ニューヨークあるある
博士たち大城戸ファミリーは、自然史博物館に向かっていた。
今回も、さーべるちゃんは研究船パーズでお留守番だ。
マンハッタン島には有名な美術館もあるが、研究者一家の大城戸ファミリーは、美術館ではなく、まずは自然史博物館に向かうのだ。
博士たちは、地下鉄カードを買ったので、地下鉄に乗り放題だ。
1週間の休み中、地下鉄は乗り放題なのだ。
博士たちは、研究船パーズが停泊中の港から、地下鉄を使い、自然史博物館を目指している。
しかし、自然史博物館に行くには、一回地下鉄の駅を乗り換えるために、一旦地上に出て、少し歩く必要があった。
博士たちが、42番街の歩道を歩いていた時だった。
汚い身なりをした男が、レイアの肩にぶつかって来た。
「Oops. (おっ、と)」
汚い身なりをした男の手から、料理を乗せた皿が落ちる。
バシャ
音を立てて、道に料理がこぼれた。
その男は、食べ物を持ってわざとぶつかって来たのだ。
「Oh my god! My presious dish has gone. What can you do for me? If not, we should go to police, right? (ありゃ〜、俺の大事な昼ごはんがこぼれちゃったじゃないか! どうしてくれるんだ? 弁償してくれなきゃ警察呼ぶぞ!)」
その男は、こぼれた料理には目もくれず、レイアに向かって喚き立てた。
「ママ! あいつ、わざとぶつかって来た!」
シンシアが、怒って声をあげた。
そして、シンシアは右手の拳にグッと力を入れ……。
「いや、待て、シンシア、力を使うのはまだ早い」
博士は、シンシアの肩にポンと手を置き、シンシアをなだめる。そしてすぐに、レイアをかばうように、前に出た。
「You intentionally hit her. We will never give any money to you. So then, let’s go to the police office together with us, if you do not mind. (そっちがわざとぶつかって来たんだろう。私たちはお金を払うつもりはない。一緒に警察に行こう。困るのはそっちだろう?)」
博士は、その男に言い放つ。
博士は左手で、レイアを守りつつ、レイアを後ろに下がらせる。
「Fuck’in guy! Are you Japanese? Don’t speak English, you are fuck’in Jap. (なんだ、テメェ、日本人じゃねぇのか? 日本人のくせに英語を喋ってんじゃねぇよ。あぁ)」
ゴボッツ
その男は、いきなり、博士のお腹にボディブローをかました。
「ぐっ……。」
いくら筋トレで鍛えていたとはいえ、お腹にいきなりボディブローを食らっては、博士はひとたまりもなかった。
博士は、鈍い声をあげ、その場にうずくまる。
「Hiro! (あ、あなた!)」
レイアが叫ぶ。
「パパぁ〜」
「パ〜」
シンシアとアムルも叫んだ。
その刹那。
ボゴッツ
ビリリ
その男の顔には、ペットボトルがめり込み、それに、電流が流れていた。
ドサッ
男は、声も出さず、その場に仰向けに倒れた。
「いったぁ〜」
博士は、お腹を押さえながらも、立ち上がる。
「Hiro, are you Okay? (あなた、大丈夫?)」
レイアは、博士の顔を心配そうに覗き込んだ。
「Yep, I am OK. In this case, I did work out. Haha. Anyway. (あぁ、大丈夫だよ。こう言う時のために、ちゃんと鍛えてあるからね。へへ。それよりも……。)」
博士は、目の前で倒れている男を、申し訳なさそうに見やった。
お腹へのパンチ1発に対して、これだ……。
しかし、わざとぶつかって来て、いきなり殴りかかって来たのだ。自業自得であろう。
「パパぁ〜、大丈夫?」
シンシアも、博士の足元から、博士を心配そうに見つめる。
「あぁ、大丈夫だ、シンシア。助けてくれてありがとう」
博士は、左手でお腹を押さえながらも、右手で、シンシアの頭を撫でる。
「そして、アムルも、ありがとう」
博士が、アムルに目をやると、アムルは満足そうに笑みを浮かべた。
「さて、まぁ、行こうか」
博士は、お腹を軽くストレッチした。
痛みはすぐに引いた。大したことはないようだ。
鍛えておいてよかった、と博士は安堵の吐息を漏らした。
そして、博士たちは、当初の予定通り、自然史博物館を目指した。




