冒険者になる!
ようやく投稿出来ました! 楽しんで見てくれたら嬉しいです!
ベリンを出て、馬車を走らる。
順調に進んで無事に勇達は、ニコルの本拠地である町に着いた。
護衛の依頼が完了したのでベンとは別れ、勇はニコルに街を案内してもらっている。
「不動くん、ようこそ、ハワード王国で一番盛んな都市、商業都市フィンブルに!」
ニコルが微笑み、勇に歓迎の言葉を掛ける。
フィンブルの街並みを見て勇は、感動で胸が震える。
(凄い! まさにこれこそ異世界だ!)
勇の視界に映っているのは、見たこともない食材が並んでいるお店や、それを、調理し売っている屋台、さらには、背中に大剣や槍を背負っている人達、他にも日本では見たことのない物がいっぱいある。
「フフ、凄いでしょ、この賑わい。王都でもここまで賑わってはいないわよ」
感動している勇の様子に、ニコルは笑みを浮かべ、さらに色々説明をしてくれる。
「フィンブルはね、隣国のジグラス共和国との国境付近にあるから、ジグラス共和国から色々な物が入ってくるのよ。だから、商業が盛んな町になって、こんなにも賑やかな町なのよ」
ニコルの話を聞き、ジグラス共和国? と疑問を口にすると。
「あら、知らないのね? ジグラス共和国は、ハワード王国の隣にあり、獣人やエルフなど人族を含め、多種多様な種族が暮らしているの」
獣人やエルフと聞き、勇はテンションがさらに上がっていく。
「さて、喜ぶのも良いけど、馬車の車内で話していた通り最初に私の家へ行くわよ」
フィンブルに向かっている途中、馬車の車内でニコルから、どうせなら住み込みで働かないかと提案されていた。
「不動くん、良かったら住み込みで働かないかしら?」
「え! 住み込みですか?」
「ええ、フィンブルで宿を取って私の所で働くのより、部屋も空いているし、私の家で住み込みで働いた方が宿代も浮く、どうかしら?」
ニコルの提案に勇は考え込む。
(確かに宿代が浮くし、俺はこの世界の事をまだなにも知らない、……でも、一緒に住むって……)
「ニコルさんは良いんですか? 俺……男ですし……良いんですか?」
「フフ、大丈夫よ、不動くんの人柄は、これまでの道のりで会話で信用しているから」
信用していると言われ、なにも言えない勇、そんな勇を見てニコルは内心色々な企みを考えていた。
(不動くんが襲ってくるなんて事はなさそうだし、もし襲ってきても不動くんになら……フフ、まぁ大丈夫よ、それに、借りも大きい方が後々返してもらうものも大きいと言うものよ)
ニコルの内心を知らず、勇は、やはり悪いと思ってしまう。
「あの……本当に良いんですか? ……ニコルさんの家に泊めさせてもらって……やっぱり俺、男ですし……」
勇の申し訳なさそうな様子にニコルは悪戯心がわいてきた。
「フフ、……良いのよ? ……襲ってきても」
ニコルに耳元で囁かれ顔が真っ赤になる勇。
「え⁉ ……いや、……その……」
顔を真っ赤にし戸惑う勇に満足して、ニコルは勇の手を引き色んな店を見たり買ったりして家に向かって歩い行く。
「ここが私の仕事場で二階が自宅よ」
ニコルに連れられ、勇がやって来た所は、日本で言うところの診療所だ。
医者であるニコルは、いつもここで患者を診て、外傷がある人にはスキルで治療をし、病気の人には薬を調合して治しているらしい。
「やっぱりちょっとホコリっぽいわね……最初は掃除かしら? 不動くん、一先ず二階で休憩してご飯での食べましょ、掃除はそれからよ」
ニコルに付いていき、勇は二階に上がり、ニコルの荷物を下ろす。
「ちょっと待ていてね、さっき買った物で直ぐにご飯を作るから」
ご飯を作ると言われ、勇はドキドキする。
(初めて他人の手料理を食べる、しかも、ニコルさんのような美人の手料理だ、楽しみだな!)
