シンシアとアムルの日常
アムルは、生後4ヶ月になった。
可愛らしいほっぺたをしている。
アムルはソファーの横のベビーベッド上でミルクを飲んでいる。レイアは洗濯中であり、シンシアがお守りの手伝いをしている。
哺乳瓶を持ち、ミルクを美味しそうに飲むアムルの様子を、シンシアがしげしげと見つめる。
ミルクを吸って動くアムルのほっぺたの動きが、シンシアは気になるのだ。
ぷにぷに
そして、シンシアは、衝動にかられ、アムルのほっぺたを突ついた。
アムルのほっぺたは、シンシアの指で少し凹むが、すぐに、その弾力で、元に戻る。
ぷにぷに
シンシアは、目をパアァっと開ける。
シンシアは笑顔で、アムルのほっぺたを繰り返し、突ついた。
(兄者、あまりつつかないでくれ)
アムルはシンシアに脳波で話す。
口は、ひたすらミルクを飲むために動かしている。
(兄者。俺は今、ミルクを飲むのに忙しいんだ。邪魔をしないでくれ)
「えー、だって、ぷにぷにしてて、面白いんだもん」
シンシアは、アムルの言葉を無視し、ほっぺたを突つき続けた。
(兄者、やめてくれと、言っているではないか。かくなる上は。てい)
ビリリリ
アムルは、ほっぺたに小さな電流を流す。
雷を操る能力を持つ最高神ゼウスは、アムルに転生した0歳児でも、小さな雷や小さな電流程度なら自分の周りにも作り出せるのだ。
「いったぃ。もぅ、アムル」
シンシアは、思わず、アムルのほっぺたから、指を離した。
(兄者が邪魔をするからだ)
アムルは、視線をシンシアの方にちらりと向け、すぐに、哺乳瓶に視線を戻した。
口を動かし、ミルクを飲む。
「えい」
シンシアは、アムルがくわえている哺乳瓶の中のミルクを操った。
哺乳瓶は中に入ったミルクごと、宙に浮かぶ。
「バァ」
アムルは思わず、声をあげた。
まだまともに話せないアムルは、声を出すだけで精一杯だ。
「アムル。わたしに逆らうからだ」
シンシアは、アムルに向かって偉そうに言う。
まさに、弟に威張りつけるお姉ちゃんのそれである。
(俺のミルク。くぅ、力さえあれば、今の兄者くらいなら瞬時に丸焼きにできるのに)
アムルは、ベビーベッドの上で、手足をバタバタさせた。
「そんなことはない。そうやすやすと、わたしに勝てると思うなよ。わたしはまだ本気を出していないのだぞ。わたしには、トライデントがあるからな。あれ? そういえば、アムル。お前が持っていた『ケラウノス』はどこにいったんだ?」
シンシアは、ふっと力を抜いた。
宙に浮いていた哺乳瓶は、ぽとりとアムルの手に戻る。
(おっと。『ケラウノス』はどこにあるか、わからない。神殿に落ちているかもしれないし、あいつらが持っているかもしれない。まぁ、俺専用の神具だから、人間が持っていても何の役にも立たないんだけどな)
アムルは、哺乳瓶を上手に受け止め、口をつける。
脳で会話している間もミルクを飲める。神の最大の特権である。
「そうか、今度、パパに聞いてみないとね。また、探し物が増えたね」
シンシアは、ふぅと小さく息を吐き、ミルクを嬉しそうに飲むアムルを眺めた。




