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初恋と戦闘

 

 薬草採取の依頼から無事にフィンブルに戻って来た勇は、冒険者ギルドに向かい、依頼達成の報告をする。

 「はい! 確認しました、無事に依頼達成です不動勇様」

 採取した薬草を受付嬢に渡し報酬を貰い冒険者ギルドを後にする。

 「やっぱり、薬草採取の簡単な依頼だと、報酬も少ないな」

 勇は依頼の報酬である、二千アルを片手にそう呟く。

 この世界のお金の単価は、一アル、日本円にして、一円だ。つまり、十アルなら、十円。百アルなら、百円。つまり、今回の報酬は、日本円にして、二千円ということだ。

 腹が減った勇は、二千アルを使い屋台で売っている、百二十アルの串焼きを買い食べる。

 ーー串焼きを食べている勇に、フードを深く被った人が近付き声を掛けてきた。

 「やーやーお兄さん!美味しそうな物を食べているね!」

 可愛らしい声だが、フードを被った、いかにも怪しい人に声を掛けられ、勇は警戒する。

 「何ですか…貴方は」

 「そんなに、警戒しないでお兄さん! 格好いいお兄さんとちょっとお話がしたくて声を掛けたんだよ!」

 格好いいと言われても、勇の顔はブサイクとは言わないものの、良くて中の上くらいだろう。

 さらにフードの人物を警戒する勇に、慌てるフードの人物。

 「ちょッ、別に怪しい人じゃ、ないよ」

 「いや、怪しい人は皆、そう言う」

 フードの人物は首を捻り、う~んと悩んでいると、良い事思い付いたと手を叩く。

 「ねぇ~、これから一緒にご飯食べない!」

 ーー「はぁ~!?」

 ーーーーフードの人物に無理矢理連れられ、フードの人物お勧めの店にやって来た。

 そのお店は隠れた所にあり、二人ようの個室に案内され、勇とフードの人物は対面して座る。

 「で、俺を連れてきて何が目的なんだ」

 無理矢理連れられ不機嫌な勇にフードの人物はまず、自己紹介をしようと言い、勇もしぶしぶ、自己紹介をする。

 「俺の名前は不動勇だ、そっちは?」

 不動の人物は待ってましたとフードを取り顔を見せて元気に自己紹介をする。

 「ボクの名前は、ユリス・ベルク! ユリスと呼んで!」

 勇はユリスの素顔をみて驚いた!? 声からして女の子と思ってはいたが、まさか、こんなにも可愛い子だとは思いもしなかった。

髪は血のように赤く、まるで猫のような瞳を持ち、そして、見るからに天真爛漫な女の子は、可愛いの一言に尽きる。

 「あれぇ~、お兄さんどうしたの?」

 ユリスを見て固まっている勇に、不思議そうに首を傾げ、顔を近づけて来るユリスに、慌てた勇は椅子から転げ落ちる。

 「アハハ、大丈夫お兄さん?」

 「あ…あぁ……、大丈夫…」

 勇の心臓は、痛いほど高鳴り、ユリスを見るだけで顔がリンゴのように赤くなる。

 (どうしたんだろう俺、彼女の顔を直視出来ない……)

 だが、勇には一つ今の状況に思い当たる事がある。

 (まさか……俺……彼女に一目ぼれをしたのか……?)

 そう、勇は彼女に一目惚れしたのだ。

 (いやいや! そんなことある筈がない)

 再び彼女を見る勇だが、やはり、顔が赤くなり胸が高鳴る。

 (やっぱり俺、彼女に一目惚れしたのか)