席に座り、勇はニコルの手料理を待つ。
「は~い、出来たわよ、いっぱい作ったから、たくさん食べてね良いわよ」
ついに料理が出来上がり、勇は目の前に運ばれて来た、出来立ての美味しそうな料理に、待ってましたと、食べ始める。
料理はとても美味しく、お代わりまでしてしまう勇。
「ふぅ~、美味しかったです」
「そお? なら良かったわ」
料理を食べ終わり、二人はお茶を飲み一息つく。
「不動くん、このあとは掃除をしようと思うの。今日はまず二階の部屋を掃除をして、不動くんが使う部屋を用意するつもりよ」
「分かりました、美味しい料理を食べて、元気一杯なので、頑張ります!」
休憩が終わり、掃除を始め、二階にある部屋全てを綺麗にしていく。
勇は元の世界で掃除などあまりしたことがなく、最初は戸惑いながらやっていくが、次第になれていき、なんとか夕方までに掃除を終わらせることが出来た。
「ふぅ~、なんとか日が落ちる前に終わった」
額に汗を流し疲れた勇は綺麗になった床に腰を下ろす。
「フフ、ご苦労様、不動くん。今日はこれで掃除はお仕舞いにして、ゆっくり休んでいて、私は今から夕飯の支度をするから楽しみに待ってて」
昼ご飯の味を思いだし、掃除の疲れで、ご飯がより美味しく味わえると勇は楽しみにして待つ。
ーーご飯を食べ終わった勇は、ニコルの勧めでシャワーを浴び、今までの疲れを、お湯と一緒に流していく。
(あぁ~気持ちぃ~、本当にニコルさんと出会えて良かった。もし出会えてなかったら、今頃どうなっていたか。いずれニコルさんにこの恩を返さないとな)
勇が体を擦り洗っていると、ニコルが脱衣所に入ってきた。
「不動くん、ここに着替えを置いておくわね」
「はい、ありがとうございます」
申し訳なさそうに勇はお礼を言う。
「この着替えは、患者さんの緊急時、衣服が破れたりしていたとき使う代わりの衣服なので、気にしないで良いわよ。フフ、それより……」
それより? と勇は首を傾げ、ニコルから、なにやら怪しい雰囲気が漂い始める。
「一緒に入って背中でも流して上げましょうか? もちろん、私も裸で入るから、不動くんは、私の背中を洗ってくれるかしら」
突然のニコルからの提案に、急ぎ慌てて声を上げる。
「いえッ‼、大丈夫ですッ、じッ……自分で洗えますから⁉」
「フフ、あら、そう。それなら私は行くわね……」
脱衣から気配が消え、フ~、と肩を下ろす勇。
(冗談だろうけど、ちょっと勿体無かったな٠٠٠٠٠٠てッ! 俺はいったい何を考えているんだ⁉ とにかく今あった事は忘れよう)
忘れようと思いながらも、想像してしまい、シャワーを浴び終え、掃除して出来た自分の部屋で寝ようとするも、中々寝付けない夜を勇は過ごした。
勇が中々寝付けなかった頃、とある酒場にベンは居た。
酒場の雰囲気は悪く、ならず者が集まっている。そんな場所でベンは怪しい男と話している。
「これが、依頼の前金だ、残りは依頼を成功させたら払ってやる」
お金が入った袋をベンが、怪しい男に渡す。
「へへ、ありがとうございます。必ず依頼を成功させますとも」
こんな場所で依頼とはなんなのか? こそこそ話している二人に疑問に思う者が一人だけ居るが、ベン達は気付かず、話は進んでいく。
「もう一度言うが分かっているな、人気がない場所に行ったときに、標的を殺すんだ!」
「へへ、分かっておりますよ旦那、暗殺者のスキルを持つ私に任せて下さい。それでは、失礼します」
怪しい男は、お金が入った袋を懐に納め酒場から出ていく。
ベンは一人、ニヤニヤしながら酒を飲み続けている。
そんなベンを見ている人が居た。その人物は、フードを深く被っており、ベン達の会話を聞きなにやら考え込んでいる。
(あの人って確かドラゴンを消した人と一緒に居た人だよね? なにやら怪しい男と話し、殺しの依頼をしていたみたいだけど、……まさか、ドラゴンを消した人を? 確かにドラゴンを消した人に強烈な嫉妬を向けていたし、ドラゴンを消した人が気になって馬車を尾行していたときに、馬車を運転しながら、殺意に満ちた気配を出していたんだよね。どうしよっかな~、ドラゴンを消した人は私の獲物なんだけどなぁ、邪魔そうならさっき居た男と一緒に殺しちゃおっかな~)
う~んと悩み、……まぁ、いっか! と物騒な考えをやめた。
(あんな雑魚にドラゴンを消した人が殺られたら、所詮は雑魚だったと言うだけ。うん! そうしよう!)
