027・前編─ランニングマン
原神が悪いんだ、俺を誘惑するゲーム達が悪いんだ!たとえ1ヶ月以上休みがあろうと、ゲームたちが悪いんだ!
「各員、散開!」
「守っちゃるからねえー。安心してねえー」
青華の指示とメデスのやる気のない宣誓と同時に全員がバラバラに駆け出す。
やることは単純、走り回る事。これだけが俺に与えられた指示だった。
「うおぉおおおおうおうおうおぉおお!」
霊力の噴射を使っての全力加速全速力。
生来、体の頑丈な俺の体も軋みを上げる、年に一回あるかないかの大仕事だ。
弾幕シューティングのボスキャラみたいな無差別攻撃による被害が周囲に巻き起こっている。
青華が作りまくっている氷柱を避け、糸による弾幕を避け、何もない所で躓いてもなお、転ばずに体勢を立て直す。トンデモスピードの中で隙を見て拳銃を発砲して攻撃を試みるも、糸に阻まれたり避けられたり。そもそも九割くらいは的外れな方向に飛んでいく。センスが、ない……!
「ヒュッ!」
おわ、掠った。ついでに変な声も出ちゃったよ。
弾も切れたし、息も上がってちまった。
が、まだまだ序盤。こんなところでへばってるわけにはいかない。
青華の準備が終わって、上のフタが開くまでは走り続けなきゃいけない。そうやってただひたすらに走り続けること……それが俺に青華から与えられた指示だった。
「第一段階でのアンタの役割はこの部屋の中を駆けまわる囮役。あの女の攻撃をできる限り広範囲にバラけさせて私や羽重をできるだけ危険にさらさないこと。……一番危険な役だけど、できるわね?」
できないとは言わせない。そんな圧を身に受けて、笑いながら引き受けた。
できないなんて言えるわけがない。ああやってもう一度信頼してくれたことが、どうしようもなく嬉しかったから。
小躍りしたね。嬉しくて嬉しくて震えたね。
サンバのリズムを刻みながら走り出したのはいいものの、思ったより攻撃が激しい。これじゃあどんなに気を張ったところでその内まともに攻撃をうけるだろう。難易度的にはNORMALからHARDの間ってところか。こちとらEASYだってノーボムノーミスは難しいってのに。抱え落ち常習犯の俺としては帰りたくなるような状況だ。
あとどの位の時間走り続けるのだろうか。まさか一時間以上とは言うまいな。そうでないことを信じよう。メデスは直ぐに天井に穴が開くと言ってたな。その直ぐがどのくらい直ぐなのか聞いておけば良かったぜ。
「もう寒いのか暑いのかも良く分かんなくなってきたな」
辺りに乱立した氷柱によって雪でも降り出しそうなほどに室内温度が下がっている。その上での全力疾走なのだから、冬場の東北地方で半袖短パンフルマラソンって感じだ。
「青華ちゃん! もうそろそろ日の入りだ。 天蓋が破れるぞ!」
息を吸う肺も喉も痛い。汗で視界も滲んでいるし、今にも足がもつれて転びそう──
「──あっ」
いや、おいおいおいおい! 嘘だろう⁈
体がバランスを崩し、瞬間、僅かな浮遊感を得たのちに氷柱にぶつかるまで転げ回った。
ついに転んだ。氷も糸の残骸も何もない所で、自分の足に引っ掛かって転んだ。
憐れこの上ない。
憐れというよりは惨めかつダサい。
チクショウ、最近こんなんばっかだ!




