初恋相手はまさかの!?
つい先程戦っていた場所で気絶して倒れた勇は、一時間程で意識が戻り、うっすらと目を開ける。
「あッ! お兄さん起きたんだ!」
ーーーー勇の時が止まったーーーー
目を開けたらユリスが勇の顔を除き混んでいる。
「……!?」
勇は驚き、そして、気が付く。
(どうして俺に膝枕してるんだ‼ 何がいったいどうなっている!?)
そう、勇はユリスに膝枕されている。 先程まで激しく戦っていたためユリスから汗の匂いと一緒に、女の子の甘い匂いする。
自分の状況に顔を赤くさて、慌てて起き上がろうとするも。
「だめだめ! 疲れてるでしょ、このまま膝枕されたまま、横になってて!」
ユリスは起き上がろうとする勇の頭を手で抑え自分の膝に強く押し付け、無理矢理膝枕をする。
ユリスの膝に頭を押し付けられた勇は起き上がろうと抵抗する。
「だ~め! 大人しくしてね!」
ユリスは勇の頭を撫でて落ち着かせようとするも、ユリスは勇の一目惚れで初恋相手である。
顔をさらに真っ赤にさせた勇は恥ずかしさを誤魔化すため、ユリスに質問する。
「何で俺に膝枕をしているんだよ‼」
「ふふ、それはね、ーー勇のことが好きだからだよ! 勇がドキドキしてあわよくば、ボクのことを好きになってもらいたくてしているんだよ」
「……!?」
勇は突然、ユリスに好きだと告白されて、心臓が止まるかと思った。
ユリスが好きだと言う時その顔と声から冗談ではなく、自分のことが好きだと確かに感ることが出来た。
(ユリスが俺を好きだと言う事は、両思いと言うことになる!)
勇は嬉しさのあまりに思わず拳を握りしめる。それを見たユリはもしかしてと気付き嬉しそうに勇に聞く。
「ねぇねぇ! もしかして勇もボクのことが好きなの!」
自分の事が好きなのかストレートに聞かれた勇は、今を逃したらチャンスはもうないと、覚悟を決めてユリスに言う。
「お……俺も好きだ! ユリスの事が! ……!?」
勇は突然ユリスに膝枕をされたままキスされた。
「ん……」
微かにユリスから声がもれる。
ユリスの唇が勇から離れ、顔を赤くさせ照れたユリスの顔が勇の目に入り、ユリスは照れながら言う。
「……キスしちゃった……」
勇はユリスのあまりの可愛さとキスされたことにより我を忘れ、ユリスの頭をを抱き寄せ今度は自らキスをする。
「ん……勇……もっ……と」
ユリスから喘ぎ漏れる声に応えるように勇はさらに激しくキスをする。
ーーお互いに激しく求め合いキスをした唇が離れる。
「ごめん。……あまりにもユリスが可愛かったから、つい……」
「気にしないで、すごく嬉しいよ!」
ーーそれから三十分程勇は膝枕をしてもらい、日が落ち、そろそろ家に帰らないといけないのでユリスに伝えるも。
「え~、もっと一緒に居ようよ勇」
一緒に居たいと不満を口にするユリスだがニコルが家で待っている、心配を掛ける訳にはいかない。
「ごめん、家で帰りを待っている人がいるんだ……あッ」
あッ、と勇は今更ながら、あることに気付いた。
(ニコルさんと、つい最近一緒に風呂に入ったり、さらにはその後も色々と……なのに今はユリスとキスまでして、これじゃあ俺は最低な男じゃないか。ニコルさんと付き合ってる訳でもないが、友達以上の関係であるのは確かだ)
ニコルに申し訳ない気持ちで頭を抱えていると。
「どうしたの勇?」
ユリスが不思議そうに聞いてくるので、勇は自分が思っている事を伝える。
「それなら大丈夫だよ!」
「大丈夫ってどういう事だよ」
勇が聞き返すと、ユリスはとんでもない事を言う。
「だって、ボク、男だし」
「……は? ……はぁぁぁぁぁぁ!?」
目が飛び出るほど驚いている勇に、止めの一言を放つ。
「だから、彼氏彼女とならないから浮気にはならないよ!」
『浮気にならない』とユリスは言うが、勇はそれどころではない。
(いやいや、つまり俺は男と熱いキスをしたと言うことか! てか、どう見たって可愛い女の子だろうが!)
