず、沈んでばかりいたから仕方なく戻って来たの」

「お言葉だが、コチラでも彼は落ち着いてなかった。御主人は、未使用の避妊具を2つ持ち歩いてた」

「半年前に別居してた。円満にね。連絡は取ってたけど」

「離婚してナイなら、ご主人の年金や生命保険金の受取人は未だ貴女というコトですね?」

「私を疑ってる?昨夜は娘の家でディナーでした。ロゼをボトル半分飲んで夜は泊まったわ」

「娘さん以外に証人は?」

「今朝、電車で戻ったから切符を買った記録がある。駅の監視カメラ映像でも何でも確認してください」

「わかりました。ソレは確認するとして御主人を恨む人は誰かいますか?」

「夫は、コチラに戻って以来、昔、担当していた未解決の事件を調べてたわ。昔の友人に資料のコピーをもらってね。最後に話した時に、やっと1件解決出来そうだと言ってました。ある事件の犯人に迫っていると」

「誰です?」

「わかりません。別居後は仕事の話を控えてたから。でも、夫の家に行けば資料があります。そこに答えがあるハズ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ミユリさんは、パパで、作家で、ペンネームはオグデ氏である人を訪ねる。


「ミユリ!何ヶ月ぶりになる?とてもきれいだ」

「ありがとパパ。ソレとも、オグデ氏と呼ぶべき?何のつもり?」

「お前の決断や仕事に敬意を表したまでだ」

「ふーん。なのに、相談もなくペンネームを使って本を描いたの?私が怒るのがわかってたでしょ?」

「本を読んだのか?」

「当然よ」

「で?」

「馬鹿げてる。私達は、銃撃もプロレスもやらないし、断じて一緒に寝てません!」

「濡れ場ナシじゃ売れんだろ。なぜ私だとわかった?」

「オグデは、昔飼ってた犬の名前じゃない?ポルノ女優の芸名並みの安直さ!」

「出版社から1冊頼まれたが、完全に煮詰まってスランプだった。そんな時、ママから前の事件の話を聞いたンだ」

「ママも承知なの?!」

「と、とりあえず、コトの顛末を」

「顛末はいいから、直ぐに終わらせて」

「どういう意味?」

「電子書籍化されてなくて助かったけど、夕べ50万円近くも使ってネットで買い占めたのよ。出版社に話して残りも回収して!」

「冗談だろう?テリィ君は読んだのか?」

「テリィ様と何の関係があるの?!」

「いや…テリィ君の感想も聞きたいと思って」

「あのね。テリィ様は、ただのお友達じゃナイの。だから、テリィ様には本の話は絶対秘密。目立つコトはお嫌いょ。こんなコトがバレたら、私は殺されてしまうわ。出版社に逝って。本気ょ、パパ」


第2章 喪われた10年


翌日の昼下がり。


僕は夕方の開店まで御屋敷を使い考えゴト。

ミユリさんが壁一杯に貼られたメモに驚く。


「いつも壁紙の色など気にしてなかったけど、コレで御屋敷が明るく見えるね」

「何ですか、コレ?」

「故アンダ氏の捜査資料だ。メールしたろ?」

「亡くなった元捜査官が追ってた未解決事件の資料?」

「奥さんから送ってもらった計3件の捜査資料を1件ずつ貼ってみた。ここに貼ったのは全て憎悪犯罪(ヘイトクライム)だ。先ず、教会全焼事件で放火犯は不明」

「今回の犯人ですか?」

「違う。元捜査官が残した詳細なメモを読み返すと、僕が思うに放火犯は、もう死んでるな」

「まぁ」

「こっちはもう少し手がかかった。銀行強盗事件で、強盗2人は別件で刑務所に入れられ今も服役中。だから、今回の犯人じゃない。最後は、合計6人の連続毒殺事件。その犯人は、容疑者の兄弟だけど海自で昨夜はソマリア沖だ」