フードの人物は酒代を払い、いったいどうなるのかウキウキしながら店を後にする。
毎日ニコルの手伝いをして忙しい日々を送り、勇がフィンブルにやって来て一月がたった。
「フフ、行ってらっしゃい不動くん!」
「はい! 行ってきます!」
今日、ついに冒険者になるため勇は冒険者ギルドに向かうのだった。
(ようやくこの世界の一般常識を覚え、ついに異世界系ラノベの定番、冒険者になる日がきた!)
この異世界に来てからのことを思い返し勇は感傷に浸る。
(この世界に来てから、直ぐに、人族を救ってくれやら、精神を操られそうになるやら、極めつけにドラゴンに襲われた……だが、ついに俺はニコルさんのお陰で色んなことを学び、立派にこの世界の住人になり、遂に冒険者になれるんだ!)
冒険者ギルドに向かって歩い行く勇。
ーー遂に冒険者ギルドに着いた勇は、ワクワクして冒険者ギルドの中に入っていく。
ーーそして、冒険者登録が終わった。
「え、冒険者登録、も٠٠٠もう終わり?」
直ぐに冒険者になれた。余りに直ぐの事で、ギルドに入る前のワクワクが直ぐに消えた。
入って受付嬢に冒険者になりたいと言い、直ぐに冒険者登録が完了し自分のランクであるFと書いてある冒険者カードを貰った。
因みに、冒険者のランクは下から、F E D C B A S の順にであり、Sが最高ランクだ。さらに、依頼にもランクがあり、自分のランクより上の依頼を受けても問題ない。例えば、Fランクの冒険者がSランクの依頼を受けても良い。勿論失敗したら賠償金があり自分のランクも下がってしまうが、受ける依頼は、冒険者本次第だ。腕に覚えがある人は高ランクの依頼を受けて、高額な報酬を貰い早く上のランクを目指すもよし、または、自分のランク以下の依頼を受けて安い報酬だが、安全にお金を稼ぐもよし。ランクが上がれば色々と便利らしく、冒険者カードを見せれば、色んな店で色々と融通してくれるらしい。
意気消沈している勇だが、普通に考えれば当たり前の事だと思う。
普通はテンプレみたいに絡まれて騒動が起きるわけもなく、いきなりSランクになれる程の才能が合ったりもしない。普通に説明をされ、普通に一番下のランクである、Fランクの冒険者になった、ただそれだけだ。
(まぁいっか、実際に絡まれたら困るし、普通が一番だしな)
テンプレの展開が起きなかった事にちょっと残念に思ったものの。
(もし、凄いスキルがあり、その場で直ぐにSランクになっても、昔みたいに周りから虐められ、遠巻きにされるだろう。そう考えたら無事普通に冒険者になれたんだ良かったと考えておこう)
勇は過去を思い出して暗い気分になった自分に活を入れるため晴れた青空を見上げる。
「よし! 頑張るぞ!」
今日は一先ず依頼を受けないでニコルの手伝いをしに、ニコルの家に戻って行く。
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