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スキルの真価

 短いですが楽しんで見てくれたら嬉しいです!

 

 城を抜け出し、馬車の車体裏に小さくなって潜んでから日が登った朝方、街道を走っていた馬車が水辺で止まり馬車から人が降りてきた。

 張れないよう息を潜める勇の耳に、若い女性と渋い男性の声が聞こえてくる。

「ふ~あとすこしでベリンに着きますね、早く行かないと、患者が待っています」

「ニコル様、お急ぎたい気持ちは分かりますが、馬も休憩させないと疲れ果てて仕舞います」

 車体裏から顔を覗かせ様子を見てみる。

 女性は20代半ばくらいの銀髪のセクシーな美女で、男性は30代くらいのがっしりした体格だ。

 二人は話し合っていた。

「しかしニコル様、お体は大丈夫ですか? 王都に急いで向かい治療した後、急遽、別の町で治療の依頼があり馬車で急ぎ向かっていますが、王都での治療の疲れが残っているのではないですか?」

「大丈夫よベン、このくらいで弱るほどやわじゃないわ」

 ベンはニコルを心配するも、ニコルは何処と無く面倒くさそうに返事をする。

 二人の様子を見ていた勇は町に向かっていると聞き安堵し喜んだ。

(このまま隠れてついて行けば町に着ける!)

 ヒヒィィィ

 ーー突如馬車を引いていた馬が暴れだす⁉ 

 車体裏に隠れて居た勇は地面に落ち、休んでいたニコルとベンは馬の様子に驚き慌てて馬を必死に宥める。

「落ち着け‼」

「ちょっと落ち着きなさい」

 だが馬は落ち着かない。

 ーー突如大空に声が響く、ニコルとベンは大空を仰ぎ見て、勇も馬車の車輪から隠れながら仰ぎ見る。

 ……巨大な影が勇達を覆う……

 鋭い爪、大空を羽ばたく巨大な翼、あらゆる物を噛み砕く鋭利な牙、大空よりこちらを見下ろしそいつは現れた。

 勇は震え圧倒され何とか声を出す。

「……ドラゴン……」

 勇は恐怖で足が竦み、ニコル達は腰を抜かし動けない。

 ドラゴンはニコル達を嘲笑うように見下し、地面に降り、その衝撃で地面が凄まじい揺れを起こす。

 凄まじい揺れと、ドラゴンが降りた風圧で馬車諸共、全員が吹き飛んでいった。

(クソォォォ)

 ーー吹き飛ばされニコル達は気絶した。

 勇は傷を負いながらも何とか意識を保っているが、スキルが解け元に戻って仕舞い、震えながらもドラゴンを睨み付ける。

 ドラゴンは睨む勇を嘲笑い、ただの餌として見ており、勇を喰らわんと近付いていく。

 ドラゴンの視線の意味を理解した勇は、恐怖が消え震えが止み、頭の中が怒りで一杯になる。

「ふざけるな‼ 俺は死なない、こんなところで、死んでたまるかぁぁぁ」

 勇は叫ぶ、だが、ドラゴンは餌が鳴いているとしか思っておらず、勇を黙らす為に尻尾を自在に動かし勇に叩き付ける。

「ガハッ」

 口から血を吐く勇、だが決して死なない、ドラゴンは勇を殺さず痛め付け遊んでいる。

 全身の骨を折り激痛で悶え苦しむ勇。

 ドラゴンは勇に近付き、鋭い爪で勇を地面に押さえ付けた。

「ぐあぁぁぁ」

 更なる痛みに意識が飛びそうになるも、勇はドラゴンを睨み付ける。

(何とかこいつを倒す方法はないのか‼)

 思考を巡らせ、勇はドラゴンの押さえ付けから逃れる為に、小さくなって指の隙間から逃げる。だがドラゴンは逃がしてはくれず、小さい勇を再び指で押さえ、痛め付ける。

(クソッ‼ このドラゴン遊んでる、何かこいつを倒す方法はないのか‼)

 ーードラゴンは勇を痛め付けるのに飽きたのか、勇をつまみ上げ喰おうと口を開ける。勇は既に瀕死の状態である為、逃げる事が出来ない。

(……俺は……ここで喰われて……死……ぬ……のか……)

 意識が遠退き、スキルが解けて元の大きさに戻った勇は、ゆっくりとドラゴンの口に入る瞬間、死にたくないと強く思い、勇は無意識にスキルを発動させた。すると、ドラゴンは一瞬で蟻のように小さくなった。

 ドラゴンは自分が急に()()()()()驚く。

 「!?」

 ーードラゴンに摘ままれ持ち上げられて居た勇は、重力に従い落ちていき、()()()()()()ドラゴンを蟻を潰すようにプチッと胸板で潰した。

 ……勇は完全に気絶し、うつ伏せのまま倒れた……

 


 

ーー「٠٠٠٠٠٠ここは? ٠٠٠٠٠٠はッ‼ ドラゴンはッ‼」

 ニコルは目が覚め、頭を押さえながら周囲を見渡すが、ドラゴンはいない、疑問を浮かべていると、離れている所に見知らぬ男の子が倒れているのを見つけ急いで駆け寄る。

「君ッ大丈夫‼」

 ニコルは勇の状態を見て小さく驚く。

(酷いッ‼ 全身ボロボロじゃない、両腕、両足、更には背中まで骨が折れている、早く治療しないと‼)

 急いでニコルは、見知らぬ男の子である勇を助けるため手をかざす。

 ニコルのかざした手が淡い緑の光を放ち、光に触れた勇の体の傷が治っていく。

 ーー勇の怪我を治し終えたニコルは疲れて肩で息をし、額から流れる汗を拭う。

「これで……何とか……大丈夫……そうね…」

 ふぅぅと息をし、改めて自分の状況を確認する。

 時間は昼頃だと思う。ベンは馬車や馬と一緒にドラゴンに吹き飛ばされ未だ目覚めず横たわっている。だが怪我は軽そうなのであのままでも大丈夫だろう。

 ーーニコルはベンの事が嫌いである。

 ベンは護衛として雇った冒険者であり、一見紳士的な雰囲気であるもののその実、自分の体を舐め回すように見たりする。

 ニコルとしては男が自分の体を見てくる事はよくあり、同性からも羨ましいとよく言われるが、ベンのように見られたら気分が悪い。

 だが、今はベンの事よりもこの知らない少年である。あれだけ酷い怪我だったのだから恐らくドラゴンにやられたのだろう、だが、ドラゴンはどうなったのだろうか、自分達を見逃し離れて行ったのか٠٠٠٠٠٠いや、ドラゴンの方から襲ってきて見逃すとは考えにくい。

(なら、まさか……この少年が撃退したというの?)

 頭にあり得ない考えが浮かび上がるニコル。

(いや、それはないわね)

 首を横に振り自分の考えをすぐさま否定する。こんな成人にさえ成っていなさそうな少年がドラゴンを撃退する何てあり得ない。

 ニコルは勇を抱えベンの所へ運び、一先ず全員が目覚めるのを待つことにした。

 




 ーー勇達の居る場所から離れた崖に、人影がある。崖から豆粒のように見える勇達をとらえ、その姿を瞳に映す人影は、勇を見ながら笑みを浮かべ、天真爛漫な可愛い笑い声を響かせて、獲物を狙う猫のような目で勇だけを見ている。

「へ~面白いじゃん!」

 勇はどうやら見知らぬ誰かにドラゴンとの戦いを見られ、目をつけられたようだ。


 

 

 

 

  

  

 

 

 

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