「アンダ元捜査官が長年解明できなかった3件を数時間で解いてしまわれたの?でも、残念ながら、昔の事件は関係ナシだったワケですか?」

「うーん。でも手がかりはゲットした。アンダ元捜査官がコレ以外の事件の資料を取り寄せてないかを確認したトコロ、もう1件あった」

「あ、"奇跡のミィナ"ですね?」

「え?この事件を知っているの?」

「もちろん。誘拐された子が10年監禁された後、自力で逃げて両親の下に戻ったの。ワイドショーが大騒ぎでした。アンダ元捜査官も捜査してたとは」

「うん。彼は、数ヶ月前にも資料コピーを請求して受け取ってる。だが、何故か自宅にその資料が無かったンだょな」

「ミィナの誘拐犯を見つけたのでしょうか?」

「うーんワカラナイ。でも、あるべき資料がナイって気持ち悪いょね。昨夜犯人が奪ったか、元捜査官を粉砕した後で自宅に侵入して盗んだか。いずれにしろ、元捜査官を殺したのはミィナの誘拐犯かもしれない。例の工事現場は、ミィナの家からも遠くナイ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


翌日、新橋鮫に連れられミィナ宅を訪問。


「たった1人の我が子を10歳で失い、20歳で取り戻した気持ちは、言葉に出来ません。10年失った、と人は思うでしょうが、私達は、やっとコレからズッと一緒に過ごせると思った。奇跡ですょ。もちろん心配はあります。誘拐犯(モンスター)は野放しでしたし」

「今回の殺人と同一犯とは決まっていません。ただ、最近怪しい人物や車を見ませんでしたか?」

「いいえ。何も」

「ミィナはどうかな?」

「恐らく何も聞いてません」

「今、いますか?」

「2階で家庭教師と高卒認定の勉強中ですが…娘を余り関わらせたくないのです」

「しかし、もしも我々が正しければ、彼女は中心人物ナンです」

「同じく、もしも違っていたら、娘は動揺し何ヶ月も前に逆戻りしてしまうでしょう」

「最近になって、やっと落ち着いて来たトコロです。何週間も指1本触れさせなかったのが、やっと手を握らせてくれるようになった」

「アンダ氏から最近連絡はありましたか?」

「残念ながらありません。娘がさらわれた後、私は何も手につかなくなりました。あの日、私が学校に迎えに行くハズが、会議で遅くなり、娘は歩いて帰ろうとした。全て私のせいなんです。私が、途方に暮れていた時にアンダ捜査官は手を尽くし、支えてくれたのです」

「ミィナは、犯人の似顔絵作成に協力して、犯人のファーストネームも覚えていました。キスイです。御自宅に戻って来て以来、彼女が、他に何か思い出したコトはありませんか?犯人の特定に役立つような?」

「特に何も」


そう両親がかぶりを振ると、階段の上から女子の声がスル。天然パーマ。ミィナなのか?


「ママ、パパ。ねぇ何かあったの?」

「ミィナ!ダメじゃないか!2階にいなさい!」

「何でもないのょ。すぐ済むから上にいてね。待ってて」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


何となくキツネにつままれた気分で、新橋鮫とミユリさんと僕は、ミィナ宅を後にする。


「そうは逝っても、キスイの似顔絵は、近隣住民に回しておこう。元捜査官を殺したか、どうかは別として」

「キスイなんて空想の産物だ。見つかるモノか」

「テリィ様。ソレ、どういう意味ですか?」

「キスイは、殺人も誘拐もしていない。そもそも架空の人物だから実在しない」

「では、ミィナが嘘をついたのですか?」

「いや。嘘をついたのはあの子で、ミィナじゃナイ。あのね。彼女はミィナじゃない。アレはニセ者だ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


そのまま、一同で万世橋に戻ってミィナの写真2枚を比較し色々と検討スル。

1枚は誘拐当時の幼女のミィナ、もう1枚は帰ってきた時のティーンのミィナ。


「目は魂の窓と言うが、この場合は耳だょ。よく見比べてくれ。三角窩の深さと耳たぶの付き方がまるで違う。この2つは別人の耳だ」

「そんなに違うか?」

「耳の構造が全然違うだろ?」

「ミィナは10歳でさらわれたんだ。体も成長すれば体格も変わるだろう」

「あのさ。成長しても耳の形って変わらないンだょ。この幼女は、このティーンには成り得ない」

「アンダ元捜査官は、ミィナの誘拐犯ではなく、彼女自身がニセ者と逝う疑惑に迫っていたンだ」

「耳を根拠に?」

「"奇跡のミィナ"の写真が家族からマスコミに公開されたのは半年前だ。その2週間後アンダ元捜査官は、誘拐の全資料のコピーを取り寄せている。僕達同様"耳"に気づいたかどうかはともかく、彼は疑いを持った。彼女は、ミィナのニセ者ではないか?とね。目的は、もちろん夫妻の莫大な資産だ」

