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月と海のリザレクション〜海神ポセイドンの幼女転生〜  作者: 幸田遥
第1章 太平洋航海編

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ゼウス転生

このゼウスの過去編では、みんな日本語で会話します。


 しばらくして、ゼウスは再び目を覚ました。



 ゼウスは、わずかに開けた瞼の下で視線を動かす。

 ゼウスの目の前には、所狭しと実験用の機器が並べられていた。



 これまでいた場所からは移動したようだ。部屋が小さくなっている。そして、研究室全体に小さな揺れを感じる。


 何かに乗って、部屋が動いているようだ。

 揺れからして、船であろう。



 ゼウスは、船に乗って運ばれているのだ。



 ゼウスの目の前には、痩せた一人の研究者がいた。ウェイである。

 もう一人の研究者の姿は見当たらない。



 ウェイは機械に向かって作業をしていた。

 時折、ゼウスの方を見ては何かを考えている。





 船の中が騒がしくなった。

 この船は目標である船を捉えたのだ。



 ウェイの視線の先にあるモニターには大きな船が写っていた。研究船パーズである。


「これで、うまくいくはずだ。悪いけど、沈んでもらうよ」

 ウェイは小さく呟いた。



 ウェイが、右手の手元にあったボタンを押す。すると、ゼウスの脳の中に電流が走った。


「グウッ」

 ゼウスは、うめき声をあげた。


 ゼウスの脳が何かによって支配されている。ゼウスの意思とは反して、ゼウスは、雷雲を呼び寄せた。いや、呼び寄せてしまった。



「アァァァ!」


 そして、全力を使い稲妻を発生させた。近くに感じる大きな『何か』に向けて。

 この稲妻に、文字どおり全力を使った。これがゼウスにできる全てである。



(これで楽にしてもらえるのだろうか)


 ゼウスは、頭を支配され、意識が朦朧としていた。



(どこに向けて打ったのかはわからないが、罪のないものをあやめてしまったのなら申し訳ない)




 ウェイの視線の先のモニターには、目の前の大きな船が写し出されている。

 そして、雷雲から、雷が目の前の船に落ちていった。


 しかし、突然起こった大きな津波によって、雷は消えてしまった。


 目の前の船は、明らかに無傷である。



「な……。なんだと! くっそ、もう一回だ」


 ウェイが、もう一度、ボタンを押す。



 再び、ゼウスの脳の中に電流が走った。


 しかし、ゼウスは、もう稲妻は、出せない。

 もう力が出ないのだ。


 以前の元気な状態なら何発でも稲妻を打つことができた。

 しかし、今のゼウスには、稲妻を何度も打てるほどの、体力は残っていない。ただコードに繋がれて延命されているだけである。元気なわけがない。それに、神具『ケラウノス』も無い。



 ウェイにボタンを押される度に、ゼウスの脳みそが掻き回される。しかし、出ないものは出ない。

 ゼウスは、ただ朦朧としながらも、脳みそを引っ掻き回される苦痛に耐えていた。





 しばらくすると、大きな爆発音が聞こえた。人間の悲鳴も聞こえる。

 何かが起きているようだ。辺りから色々な音がする。




 辺りに静寂が訪れ、しばらく経った頃だ。

 研究室の扉が開き、金髪青目の少女と、細身の日本人が入ってきた。


 その日本人は、銃を構えていた。



(どうなっているんだ? 助けてくれるのか?)



 ゼウスは朦朧とする意識で現状を把握する。


 しかし、ゼウスが気付いた時、ウェイは倒れていた。銃声は、聞こえなかった。

 ゼウスが気が付かなかっただけなのか、銃が打たれなかったのかは、不明だ。



 ゼウスは、ウェイとは、ずいぶんと長く一緒に居たのだが、愛着などは湧かなかった。ゼウスは、ただ生きながらせられ、利用されていただけなのだから。


 ゼウスは、倒れているウェイの姿をじっと見遣った。




 金髪青目の少女がゼウスに近づいて来た。



「ころし、てくれ」

 ゼウスは、力を振り絞り声を出した。その声は儚く小さい。



「ゼウス、わたしだ。ポセイドンだ」


 近づいてきた少女は、海神ポセイドンと名乗った。


 ゼウスの兄であり、海を統べる海神である。4年前ほど前にいなくなった、ゼウスの兄だ。



「ポセイドン? お前がか?」

 ゼウスは、かすれるような声をあげる。


 あろうことか、その少女は、ゼウスの兄である海神ポセイドンと名乗った。

 ゼウスは、その少女から兄の気配を感じ取った。しかし、姿は全くの別物だ。




「この姿に転生したのよ、4年前に」


 少女は、宙に浮かせておいた水の塊を、ふわり、と動かして見せた。ゼウスは、水の塊をゆっくりと目で追う。



「なるほど。兄者が、海からいなくなったことにはすぐに気がついた。海の生物がいなくなったから。それから、色々あった。積もる話をする元気もない。兄者、お願いだ、早く、楽にしてくれ」

 ゼウスは、少女に頼んだ。必死になって口を動かした。


 痛みがあるわけでもなく、意識もあるわけでもない。手も足もなく、その感覚もない。ただ、生かされている。


「兄者が、無事でよかった。俺も、どこかいい転生先を見つけるさ。じゃあ、またどこかで。達者で……。」

 ゼウスは、震えるように口を動かし、微かに声を出す。


 そして、そっと、力なく、目を閉じた。



「うん、そうだな」



 この言葉が、ゼウスが最期に聞いた、少女の声だった。



 ゼウスは静かに息を引き取った。






 意識体となったゼウスは、転生先を探していた。もうすぐ生まれてきそうな赤ん坊の居場所を探していたのだ。




(なるほど、これはいい転生先かもしれん)


 ゼウスは、すぐに転生先を見つけた。

 バンダ海に浮かぶ大きな船の中に、お腹の大きな金髪青目の女性を見つけた。



 その女性の横にある小さなテーブルの上には、一枚の写真が飾られていた。

 痩せたメガネの男に、金髪の美女、そして、金髪青目の少女が写っていた。


 仲の良さそうな家族だ。



 ゼウスの意識体は、金髪青目の女性のお腹の中に入っていった。





 そして、人間に転生したゼウスは、大城戸レイアのお腹から誕生した。

 7月12日朝6時のことであった。


 そして、『アムル (Amurru)』と名付けられた。



 アムルは、父親の大城戸博士と母親のレイアに連れられて、大きな船に入っていった。

 その大きな船の船体には、『Project for Resurrection of Diverse Sea』と書かれている。





(久しぶりだな、兄者)


 部屋の中から出て来た金髪青目の少女の姿を見て、アムルは微笑んだ。

 その金髪青目の少女こそ、海神ポセイドンの生まれ変わった姿、シンシアだ。


 シンシアも、アムルの笑顔を見て、目を大きく開き、笑い返した。


(久しぶりだな、ゼウス)





第1章 太平洋航海編 (完)


応援ありがとうございます。

おかげさまで無事に1章が終わりました。


感想や評価をいただければ幸いです。


明日からは、『1.5章 臨海実験センター編』です。そして、『2章 大西洋航海編』に続きます。


今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

幸田遥

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i488219
秋の桜子さまよりいただきました。
好評連載中です!

i493381
砂臥 環さまからいただきました。
リンク先は、『『月』を照らす光〜月と海のリザレクション〜』です。
テーマソングです。
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[一言] 1章完結おめでとう
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