勇は膝枕された状態から体を起こし、改めてユリスを見る。
身長は百六十センチぐらいで、顔は可愛く女の子にしか見えない、胸は確かに男と言うだけあって一切ない。腰は細く括れ、スカートから覗く足はすらりと伸びた綺麗な足。
総合的に見ても、女の子にしか見えない。
「ん? ……ちょっと待て、男なら何でスカート履いてるんだよ」
「それはもちろん可愛いからに決まってじゃん!」
勇は我慢が出来ず叫んだ。
「決まってねぇぇぇ‼」
辺りに勇の叫び声が響き、近くの建物に止まっていた鳥達が驚き逃げていく。
「アハハ、もう急に叫ばないでよ!」
叫び疲れた勇は肩で息をし、ユリスを恨めしく思い睨む
「もう、そんなに睨まないでよ。……勇はボクにこと好きじゃないの……」
「うッ、それは……」
涙目で見詰めて質問してくるユリスに、勇は言い淀む。
「……ボクは勇のことが好きだよ……」
ユリスの涙目での告白に、返事に悩む勇。
(どうする。確かに俺はユリスの事が好きだが、ユリスは男だ。……だけど……)
悩んだ末覚悟を決めた勇は、ユリスに目線を合わせるように屈み、力強く言う。
「たとえ男でも、ユリスの事が好きだ」
勇の告白を聞いたユリスは、顔が涙目から、いつも以上の元気で明るい笑顔に変わり勇に抱き付く。
「勇! 大好き! これからは一緒にいようね!」
「ああ、分かったから落ち着け」
大喜びではしゃぐユリスを宥める勇は、内心ニコルにどう説明しようかと悩んでいた。
(ニコルさんとは、恋人と言う訳ではないけど、友達以上の関係であるのは確かだ、家に帰ったらちゃんと説明しないといけないな……)
男ーーいや、男の娘と付き合う事になるとは思ってもなかった勇は、本当に人生何があるか分からないと改めて思った。
戦っていた場所を離れて、ユリスと勇はニコルの家に向かって歩いていく。
「勇も真面目だねぇ」
「いや、関係をもった次の日に恋人を作ったんだ、激しく怒られるかも知れないけど、ちゃんと説明しないと」
勇とユリスは自分達の関係を伝えるためにニコルの家に向かっている途中、勇は気が重く中々足が進まない。そんな勇を見たユリスは呆れた様子になる。
「全く、……だから心配ないって!」
「何でだよ、ようは、浮気をしたんだぞ……絶対に怒られる」
勇はこの世界に来てからお世話になっているニコルを裏切ってしまい申し訳なく思う。
ユリスは今の勇に何を言っても無駄だと思い、勇の腕を引っ張ってニコルの家に向かう。
ーーとうとうニコルの家に着いた勇は覚悟を決めて家に入り、ニコルは帰ってきた勇の真剣な様子にどうしたのかと思う。
「どうしたの? そんな怖い顔をして?」
心配そうに勇に聞くニコルに、勇は頭を下げて謝る
「すいませんニコルさん‼ 恋人を作りました‼」
「……?」
突然の勇の言葉に訳が分からないニコル。慌てて勇はニコルにこれまでの事を説明して自分の気持ちを伝える。
ーー勇の説明が全部終わり、不安げ自分を見る勇にニコルは笑う。
「フフ、なんだそんな事。大丈夫よ不動くん、別に怒ったりしないわよ」
「え!?」
ニコルは何時ものように笑みを浮かべ驚きの事を口にする。
「だって……ユリスは私の友達よ|、男のユリスと不動くんが付き合うとは思ってもなかったけど、不動くんがユリスと付き合うのに反対なんてしないわよ。もちろん私とも今日から正式に付き合ってるもらえるならね」
勇は驚きの声を上げる。
「え! 二人と付き合っても良いんですか!」
まさかのニコルがハーレムを了承。激怒されるのを覚悟していた勇はニコルとも付き合える事になり喜ぶ。
「フフ、ちゃんと私とユリスを大切にしてくれるなら良いわよ。複数と付き合う男なんてそんなに珍しい事でもないしね。まぁ、男同士は聞かないけど、相手はユリスだし……」
勇は真剣に返事をする。
「はい! 二人を大切にします!」
勇の後の扉が開きユリスが部屋に入ってくる。
「二人とも無事に話が上手くいって良かった良かった。それにしても勇、だから言ったじゃん! 大丈夫って!」
「いや、ニコルさんと友達なんて一言も言ってなかったぞ」
勇がユリス文句を言うが。
「だって、もしニコルとボクが友達なんて勇に伝えたら、絶対にもっと悩んでいたでしょ」
「うッ……それは……」
勇は確かにもっと悩んでいただろうと思う。
「まぁ、上手くいったんだから怒らないで勇」
それでも、文句を言いたい勇と、終わり良ければ全て良しと言う感じのユリスが話している所に、ニコルが手を叩き勇とユリスの間に入りる。
「ハイハイ、二人とも落ち着いて。無事に皆仲良くなったんだから。あと、ユリスも私の家に住みなさいそっちの方が貴方も嬉しいでしょ」
「え! 良いの!」
ユリスは一気に笑顔になり喜ぶ。
「もちろんよ。まだ部屋に空きがあるから、そこを貴方の部屋にしましょう」
「やったー! ボクも勇と一緒に住めるんだ! やったね勇!」
ユリスは勇に抱き付き大喜びする。その様子を見て勇も毒気が抜かれ、やれやれと首を横に振るう。
(まぁ、ユリスの言う通り全て無事に上手くいったんだ、なら俺も、何時までも怒るのはカッコ悪いな。それに、二人と付き合えるんだ今は喜ぼう!)
ユリスは大喜びし、ニコルは何時もの笑みを浮かべ、勇は顔には出さないが内心大喜び。
(でも、まさか俺が、男の娘と付き合う事になるとは思わなかったな……)
こうして、勇の大変な一日が終わっていった……
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