「しかし、そのニセ者はDNA検査にパスしてルンだ。アンダ元捜査官の資料にもあったろう?」

「確かに。ミィナの歯ブラシから採取されたDNAと一致はした。だが、その歯ブラシは妙なコトに、検査後に消えてしまった。検査を委託された民間のラボは、ケアレスミスだとしている」

「そのラボ内部に共犯者がいて、検査結果を一致させてから、歯ブラシを捨てたのカモしれません」

「ミユリ、お前もか…」

「鮫の旦那、僕達の推理を認めてナイって顔をしてるな。驚きだ」

「認めてる!お前らの言うコトは認めてる!だがな。この中で人の親なのは俺だけだ。自分の子なら10年いなくなろうがわかるモンだょ」

「でも、鮫の旦那だって子供をさらわれた経験はナイだろ?あの両親が、詐欺の餌食になったのも無理は無い。娘の帰りをズッと10年間も夢見てたんだ」

「夫妻を呼んで、なるべくショックを与えないようにしながら事実を伝えましょう。そして、夫妻のDNAを取らせてもらい、ラボに残ってるニセ者のDNAと照合するの。それで嘘を証明できるわ」

「あの夫妻だって、一緒に暮らしてる娘が殺人犯か否かを知る権利はアル」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


早速ご夫妻を万世橋(アキバポリス)に呼ぶ。


「何か進展でも?」

「はい。おや?奥様も御一緒では?」

「ええ。来ていますょ」

「娘さんも?」

「実は…昨夜あの後、娘から質問攻めに合いましてね。娘は、何かに感づいてたようで、仕方なく正直に話したのです。すると、あの子は気丈に全てを知りたいと言い出して。ミィナ。コチラが新橋鮫さんとそのお仲間だ」

「やぁミィナ。今日は御両親に話があってお呼びしたンだ」

「でも、私、どんな話でも聞くわ。アンダさんとは会ったコトなかったけど、両親の力になってくれた。協力したいの」

「では、当時の様子を教えてくれ」

「あの週は誕生日だった。本当のじゃなくてキスイが決めた日。その日だけは優しかったの。でも、後で気づいたけど、私をさらった日だった。楽しかった家族旅行から帰った直後ょ」

「何てコトだw調書によると、キスイはトラック運転手で、長距離を走る時は、君を運転席の後ろに乗せていたンだね?」

「YES。降りるのは禁止だったけど、時々外を観てた。木とか車とか。車外の人達。地下室ではズッと1人だったから」

「資料によると、君はキスイの家が何県にあるかもわからなかった」

「さらわれた時は未だ子供だったから…テレビも新聞も1度も見せてもらえなくて。後でソレは奴に依存させるための手段で、誘拐犯が良く使う手だと聞きました」

「ソレで誕生日の週に何が起きたのかな?」

「キスイが言い出したの。そろそろ、家族を作ろうって。頭から離れなかった。だから、トラックに乗ってた時、キスイが寝るのを待ってカバンを探ったの。髭剃り用の折りたたみカミソリを奴の喉元に当てた」

「だが、やめた」

「なぜか出来なくて。ソレでトラックを降りて朝までひたすら走って逃げた」

「で、静岡の道の駅に着いた」

「後でそう聞きました」

「君は、道の駅のトイレに入りキスイのカミソリで髪の毛を剃り落とし、丸坊主になったンだね?」

「ズッと金髪に染められてたの!10歳の時からズッと!セラピストは、きっと私自身を取り戻そうとして金髪を剃ったのだろうと。でも、正直な話、剃ったことスラ覚えてない。なぜ、あんなコトをしたのかも覚えてない」


