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026・後編─ばかみたい

 強い意志の宿った目をキッと吊り上げて、彼女は鮮烈にに言い放つ。


 「飛ぶわよ。空」


 言い出すとは思っていたけれども。

 なにを言っているんだこいつは。人間、食ってみたって飛べない生き物だ。一体どういう神経してるってんだ。

 まあ、青華の荒唐無稽な思考・発言は今に始まったことじゃない。出会ってから一度だって青華が普通だったことなんて一度だってあったものか。

 俺にとってこの世で最も理不尽で不条理な生き物。それこそが凍羽青華という人間なのだ。

 今の会話だって彼女ならどうにかしてくれるのではないか──そんな期待が、俺の中には確かにあった。何とかしてくれるという、ある種の信頼と言ってもいい。

 ──そう。信頼してるぜ、青華。


 「とりあえず天井のアレ、ぶち破ってきなさい」

 「おう! ……ってできるわけないだろ!」

 「なに、できないの? ずっと土下座ばっかりしてるから成長しないのよ」

 「好き勝手言いやがって……」


 俺の信頼を返せよ! よう! ょう……! ょぅ……。

 山彦やまびこのような余韻で悲しみをお届けしました。

 虚しいぜ。

 あと青華、メデスに氷で作ったバットを渡したのは何のためなんだ。


 「飛べない、破れない、お金ない……これだから鈴人君は……」

 「その三拍子の男の家に居候してんの忘れんなよ」

 「はぁ? 居候ゥ? どういうことよ!」

 「そんなことより今はどうやってこの危機から脱出するかを話し合おうぜ。空飛ぼうぜ。どうやって?」

 「そんなこと、じゃないわよ!」


 うがう! と頭に噛みついてくる青華ライオン。

 ちょっと待ってくれよ。俺だって何が何だか分からなくなってるんだから。この修羅場みたいなコントはどう収集付ければいいんだ。


 「落ち着いて」


 羽重はねおもしの一声と同時に、ずぎゃんと地面に墜落する青華。

 キラキラと舞う白い粒子を見る限り、羽重の能力による現象だろう。そして、以前見た彼女の身のこなしや発生させていた現象から考えるに──恐らく、羽重千鳥(ちどり)の特異能力は重力操作系統。それも他人にまで影響を与えられる点から、最低でもBランク以上の協力な異能だ。


 「さすがは羽重家の令嬢ってわけか」


 羽重家は代々、希少な物理法則操作系の特異能力者を多く輩出している事で有名な名家である。

 その中でも本家筋の令嬢ともなれば強力な重力操作能力者グラビタスだったとしてもおかしくない。

 などと、入学初期の方で受けた「対特異能力戦闘理論基礎」にて夢現で聞いた「敵味方問わず、他人の特異能力は推し量り把握すべし」という教えをなぞってみる。


 「と、とにかく上のアレを取り払うことが第一条件よ。それができないと退路が一切確保できないことになるわ」

 「一歩目から無理筋ってワケか……」

 「でもそれさえクリアできれば、空に飛び出してここから逃げ出す策が私にはある」

 「なんだ? 氷で階段でも作るのか?」

 「あんな高度にまで登れるような階段を作ろうと思ったら霊力が全然足りないわよ。あんたじゃないんだから」

 「飛ぶ……、なるほど」

 「知っているのか羽重⁈」


 背中をはたかれる。

 青華ちゃん的には黙っていて欲しいらしい。

 珍しく反応した羽重に驚きの声を禁じ得ない。

 大して羽重の事を知っているわけでは無いが、これまで彼女が積極的に他人の会話に反応リアクションをしたことはなかったはずだ。

 なんというか、方向音痴以来の人間性の発見である。


 「ばかみたい」


 空を飛ぶだなんて。


 「でも、ばかみたいなことは、おもしろい」


 まだ、聞いてもいない青華の策への同意の言葉。

 ついに何も言えなくなるほどに呆気にとられている俺と青華をよそに、バット振り回してラウルムへの迎撃を行っていたメデスが声だけを投げかけてくる。


 「天蓋は直ぐに壊れる。それで、どうやって飛ぶのか説明しておくれ。それを踏まえて僕が修正するから」

 「……え、ええ、全員、よく聞きなさい」


テスト前はもうあと一本か、これで最後です。

カードキャプターさくら クリアカード編が今年完結すると聞いて悲しいです。二次創作でよくある小狼と桜の子供とかの話で続かないかな……。

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