 勇は、自分が一目惚れしたことを認め、恥ずかしがりながらも彼女と向かい合う。

 「ごめんごめん、俺は大丈夫だから」

 そう? とユリスは言い、話を戻す。

 「君は、何で俺に声を掛けてきたの?」

 「君じゃない、ちゃんと、ユリスって呼んで」

 ユリスと呼ぶように言われ、顔を赤くさて勇は再び質問をする。

 「ユ……ユリスは俺に、何で声をかけてきたの?」

 待ってましたと言わんばかりの顔をして、ユリスは笑顔で訳を話す。

 「えへへ~、実はこうやってお兄さんと、初めて見た時から話をしてみたかったの! ドラゴンを消した時から!」

 え! と驚く勇を気にせずユリスは話を続ける。

 「ドラゴンに果敢に挑んで、瀕死の状況ながら最後にはドラゴンを消して勝利した君を見て、すごく、ドキドキ、ワクワクしたの! だから、お兄さんに話しかけたの!」

 ユリスの話を聞き勇は思う。

 (ニコルさんも言っていたけど、本当に俺があのドラゴンを消したにか? もし話が本当でも、ドラゴンを消した記憶がなく、正直、実感がない…)

 勇はドラゴンを消した記憶がないことをユリスに話すも、そうなんだ~と言い、それならと、話題を変える。

 「ならお兄さんはどうやってドラゴンを消したの? スキル?」

 「それが、わからないんだ…、ドラゴンを消す事ができるスキルなんて持っていない、……本当に俺がドラゴンを消したの?」

 不安げにユリス聞くと。

 「うん! 近くにお兄さん以外いなかったし、間違いないと思うよ?」

 (やっぱり、俺ががドラゴンを消したのか……スキルについてもっと調べないといけないな)

 勇が今後、改めてスキルの検証をしようと考えてもいたとき、ユリスが驚きの提案をしてくる‼

 「ねぇねぇ! ボクと戦ってみない?」

 「はあ~! 何で急にそうなるんだ!?」

 急な提供に勇は、断ろうとするが。

 「いやーー」

 「よし、そうと決まれば善は急げだ!」

 この店に連れられて来たときみたいに、手を繋がれ、素早く会計を終わらせ、どこか分からないが連れて行かれる。 

 (うわッ、すごい力だ!? これが、この子のスキルの効果か?)

 店を出た後、けっして少なくない通行人の間を、縫うように素早く滑らかに引っ張られて行く。

 (すごい、通行人に誰一人掠りもいないで走っていく!?)

 ーー引っ張られること数分後、勇がユリスに連れられてやって来た場所は、何もない空き地だった。

 「さあ、ここならある程度暴れても問題ないよね!」

 (確かに少々派手に暴れても大丈夫そうだが何で急に……)

 だが、勇はなんだかんだユリスとの戦いを断れない、一目惚れで好きになった子からの誘いをである、これも惚れた弱味と言うやだ。

 「じゃ~お互い素手でやろうか、武器だと危険だし!」

 ユリスは拳を構え臨戦態勢を整える。勇も拳を構えようとするも、自分は格闘経験があるわけでもなく、悩んだ末、ボクシングの構えをとり、ユリスと対峙する。

 好きな女の子に、構えはするが、殴り掛かることが出来ない勇、ユリスは来ないならこっちからだと、攻める。

 向かって来たユリスに、今だけだも好きという心をなんとか切り替え、勇は拳を打ち出し、迎撃すも、ユリスはなんなく避け勇の腹に蹴りを入れ、後ろに大きく吹き飛んだ。

 「グハッ」

 激痛で腹を抱え蹲る勇は、ユリスを強く睨み大声で文句を言うが。

 「大丈夫、大丈夫! このくらいで死んだりしないから。さぁ~早く立って、続きをやるよ」

 勇は再び構え、それを見たユリスは、遊んでもらえる子供のように笑顔を浮かべて攻撃してくを始める。

 ーー勇は攻撃してきたユリスの拳を避けようとするが、完璧には避け切れず僅かに当たり後退する。休む隙は与えないと言わんばかりに、次の攻撃が来るも、今度は完璧に攻撃を避け、驚くユリス‼

 (うそ……もう避けることができるの‼ まだ三回しか攻撃してないのにもう見切られてるの)