ココで僕の出番だ。

嫌な役だょトホホ。


「きっと保護された時に、可能な限り哀れに見えるようにって魂胆だったンだね」


ペテン師達の目が一斉に点になるw


「え?」

「はい?」

「今何と?」


僕は深呼吸してから意を決して語る。


「君は、僕が知る中でも指折りのペテン師だな。かなりのモノだ。まんまと警察と夫妻と僕達を騙した」

「何?何なの?」

「御夫妻は、今も君をモノホンの娘と信じて必死に庇っている。だが、真実を知るのは、僕と君だけだ」


ミィナのパパが立ち上がる。


「ミィナ!帰るぞ!」

「待って。コレは何なの?」

「大丈夫ょミィナ。貴女は何も悪くないの!さぁオウチへ帰りましょう。アナタ?」


妻に促されてパパが吠える。


「お前!もう私の家族に近づくな!」


第3章 ライアーゲーム


昼下がりの御屋敷は僕の秋葉原オフィスだ。

開店まで自由に使って良いと逝われてるが…


「テリィ様。今度はスゴい異臭がするのですが?」

「ポプリじゃないょ。象の糞だ。実は、貴重なコーヒーでさ。タイの象に排泄させたアラビカ豆ナンだ。コレで、しばらくは睡魔に襲われズに済む。ミユリさん、飲む?」

「ウンチは飲みません!ところで、あの後の夫妻の反応を見せたかったです。ショックだろうとは思ったけど、まさかDNAの提供も拒否するとはw」


"象のウンチ珈琲"を飲みつつ相槌を打つ。


「夫妻は、あのニセ者ミィナに完全に騙されてる。しかし、ソレを証明出来ない僕達は、アンダ元捜査官の殺害を証明するしかナイ…ところで、ミユリさん。昨日、メイド組合の寄合に逝くとか逝ってたっけ?」

「え?あ、はい」

「でも、ソレはウソだ。実際は、継父殿に会っておられた。もしかして、継父殿の描かれた本の絡みかな?」

「御存知でしたか?!」

「1時間前、本が200部近く届きサインした。でも、前から知ってたょ。常連が教えてくれたから」

「読んだ?」

「読んだ」

「怒ってます…ょね?」

「怒ってない」

「いつもなら怒るトコロかと」

「今までだって、僕にインスパイアされた人は少なくない。実際、様々なメディアのモデルになってる。優秀なヲタクは人を魅了するモンだ。ミユリさんも昔、面白いブログを描いてたょね?確か…"猫パンツ"だっけ?」

「な、な、なぜソレを?」

「"猫パンツ"は、実名入りの実話だから慌てたけど、お父さんの本は完全な創作だ。特に第32章では、僕とミユリさんは、遂に結ばれて愛し合い…」

「な、な、な、なぜ黙ってたのですか?いや、その、第32章ではありません。本のコトです!」

「え?だって継父殿は、ミユリさんに気を使ってペンネームを使ったんだろ?ヤケに腹を立ててるみたいだけど理由は何?」


地雷だ!と思った時は既に手遅れ!ミユリさんが爆発しかける瞬間に誰か突然の御帰宅?


うわ、ミィナだ?!


「両親は今、私は家庭教師のトコロだと思ってる。入っても?」

「ココに木材破砕機(ウッドチッパー)はナイぞ」

「何ならボディーチェックする?足を台に載せようか?話したいコトがあるの。テリィたんの指摘、図星もあったけどサ、全部が正しかったワケじゃない」

「お?ニセ者なのは認めるのか?」

「認める。でも誰も殺してナイ」

「ソレを信じなきゃいけない理由は?」

「理由は…真犯人を知ってるから。元捜査官を殺したのは、あの夫妻ょ」

「えっ?夫妻が?」

「娘を懸命に探してくれた人を、なぜ殺すんだ?」

「その人が…夫妻の秘密を暴きそうになったから。ホントはミィナは誘拐されてナイの。だって、夫妻が殺したンだモノ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「私の本名はシャキだけど、ミィナって呼んでも良いょ慣れてるし」

「苗字は?」

「この話に必要ナイから教えない。私がココに来たのには理由があるの」

「話して」

「ミィナは、あと2週間で21になる。生きてたらね。そしたら、彼女の信託預金が手に入る。総額5億円近く。それまで黙っててくれたら、全部話す。あの家でスパイもやる。また私が嘘をついてると思うなら…」

