研究船パーズA
大城戸博士たちがいる臨海実験センターの近くに大型船が停泊した。
この大型船は、南極探索のために新しく作られた船であり、研究機関を搭載した砕氷船である。
南極大陸への上陸のために国の大型研究費で製造されたのだ。
船の名前は『PRDsA』であり、『Project for Resurrection of Diverse Sea to Antarctic』の略である。
通称『パーズA』だ。
全長200メートル、全幅20メートルの大型船だが、研究船パーズよりもひと回り小さい研究船だ。
研究室は10程度で構成されている。
大城戸博士がこの研究所の所長に任命された。
研究費と業績の関係もあるが、南極に行きたいという研究者も珍しいため、他に候補がいなかったのもある。
大城戸博士は、所長権限を利用して、パーズAの船内に大きな水槽を設置してもらっていた。
イブカとその子供達の飼育用の水槽である。
もちろん大城戸博士たちは、船を操縦できない。
そこで、船員は、研究船パーズの時と同様に、国が手配してくれた。
「沖田船長、今回もよろしくお願いします」
博士たちは、港から研究船パーズAに乗り込んだところだ。
そこには、船長と、数名の乗組員が、乗船する研究者たちを出迎えていた。
船長は、太平洋と大西洋を航海した研究船パーズの時と同じ、沖田一二三である。
研究船パーズの時と同じ顔ぶれの乗組員たちも数名いる。
生き残って、また研究船パーズAに乗りたいと志願したものは、パーズAに乗船しているのだ。
一方で、生き残ったがパーズAには乗りたくないという乗組員も、もちろんいた。あくまでも個人の意思である。
「あぁ、大城戸教授。またお世話になります」
沖田船長は、帽子を取り、深々と頭を下げた。
いつもの制服を着ている。左手の包帯は取れていた。
水素爆弾の爆発の際に負った外傷は癒えたのだ。
「こちらこそ、よろしくお願いします。沖田船長がいると心強いですね」
博士も、沖田船長に合わせて、頭を下げる。
「はは、今度こそは、安全にいきたいものですがねぇ」
沖田船長は、少し暗い目をしつつも、口元に笑みを作る。
「そして、娘さんも無事で、よかったです」
沖田船長は、シンシアに笑いかけた。
シンシアは、博士の足の後ろで沖田船長をこっそりと見ていた。
「……。」
シンシアは、沖田船長の見つめるような眼差しに、つい目を背けてしまった。
出港の日は、2月10日だ。
北半球では冬の季節に研究船パーズAは日本を出港する。
日本では冬だが、南半球では夏である。今からが南極大陸内で活動しやすい季節だ。
ついに、南極大陸に向けて、大城戸博士たちの航海が始まった。
書類上は南極での調査が目的である。
しかし、博士たちの真の目的は、南極大陸にある『シーピーズ』たちの基地である。