 ユリスの驚きはもっともである。自分がしている攻撃は早く鋭いのに、たった三回の攻撃で対応してきたのだ、例え国に仕えた、訓練された熟練の兵でも一撃でやられるしかないような攻撃なのにだ。

 (どう見たって強そうにないのに……)

 勇が持っているであろうドラゴンさえ消す事ができるスキル、そのスキルに興味を抱き戦いを挑んだら、うれしい誤算である。

 「アハハ! 楽しくなってきたよ! さあ、もっと楽しく戦おうよ、お兄さん!」

 (おいおい、やっぱり戦闘狂かよ、そんな気はしてたんだよな。ハァ~)

 だいぶ痛みも引き、蹴り飛ばされたことにより、ユリスに対する浮ついた気持ちも落ち着き、冷静に考えることができるようになった勇は、ユリスを倒す為に攻勢に転じる。

 「今度はこっちからだ」

 「アハハ、うん、来て! お兄さんの力をもっと見せて!」

 ユリスが殴ってきた瞬間スキルで小さくなり、避ける。

 「……⁉️」

 ユリスが驚き、隙が出来た瞬間にスキルを解除し、大きくなっていく力を拳に乗せてアッパーカットするも、紙一重で回避するユリス。

 「なにそれ! そんなスキルを持っていたんだ、ならこっちも本気を見せないとね!」

 その瞬間まるで、空気が重くなったように勇は感じた。

 「クッ……」

 ユリスの体から、赤色の淡い光が出てきて、攻撃のスピードが上がっていく。

 なんとかさらに激しくなった攻撃を勇は避けるが、攻撃を避けられている筈なのに、ユリスの顔は笑顔であり、そして、獲物を狙う猫のように鋭い目になっていく。

 「良いよ……すごく良いよ! もっと、もっと楽しもう!」

 「俺は別に楽しくなんかない。楽しんでるのは、そっちだけだ」

 お互いに一歩も引かない攻防が続く。ユリスの激しい攻撃に、勇はスキルを駆使して攻撃をかわし、直ぐ様攻撃していき、ユリスは急に消えたり現れたりする勇の攻撃を的確に対処する。

 (依頼中に襲ってきた盗賊より遥かに強い!)

 だが、このままでは自分の体力が尽き負けると考えた勇は、勝負にでる。

 (自分の予想が、もし、間違っていたら負けるだろう。……だが、予想が当たっていた場合、この勝負に勝てる。それどころか、これからの戦いで強力な武器になる!)

 勇の何か狙う雰囲気に気付いたユリスは、警戒する。

 (何が狙っているね! でも、そう上手くいくかなッ)

 ユリスの強力な攻撃が来るも、勇は怯まず前に出て紙一重で避け、ユリスに触る。

 「…⁉️」

 ユリスの体が一瞬で小さくなった。

 「ハァハァ、どうやら予想は間違ってなかったようだな」

 勇の予想、それは相手を小さくする事だった。ニコルやユリスは、自分がドラゴンを消したと言っていたが、そんなスキルは持っていない。自分が持っているスキルは、(小さくなる)ただそれだけ。なら、自分が小さくなる事が出来るだけのスキルではなく、()()()()()()()()()()()()()()()スキルと言うことが考えれる。

 そして、勇は、勝負に出て、自分の予想が当たりユリスを小さくする事が出来た。

 「この勝負、俺の勝…ち…だ…」

 バタンッと最初にユリスから受けた強烈な一撃や緊張の糸が途切れ、勇は気絶し倒れてしまい、それによりスキルが解除され、ユリスが元の大きさに戻ってしまう。

 元の大きさに戻ったユリスの顔には負けた悔しさがあるが、直ぐにその顔は変わり、満面の笑顔になる。

 「アハハ、まさか負ける何て……ボク、…お兄さん…いや、勇の事好きになっちゃたかも!」

 

 


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