「そりゃ当然だろ?」

「2〜3年前に雑誌で見たのょ。"もしミィナが生きてたらどんな顔か特集"だったンだけど、ソレに出てたCG写真が私に似てた。まぁなんとなくだけどね。ソレで、事件のあらゆるコトを調べ、これなら騙せるわと思ったの」

「詐欺ならお手の物か?」

「ヤメて。こんなの初めて。デカいょね。産んだ親を騙すんだから」

「ソレで、多少のヘマはごまかせる作り話をデッチ上げたのね?地下室での監禁と虐待で記憶を失った。それなら記憶が欠落しても怪しまれないわ」

「トラックの話も上出来だ。トラックから逃げたコトにすれば、キスイも家の場所も逝えなくて全然おかしくない」

「最初から警察やマスコミは騙せる自信があった。問題は親よ。疑われたらなんていうか。シナリオを練り上げたょ。細かいトコロまでね。なのに疑われるどころか、会った瞬間から娘として受け入れられた。それで、自分は上手いのかと安心してたら2ヶ月前にあるコトが起きた。夜中に目が覚め、ふと横を見たらパパがベッドに座って私の腕を触ってた。昔ミィナとは、よくこうしてたンだ、とか言って。君は僕の娘だろ?って。パパは、私がニセ者だとわかってた。なぜなら…ミィナは自分が殺したから。虐待してたんだ。恐らくソレをミィナがバラすと脅したモンだから…」

「でも、ママはどーなの?」

「必死でミィナのコトを私に教え込もうとしてた。アタシがニセ者だとバレないようにって」

「そうすれば夫の罪も隠し通せると思ったのかな?」

「あの夫婦は、アンタ達にも嘘をついた。あの夜、ホントは例の捜査官と家の外で言い争ってたの。ソレを見た時は特に気にしなかったけど、アンタ達がやって来た時に思いついた。捜査官は、きっと私のコトはニセ者と見破ってたんだろうって。それで、夫妻に殺された」

「何と」

「2週間。それだけ待って。黙っててくれたら、警察の捜査に全面的に協力スル」

「OK。わかった」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕は、ニセ者ミィナに交換条件を出す。


「この2つの装置は、盗聴器だ。ミィナの家の1階と2階に1つずつ仕掛けろ」

「コッチのはデカいね」

「2つを窓際に仕掛けるコトが重要だ。その方が信号をキャッチしやすい。彼等の会話を録音できる。いいな?わかったか?」

「ええ。わかったわ」

「なら早速帰宅してくれ…あ、御帰宅じゃなくて」

「確かに私も悪いコトしたけど、あの夫妻よりマシ。テリィたんを後悔させない。約束する」


ミィナのニセ者はイソイソとお出掛け。

ミユリさんがいつもよりも長いため息。


「テリィ様も嘘つきですね。信じたフリがお上手」

「時間稼ぎのつもりだろうな。あの子、財産を奪ったら、そのママ姿をトンズラするつもりだ」

「なぜ今さら盗聴器ですか?彼女はボロは出さないでしょう」

「うん。盗聴器の方はどうでも良いンだ。2つ渡した内の大きい1つは閃光弾」

「え?あの、いつかの閃光音響手榴弾ですか?」

「音は大きいが威力は弱い。明日の朝、盗聴器がある階に夫婦とニセ者ミィナが揃ったら別の階の閃光弾を起爆して通報を待つ」

「ははぁ。令状なしで家を捜索しDNAを採取する算段ですね。でも夫妻がDNA検査結果を信じるでしょうか?」

「とりあえず、ニセ者ミィナがアンダ元捜査官を殺したかどうかを調べよう。殺害現場は凄惨な血の海だったらしい。ホンのわずかな血痕でも家から出れば。ニセ者ミィナを逮捕出来る。あの夫妻が如何に庇おうとも関係ナイ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ところが…現場は大騒乱でゴッタ返してる!

