表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月と海のリザレクション〜海神ポセイドンの幼女転生〜  作者: 幸田遥
第2章 大西洋航海編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/93

久保信一とホヤ


 久保信一は大城戸研究室の助教である。


 大城戸研究室のポスドクから、この4月に助教になった。


 海産物の研究を専門にしている。




 ウニの人工合成の論文が大きな雑誌に掲載され、今はマボヤの遺伝子組み換え実験に集中している。


 カリフォルニアのパトリック教授からもらったマボヤを元に、遺伝子組み替えで、他の種類のホヤを作るのだ。


 元々の海には、2000種類以上のホヤが存在していた。

 人工的に作ると言っても、もちろん、その一部である。


 元々存在したホヤと似たホヤができれば、それだけで論文が書ける。

 論文の大量生産が可能かもしれない。つまりこの研究は、論文を大量生産するための研究である。一方で、海の生物の多様性の回復にも貢献するではあろう。



 信一は、やる気満々で実験に励んでいた。

 研究船パーズは、大西洋に入り、ニューヨークを経由し、ウッズホールに停泊中だ。


 その間、ずっとストイックに研究に励んでいた。ニューヨークに停泊中は、ずっと船内にこもっていたのだ。



「ふぅ、やっとまともな感じになって来たなぁ……。」


 信一の持つガラスビーカーの中には、色とりどりなホヤたちがいた。


 元々のマボヤは赤色である。


 そのマボヤからオレンジ色のホヤ、黒いホヤ、白いホヤなど、様々な色のホヤをゲノム編集で作り出したのだ。それらは、ガラスビーカーの中に浮かぶペトリディッシュに張り付いている。



「あ、アーシーさん、ちょうどいいところに。見てくださいよ、このホヤたち。僕が作ったんですよ」


 信一は、近くを通りかかったアーシーを呼び止め、ガラスビーカーの中の色とりどりなホヤたちをアーシーに見せる。



「わぁ〜。すごい綺麗です。色々な色をした宝石みたいです」

 アーシーは笑顔を浮かべる。その顔を見て、信一も笑顔を浮かべた。



 ウェイが来る前までは研究室には信一とアーシーの2人だった。


 信一は、アーシーとは仲良くしていた。かといって、あくまでも研究室のチームメイトであり、それ以上ではなかった。


 もともとアーシーは英語も日本語も話せた。最近では、信一の方がアーシーに話かけるのに慣れて来たのである。


 2人は日本語で会話をする。

 しかし、アーシーの日本語は、まだぎこちない。



「このホヤたちが大きくなって、種として維持できるようになったら、論文が書けるんですよ」

 信一は、鼻高々に言う。


「それは良かったです。頑張ってください」

 アーシーは笑顔を浮かべる。青色の綺麗な瞳を信一に向ける。



「あっ……、そういえば、アーシーさんは、ニューヨークでどこか行きました?」


「私は一人で、美術館も自然史博物館にも行きました。博士が、ここに停泊している間は休んでいいと言っていましたから」


「あぁ、大城戸先生たちも自然史博物館に行ったとか言っていましたねぇ。もしかして一緒に行ったんですか?」


「私は、教授たちとは別の日に行きました」

 アーシーは軽く首を振る。



「そうですか。ちなみに、ウッズホールではどこか行きました?」


「まだどこにも行っていないです」


「そうですか。この港の近くに、『パイインザスカイ』という有名なパイ屋さんあるらしいですよ。あ、良かったら、一緒に行きます? 今日はもう僕の実験は終わったので……。」


「はい。いいですね。行きましょう」


 信一とアーシーは時折2人でご飯を食べたりもする。

 研究室のメンバーとしてごくごく普通のことだ。


 2人は、実験を終え、研究室から出た。





 博士たちは、港の近くのパイ屋さん、『パイインザスカイ』の前を通りかかった。

 ウッズホールの街の港の近くにある大きな池をくるっと回るように、散歩をしていたのだ。


「あ、ねぇ、パパ、信一お兄ちゃんとアーシーお姉ちゃんがいるよ。ねぇ、おに……。」

 パイ屋のところに、信一とアーシーがいることに気がついたシンシアは、2人に声をかけようとした。



「シンシアちゃん、だめよ」

 それを、レイアがシンシアの口にそっと手を当て、止めた。



「うぐっ……。ん? なんで?」


「2人の邪魔したらいけないでしょ」

 レイアは、シンシアの前にしゃがみ、小さな声で耳打ちした。



「う〜ん、そうか。わかった」

 シンシアは、首を傾げながらも、納得した。



 その時、シンシアの横で、さーべるちゃんが「バウ」と吠えようとした。


「だめ、さーべるちゃん。2人のじゃまをしたらいけないんだよ」


 シンシアは、人差し指を、口につけて、シーっと合図をした。



 博士は、満足げにシンシアたちのやりとりを眺めていた。

 その視線のはるか向こうには、信一とアーシーの姿もあった。


 彼らは、パイとコーヒーを楽しみつつ、談笑していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i488219
秋の桜子さまよりいただきました。
好評連載中です!

i493381
砂臥 環さまからいただきました。
リンク先は、『『月』を照らす光〜月と海のリザレクション〜』です。
テーマソングです。
― 新着の感想 ―
[良い点] ホヤが出ると、どうしても例の短編を思い出して、ニヤけてしまいます(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