進め!南極大陸
博士たちは、南極大陸に上陸した。
雪と氷で覆われた真っ白な大地である。
夏の南極大陸は暑くはないが、死ぬほど寒いわけでもない。
装備をきちんとすれば、普通に活動ができる。
もちろん、天候が良ければ、という前提だ。
(懐かしいな、俺が前に住んでいたところだ。ここに来るのは、何年ぶりだろうか……。)
アムルは、シンシアと博士に語りかける。
アムルは以前、最高神ゼウスとして、熊に似た生物の姿でこの南極大陸に長年住んでいた。
そして、およそ6年ほど前に、『シーピーズ』に神殿を襲撃され、彼らに捕らえられたのだ。
博士たちは、2人乗りのスノーモービルを2台準備した。
これに乗って、『シーピーズ』の基地を目指すのだ。
1台には、アムルをおんぶした博士とレイアが乗り、もう1台には、ウェイと沖田船長が乗る。
そして、シンシアは沖田船長の膝の上に座るのだ。
「よし、行くぞ」
博士は、声を上げるとともに、アクセルを入れた。
ゴオォン
大きなエンジン音とともに、スノーモービルは走り出す。
「Oh, Hiro, so cool! (わぁ、かっこいい〜)」
レイアは、博士の後ろで声を出す。
スノーモービルを操縦する博士の背中が、とてもたくましく見えたのだ。
ゴオォン ゴオォン
ウェイもアクセルを入れ、博士が操縦するスノーモービルに続いた。
2台のスノーモービルは、シーピーズの基地に向かって、雪の上を走っている。
ウェイが操縦するスノーモービルの後部座席では、沖田船長はシンシアを膝の上に大事そうに抱きかかえていた。
「やっぱり、君だったんだね。君が、研究船パーズを守ってくれたんだね?」
沖田船長は、膝の上にいるシンシアに話しかける。
「う、うん……。」
シンシアは、頷いた。
「一回、君の姿を見つけたことがあってね、小さい女神だなぁと思っていたんだが……。シンガポールの近くでの海賊も、バンダ海での雷と海賊船も、戦艦も潜水艦も、全部、君が助けてくれたんだね? 北極海でも、助けてくれてありがとう」
「いや、でも……、あの時は、全員を救えなくて……。」
シンシアは、ゆっくりとうつむき、左手をぐっと握りしめた。
確かに、色々と助けたのは自分だった。しかし、あの北極海で、力の無さを実感したのも事実である。
「いや、君が謝ることはない。君のおかげで、私はこうやって生きているんだ。本当にありがとう。船長として、そして、個人的にも礼を言うよ。ありがとう」
「うん……。」
……と、シンシアが頷いた時だった。
バキューン
ババババ
バキューン
ババババ
周辺に銃声が響いた。
キン
キン
そして、周辺で、氷が弾ける音がした。
銃弾が、氷に当たる音だ。
「敵がいるぞ、待ち伏せされていた!」
博士は大声で叫んだ。
博士たちが操縦するスノーモービルは、雪原を進行中だ。
あたり一面真っ白な雪景色だ。
雪原のどこからともなく銃弾が飛んできたのだ。
「よしっ!」
シンシアは、沖田船長の膝の上で、神具トライデントを構えた。
シンシアは、氷も自由自在に操れる。
氷も水である。シンシアの能力で動かせる範囲内だ。
南極の大陸は氷で覆われている。
シンシアの使える武器は、そこら中にある。
「えいっ!」
シンシアは氷を自分の周りに浮かべる。
そして、数枚の大きな氷の板を作り出した。
「おぉう、君はそんなこともできるのか……。」
沖田船長は、目を丸くした。
「えへへぇ〜」
シンシアは、機嫌よく笑みを浮かべる。
カキン
カキン
カキン
氷の板は、博士とウェイの2台のスノーモービルの周りを浮遊し、飛んできた銃弾をことごとく弾いてゆく。
「ほっほっほっ。さすが、我らの女神だ」
沖田船長は、シンシアの頭をポンと撫でた。
ウェイは、前方を走るスノーモービルから手を振っているレイアに気がついた。
人差し指を上に向けた合図をしている。
スピードアップのサインだ。
博士は、この雪原を一気に駆け抜けるつもりなのだろう。
ウェイは、右手でサインを作り、レイアに返事をした。
「Okay, then. Leia! Hold on tight! (よし、レイア、しっかりつかまっていろ!)」
博士は、スノーモービルのスピードを上げる。
ウェイが操縦するスノーモービルもスピードをあげ、それに続いた。
2台のスノーモービルは、銃弾の飛び交う中を、突き進んだ。
「アムル!」
博士は、叫んだ。
(大丈夫! いつでも撃てるよ!)
アムルは、博士に答える。
アムルは、博士の背中におんぶされている。その右手には、神具ケラノウスを握っている。
南極の空はすでに厚い雷雲で覆われていた。『シーピーズ』がいつ襲ってきてもいいように、アムルが準備していたのだ。
雷雲さえあれば、相手が武器を持っていようと、雷を自在に操れるアムルの敵ではない。
「あっ! アムル! 右前方だ!」
博士はスノーモービルの右斜め前方に、人影を見つけた。
少し小高い丘の上からこちらを狙っている兵士が数名いる。
「あ〜い〜」
アムルは、右手に力を加える。
ピカッ
ゴロロォォォ
ドガーーン
稲妻が落ち、その周囲に兵士が吹っ飛んでゆく。
「おぉ〜」
博士は、稲妻の轟音と光を右目に捉えつつ、前方に集中する。
「Wei! Let’s run through all at once! (ウェイ! このまま一気に駆け抜けるぞ!)」
博士のスノーモービルの横に追いついてきたウェイに向かって、博士は叫ぶ。
「Yes, sir! (了解です)」
ウェイも、スピードをあげ、博士の後ろに続いた。
博士たちの2台のスノーモービルは真っ白な雪原を抜け、小高い丘を登り始めた。
「おい……。バカじゃねーのか……。」
博士は、思わず呟いた。
博士たちの前方に、大型のミサイル発射台が3機見えたのだ。