やや?神田消防のハシゴ車まで出動中だょw


「テリィ様、ホントに閃光弾でしたか?まさかモノホンの爆弾とお間違えを…」

「うーん特殊部隊(デルタ・ストライク)のサリィさんから借りた奴ナンだけど…」

「まぁ。返さなくて良いの?」


さらに不味いコトに…


「ダメだ!お前達は入るな!」

「コレは捜査ナンです」

「聞いて呆れる」


野次馬に紛れ偵察に来た僕とミユリさんの前にミィナをヒシと抱いた夫妻が立ち塞がる。

あぁそのミィナはニセ者ナンだが…ってかニセ者のクセに睨むなょな!ソコへ新橋鮫だw


「御夫妻!我々の顔は見たくナイだろうが、爆弾事件となれば、アンタ達に捜査員の選り好みなど出来ない」

「ソレとも、アンタ達夫婦が仕掛けた爆弾だとでも逝うのか?」

「何てコトを!」

「なら、警察が犯人を必ずや突き止めましょう。捜査の邪魔だ。どいて」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


夫婦を追い払い、新橋鮫と情報交換スル。


「警報機の作動はなかったようだ。侵入の形跡ナシ」

「ミィナだな。詐欺を疑われた翌日に早速こんなコトを仕出かすとは」

「理由はどうアレ、ミィナの奴、またまた迫真の被害者ぶりっ子だな」

「ともかく、コレでアンダ元捜査官殺害の証拠を探せるね」

「ソレが…空振りだったンだ。寝室も風呂もピッカピカで髪の毛1本なかった」

「キッチンもチリ1つない。とは言え金持ちの邸宅だ。まだ10部屋ぐらいあるがな…ちょっち鑑識の様子を見てくる」


新橋鮫がアチコチ怒鳴り散らしながら去る。

ミユリさんがススッと僕の横に来て耳打ち。


「継父の浮気のせいナンです。母を裏切った。あ、なぜ継父の本に怒ってるかってお聞きだったでしょ?」

「継父殿の浮気は知ってるが….本と何か関係があるの?」

「継父は昔から自由奔放な人で。ソコが好きでしたが」

「ヨソに女を作るまでは?」

「遊びだったって。本のサイン会で会った女だそうです。本名で本を描いてた頃ですね。ソレが母にバレました」

「ミユリさんのママは誇り高い方だからな。修羅場だったろうね」

「その後、家族は変わってしまいました。両親は関係を修復したけど、私は父と距離が出来た。なのに、あんな本を描くなんて身勝手に思えて、つい」

「バレないと思ったのさ。男だからな」←


僕達は、夫婦宅の広い駐車場にいる。


「この車のシートを見て。背の低い者が前に寄せている。パパは長身だしママの車はコチラのSUVだ。昨日、署でキーを見かけた」

「じゃあコレは、ニセ者ミィナの車ってコト?」

「ブレーキペダルを見ろ」

「血…ですね」

「アンダ元捜査官の血が犯人の靴底についてたんだ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


翌日の真昼の御屋敷(ミユリさんのバー)


僕が御帰宅するカモしれないと昼過ぎから御屋敷にいるミユリさんに思いがけない御客w


「パパ!どうしたの?」

「ミユリに託したいモノがある。君に渡したいと思ったンだ」

「入って」

「メイド喫茶って初めてナンだが…この飾り付けは少し暗くないか?バーみたいだ」

「テリィ様に言えば直ぐ明るくしてくださるわ」

「テリィ君は?」

「今日は、御出張みたい。今、事件の方は見つけた血痕の鑑定待ちなので」

「そりゃ面白そうだな」

「出版社と話を?」

「今、回収に動いているトコロだ。今後あの本は出回らナイだろう」

「助かるわ…コレは?」

「続編だ」

「性懲りも無く続編を書いたの?!」

「怒る前に聞いてくれ。編集者には渡さんから。実はミユリが来た時、最後の手直しをしていた」

「コレを私に燃やせと?」

「も、燃やす?!い、い、いや。ミユリの好きにしてくれ。ミユリに会えず、寂しいから描いたンだ。ホラ、溝が出来てたろ?僕のあの過ち以来。馬鹿なコトをしたのはわかってたが、ミユリとの関係まで壊れるなんて。大事な人を失ってしまった。でも、あの本を描いてる間は、寂しさが紛れたンだ。ミユリを近くに感じられて…」


