026・中編─逃げ道
駆け込み乗車ーーーっ!
分からない。
俺にはメデスという存在の思考が、感情が分からない。
「──で、鈴人君。よく見ないから変な誤解や勘違いをするんだよ。勉強になったね」
……勉強は嫌いだ。
口に出して伝えたりはしないけれど。
「ぎゃふ!」
手首に巻かれた糸がメデスの水によって切断される。水流カッターってやつか。鉄も切断するっていう。
メデスがちょっと操作を誤ったら俺の手首辺りから先がチョンパだったな……。これ、切断面を見るに、括られた右手首と左手首の僅かな隙間を縫うように切断していったぞ。
ちなみに、鋼鉄を切るほどの水流カッターの速度はマッハ7。恐ろしい事この上無いぜ。さっき俺の体表数ミリをすれすれで通っていったけれども。
「でも、とにかく逃げようとする鈴人君の判断も間違ってはいない。あの仔羊単品なら敵じゃないけれど、影の集団がセットだと少なくとも君以外の二人は切り捨てなきゃいけなくなるから」
「だったらさっさと──」
「不可能という点に目を瞑ればね」
「畜生め!」
どうすりゃいいんだ!
そうこうしている間にも向こう側からヒュンヒュン攻撃が飛んできている。
これじゃ服を着る暇もない。
さっきから羽重がこっち見てくれないんだ。
「空でも飛べない限りは、まず逃げられないだろう」
「空……」
最初に入ってきた扉の方はいつの間にか(恐らくは糸で)塞がっていた。
空、か。
霊力のブースト込みでもあの大穴を跳んで逃げるのは難しい。どうにも地球の重力は偉大らしい。
飛ぶにしてもラウルムに天井の大穴は塞がれたままだ。
え、逃げられなくね?
「なんにしても、青華と羽重の拘束を解かないと」
脱ぎ捨ててある制服のポケットからナイフを取り出し。
二人の腕を解放してやる。
重力に従って青華の腕が伸びきった途端。
「遅い! いつまで吊り下げておくつもりよ! 真っ先に助けるべきでしょ⁈」
「お、おお?」
「動けないし、ほとんど喋れないし、水着に着替えさせられるしでもう散々よ!」
「なんかスマン」
動けなくなる上に、喋れなくなる効果でもあったのだろうか。
羽重は喋ってた気がするけど……。気にしないでおこう。
「それで、これからどうする? 青華」
「……逃げる。逃げるわよ、逃げるしかないじゃない。だってあんなの人間の手に負えるものじゃないもの」
「………………」
「だから逃げる」
「でも空でも飛べない限り不可能らしいぜ」
「なら、やるわよ」
強い意志の宿った目をキッと吊り上げて、彼女は鮮烈にに言い放つ。
「飛ぶわよ。空」
なんとか年内に投稿。言い訳のしようも無くサボりの成果。




