自然史博物館とクジラ
博士たちは、自然史博物館に辿り着いた。
自然史博物館には、動物や植物の模型を始め、いろいろな資料が展示されている。
海洋生物たちは、この現代では、過去の遺産だ。
もちろん、生きている個体はいない。
それでも、5年以上前の海洋生物たちの模型は、まだ展示されたままである。過去に存在していた生物として展示されているのだ。
この時代では、重要な資料であった。
映像なども、貴重である。
とある展示室の天井には大きなクジラが展示されている。
実物大の模型天井から吊るされている。
その展示室に入って来た全ての観客が、『わぁ〜』と声をあげながら、上を眺めるのだ。
「わぁ〜。クジラだねぇ。シンシア。大きいね」
博士も、その展示室に入るなり、天井を見上げて声を出した。
「あぁ、これクジラって言うんだ、へぇ。私は前世ではこんな格好をしていたんだよねぇ。もうちょっと白かったけど……。」
シンシアは、クジラを見上げながら、しれっと言葉を発した。
「えぇ、そうだったんだ。って、えぇぇ? クジラだったの? 白いってことは、海神ポセイドンは、シロナガスクジラだったんだ!」
博士は驚き、シンシアの方に即座に首を向けた。
博士はシンシアの前世が気にはなっていた。
海月ではないことはシンシアから聞いてはいたが、実際はどんな格好をしていたのかは知らなかったのだ。
「そうかぁ、じゃあ、頑張ってクジラも作らないとなぁ……。」
博士は、天井のクジラを眺めつつ、ひとりごちた。
博士は、頭の中で色々と計画を練った。
今飼育している『イブカ』に遺伝子組み換えを施して、『クジラ』を作るのが、原理的には一番近道である、と。
しかし、哺乳動物の飼育には時間がかかるのである。
すぐにパッと解決できるような問題でもない。
博士たちは、自然史博物館を堪能した。
朝から夜まで一日かけても全部を完全には見終えられない。
それでも、多くの観光客がそうするように、興味のあるポイントを重点的に見回った。
歩き疲れてヘトヘトになった博士たちが研究船パーズの居住部屋に戻ったのは、日が暮れた時だった。
長い一日を過ごしたのだ。
研究船パーズは、明後日、ニューヨークを出発する。
次の目的地は、マサチューセッツ州にあるウッズホールだ。