一気に関係修復を試みるパパの想いを邪魔するかの如くココでミユリさんの電話が鳴るw


実は、電話して来たのは僕←


「ねぇパパ…」

「大忙しだな、ミユリ」

「少し待ってて。はい、ミユリです」


ココから僕との電話←


「例のブレーキペダルの血痕はアンダ元捜査官のモノだった」

「もう鑑定結果が出たのですか?」

「いや。結果は出てない。今、万世橋(アキバポリス)にいるンだけど、パパが証言した」

「え?パパ?パパなら今、御屋敷に…」

「何のコト?ニセ者ミィナのパパだぜ?今、彼は万世橋(アキバポリス)に来てる」

「はい?何しに?」

「自供をしに。自分がアンダ元捜査官を殺したと自供したいそうだ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ニセ者ミィナのパパの"自供"を隣室でマジックミラー越しにミユリさんと高みの見物w


「大方ニセ者ミィナが泣き付いたんだろう。"意地悪な警察にニセ者と決めつけられて、怖くなって気づいたら殺してたの!"とか何とか逝ったに決まってる。あの夫妻は、まだ娘と信じてるンだ」

「昔、自分のせいで誘拐されたと思ってますから…あの時、救えなかった罪滅ぼしをしているのかもしれません。でも、自供してる限り、鮫さんも起訴するか、娘を庇ってる証拠を見つけるか、2つに1つですね」

「選択肢は1つ。明らかに後者だ。ニセ者ミィナは容疑を逃れようと焦りミスを犯した。自供を受け入れて逮捕するしかナイ。DNA採取のために」

「ニセ者ミィナ発見時のサンプルと照合して、結果を見せるのですね?」

「昨日は、それすら信じないと思ったカモしれないが、終身刑を目の前にすれば、目を覚ますカモしれない」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


とタカをくくっていたら、何と照合結果は…


「えっ?!親子?!ありえナイ!」

「ソレが鑑定結果だ。あの娘は、パパと血縁関係にある。実の娘ってコトだ。前回ミィナの歯ブラシとDNAが一致した時は、民間機関が検査したが、今回はウチで調べてる。民間委託じゃナイから、結果を操作するコトは不可能だ」

「何かの間違いです。彼女はミィナでは絶対ナイと思う」


どこか得意げに説教を垂れる新橋鮫に、僕とミユリさんがコンビを組んで食って掛かるw


「でも、DNAが一致したんだぞ」

「耳の違いは?」

「DNA鑑定は覆せん」

「ニセ者ミィナの毛髪と照合したとありますけど?」

「そうだ」

「照合って、普通は頬の粘膜だょね?"奇跡の発見"の時、採取しなかったのか?」

「発見当時は、すっかり怯え切ってて誰も近づけない状況だったらしい。だから本人が道の駅のトイレで剃った毛髪と照合している」

「ミィナじゃなくても実の娘って可能性も。昔浮気して外に作った子がミィナのフリをして夫妻に近づき財産を狙ってるとか」

「うーむソレはあり得るな」

「いいや。その仮説は気に入らない。穴がある」

「穴と言うと?」

「ミィナの身に何があったのか説明がつかナイ」

「今は、なぜニセ者ミィナがDNA鑑定にパスしたかが問題ナンだろ?僕に、もっと美しい仮説がある。絶対にみんなも納得するハズだ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


無理を逝って夫妻のママの方を署に召喚w


「どうも。ご足労を」

「私の弁護士です。同席させます」

「今日ミィナを名乗る女性が…」

「あの子は娘です」

「確かにDNA鑑定はパスしている。毛髪を御主人の粘膜と照合したトコロね」

「ただし、直接採取した髪ではなく、彼女が剃ったとされているモノとの照合結果です」

「何かイヤラシイ言い方ですね?」

「私達は、最初の検査に疑問を持っていました。そもそも、照合に使用した歯ブラシが消えてますし」

「だから、ソレはケアレスミスだと…」

「だが、2度目の結果を受けて考えた。歯ブラシの紛失は、ホントに人的ミスで、あの毛髪がホントにミィナのモノならと」

「何が言いたいのかしら?」

「コチラへ」


僕達は、ママを取調室の隣室に御案内スル。

マジックミラー越しに事情聴取は進行中だ。


「何者かがミィナの毛髪を手に入れたなら、間違いなく本人と接触したハズです」

「女が自ら進んで髪を剃らせるとは到底思えナイので、全国の警察に問い合わせを行なってみました。すると、同時期に川崎で気になる暴行事件の記録があった。覆面の若い女が女性の髪を剃り逃走した、との事件です」


