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カリフォルニア研究室再来


 博士たちは、パトリック研究室を再び訪れた。

 サンディエゴの大学にある海洋生物学研究室だ。



 博士、レイア、シンシア、アムルの4人と、そして、さーべるちゃんである。

 大城戸一家勢揃いで、その研究室を訪れた。




 シンシアが生み出した魚、『アジム』はすくすくと育ち、交配によって第二世代が作られた。一般的に魚類は卵の数が多い。大城戸研究室のガラスビーカー内には100匹近くの稚魚がいる。それらもまた、ガラスビーカー内ですくすくと育っていた。



 博士はパトリック研究室に、交配に使用しなかった一匹のはぐれた成体と新しく産まれた稚魚を数匹、持って来た。『アジム』の第二世代の稚魚は、1cmほどに成長している。





「Oh! You are Leia. How have you been? I guess it is second baby, ya? (おう、レイア、久しぶりだな。元気だったか。2人目らしいな)」


 海洋生物学研究室の実験室に足を踏み入れると、博士たちの存在に気がついたパトリックが声をあげた。

 手にしていたイカ用の餌を水槽の横に置き、すぐに4人と1匹の元に駆けつける。



「Hi, Patrick. Nice to see you again. Yeah, it is “Amurru”. (あら、久しぶり。そうよ、この子がその2人目よ。アムルと言うのよ)」


 レイアは、抱きかかえているアムルの顔をパトリックに見せる。アムルは青い目をパチリと開けている。


「Wow! It’s so cute baby boy. It has blue eyeas like you, ya. (おぉっ、可愛い男の子だな。青い目がレイアにそっくりだな)」


 パトリックはアムルの顔を覗き込み、笑顔でレイアの方をバンバンと叩いた。




「I brought some “Adim” for you. It is mature fish, and these small ones are babies that were born a week ago. You can make progenies when they get mature. (せっかくだから、お前のために持って来てやったよ。これが『アジム』だ。こいつが成体で、こいつが、生まれたばかりの稚魚だ。こいつを育てればいいだろう。ほれ)」


 博士は、ビニール袋に入れた『アジム』とその稚魚をパトリックに渡した。



「Cool! They are really fish. Thank you so much. By the way, do you need my animals instead? (素晴らしいな、本当に魚を作り出したようだな。そうだ、せっかくだから、代わりに何か持っていくか? 何でも欲しいやつを持っていってくれ)」


 パトリックは目を大きく見開き、アジムを眺める。


 ビニール袋の中では、一匹の大きな個体と数匹の小さな個体が泳いでいた。鱗をキラキラと光らせていた。

 そして、パトリックも目をキラキラさせていた。




 博士は、ウニの論文が終わりそうなポスドクの久保信一の次のテーマのために、パトリックからホヤを貰った。博士が受け取ったのは『マボヤ』である。赤いパイナップルのような形で、体長10cmほどに成長していた。



「シンシア、知っているか? こいつの学名は、ハロシンシア (Halocynthia)って言うんだ。シンシアに挨拶しているような名前だろ?」


 博士は、右手に握った赤いパイナップル型の生物をシンシアに見せた。



「へぇ、そうなんだ。その名前は、知らなかったよ」


 シンシアは、博士の右手よりも少し大きな赤い塊をしげしげと見つめる。

 どうして人類が、この生物に『月』に関連した名前を与えたのか、シンシアには理解できなかった。



 博士とシンシアのやり取りの下では、さーべるちゃんが舌を出し、『マボヤ』を興味深そうに眺めている。


「これは、食べ物じゃないよ」

 シンシアが、さーべるちゃんに言う。


「まぁ、日本では、食用としても、一部の人には人気があるんだけどね」

 博士は、ぽつりと言った。


「えー、こんなの食べるの?」

 シンシアは、驚き、声を上げる。赤色のパイナップルの見た目は、ゴムのようにゴツゴツしている。


 もちろん、食べるのは、中の筋肉の部分である。外の殻は食べない。



「うん、まぁ、好きな人は好きな味だからね」

 博士は、静かに笑いながら、頷いた。

 博士は、以前に一度挑戦したが、口に合わなかったのだ。玄人向けの味だ、と博士は思っている。




 博士は、アジムを持って来た小さなクーラーボックスに、『マボヤ』を入れたビニール袋をしまった。交配のために、2匹貰った。ホヤも魚類同様に多くの卵を産む。1組のつがいがいれば、種の維持には十分である。


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i488219
秋の桜子さまよりいただきました。
好評連載中です!

i493381
砂臥 環さまからいただきました。
リンク先は、『『月』を照らす光〜月と海のリザレクション〜』です。
テーマソングです。
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