ミユリさんにバトンタッチ。

女子同士で上手に話してね。


「非常に珍しい犯罪でした。しかも、その暴行事件が起きたのは、あのニセ者ミィナが発見される僅か2日前でした。彼女は、ミィナを見つけ、当局には通報せずに、髪の毛を手に入れたのです。そして、ソレを自分の髪に見せかけるコトにしたワケです」

「川崎の被害者は、病院で偽名を名乗りオドウと言う男に引き取られたそうだ。因みに、オドウは、誘拐当時のミィナの通学路沿いに住んでいた」


ミユリさんが決める。

ミラーの先を指差す。


「彼女が、本物のミィナです」

「そ、そんな…違うわ」

「今日、警察がオドウの家を尋ねたら、彼は留守でマジックミラーの向こうにいる女子を見つけた。近所に住む人達は、彼の娘か妻だと思ってたらしい」

「さらわれたミィナは、時々外出を許されていたらしくて、その時ニセ者に襲われたそうです。辛かったでしょうが、貴女達ご夫妻のコトを覚えていて、今はとても会いたがっている。馬鹿げた自供さえ撤回してくれれば、御主人も直ちにココへお呼びするコトが出来ます」

「彼女に…会いに逝かれますか?」

「もちろん!」


数分後、僕達は取調室で抱き合う母娘を見てる。

マジックミラー越しに見た光景を僕は忘れない。


その時…


母は娘を瞬時に見分ける。

そして、娘は全てを許す。


第4章 ペテン師達の黄昏


僕の知らない何処か。

ミユリさんとパパだ。


「ミユリ?!」

「パパ。本のコト、怒ってごめんなさい」

「お前が謝るコトなど何もナイ。さ、入って」

「考え直したの。あの本、回収しなくても良いって。だから、そう出版社の人に伝えて欲しいの」

「ホントに?」

「続編を読んだわ。1作目より、かなーり面白くなってる」

「おお!赤で書き込みまでしてくれたのか?」

「少しだけどね。でも、一緒に検討しようと思って」

「そ、そりゃ光栄だな。待ってくれ。今、コーヒーを淹れるから」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕は万世橋(アキバポリス)の地下に彼女を訪ねる。

彼女は、留置所に入れられている。


「シャキ。シャキで良いか?未だ本名を名乗らナイらしいね」

「ミィナで良いょ、テリィたんは」

「ネットで君の正体を調べてて、逮捕されるトコロを見逃した。君の指紋、データベースにもナイとは意外だった」

「当然だょ。罪を犯したコトないし」

「捕まってナイだけだろ?」

「違いがあるの?」

「…本当の歳は?」

「モノホンのミィナなら15歳って答えなきゃね。でも、ホントは25才。いえ待って。実は35才。ソレもウソだったり」

「モノホンのミィナに君の写真を見せたら、見覚えがナイって逝われた。川崎のオドウってのも赤の他人だょな?昨日拘束されたけど」

「誰?」

「君を知らないと逝ってた。アレは嘘じゃない。ミィナの状況を知ったから川崎にいたンだろ」

「私はね。アチコチにいたの」

「残念だが、もうアチコチへは逝けない」

「私が元捜査官を殺した、と言うけど凶器は出てないわ。ブレーキペダルの血痕だけ。その血痕の説明なら、もう6通りも思いついてる」

「例えば?」

「…裁判を見に来てょ。絶対に退屈させナイから」

「嘘で切り抜けるつもり?」

「自信はアル…でも、ソレも嘘だと思ってるの?テリィたん」



おしまい

今回は海外ドラマでよくモチーフになる"ライアーゲーム"をネタに、女ペテン師、実の娘を殺害した金満家夫婦、鍵を握る警視庁の元捜査官、サイドストーリーでは、メイド長のパパなどが登場しました。


海外ドラマで見かけるNYの都市風景を、インバウンドが去った寂しい秋の秋葉原に当てはめて展開しています。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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