018─暇は人を狂わせる
「なあ青華」
「うるさい、死ね」
「………………」
………………
「なあメデス」
「やっぱりこっちはもう少し深く削った方がいいんじゃないかな」
「………………」
………………
「羽重……?」
「そこをそれ以上削ると光を反射しなくなる」
「………………」
………………
「なんなんだよこの扱い⁈」
ここまでのあらすじ。
クララが立った。
実はSFなのかもしれないこの世界観でクララというのもどうかと思うが。例示としては些かほのぼのし過ぎだろう。
「状況がほのぼのし過ぎだろ! いつまで氷像創ってんだよ。冷たいんだよ。体制的にも辛いんだよ!」
「大丈夫、大丈夫。霊的抵抗力の強い君なら後五時間は耐えられるよ」
「多分だけど体制の辛さにその抵抗力は関係ないよな」
メデスが言うには実際の残りの待ち時間としては五時間ではなく最短で二時間程らしいが。
いや、どっちにしても既に三時間以上この体制である。もう三時間ドリフポーズ。
「僕らを囲っているこの結界は君を柱として発動させてるんだ。動かれると困るよ」
「それについてはさっきも聞いたし、納得もしたけどさ」
「納得したのなら文句言わずに死になさい」
「腕輪は水の方がいい」
「おっけ」
「おっけ、じゃないんだが」
おっけ、じゃないんだが!
このままじゃ重装歩兵にされてしまう。
とはいえ、ナイフで器用に氷を削り続ける羽重と、水で装飾を付けたすメデスと、言われるがままに氷を継ぎ足し続ける青華を止める術を持たない俺では打つ手なしである。
そのうち顔も隠されるのではなかろうか。
「おいメデス。本当に六時間で──あと二時間で夜が明けるのか?」
「まあ明けるだろうね。多分。夜だけが長いなんてそんなアンバランスな事が出来るほど都合のいいものでもないんだよ──確か」
「自身無さ過ぎだろ」
それにもう二時間もかからないだろうね。
大分あやふやな説明だけれども、今は納得するしかない。
残りおよそ一時間、片足立ちドリフポーズの氷像のまま我慢しなければならないわけだ。やんなるぜ。
「……まあいいや」
と四回目の納得。
この流れも四回目か。やる事の無い時間……暇ってのは人の狂気を表に引き出してしまうものらしい。そりゃ吸血鬼だって死にたがるはずだ。
「ララバイ」
「いくら」
「ラリホー」
「ホットレモン」
………………。
「アリア」
「アサリ」
「リレミト」
「トカイワイン」
………………。
「セプテット」
「トゴットメバル」
「ルーラ」
「雷管」
………………。
「ないわよ! 一巡で終わるしりとりとかないわよ! 役満よ! なんも面白くないわ!」
「わかさぎ」
「ギラ」
「ライオン」
「うがっう!」
「うわっ……噛むなよ」
「がるるるるるる」
氷で覆われてるから全然痛くない。鎧が初めて役に立った瞬間だった。
唐突に始まったと思ったら速攻で終わったしりとりに、俺らはなんて言葉を送ればいいのだろう。
奴はよく頑張ってくれた。奴は何にも悪くない。活かせなかった俺たちが悪いのだ。あいつ無茶しやがって……。
暇つぶしの極致として長年我々人類を支えてくれて来たしりとりといえども使い手が未熟ならそれまで。どうしようもない。特に羽重。あいつ、何度やっても負けるんだぜ? ありえねえよ。
ちなみに順番は青華、メデス、俺、羽重。
ちなみに俺はFF5しかやったことがない。
「ったく。寒いし重いしでもう散々って感じだし。しかも外部からの救助も絶望的。もうやんなっちまうぜ」
「ただ時間を待つだけだったらむぐむぐ、寝てたらいいじゃんもぐもぐ」
「何食ってんだよ。いや、この状況で寝られるもんかよ」
「案外寝られるもんだよ……多分」
「暮木うるさい」
「むばむば」
「ぐう」
試しに寝てみる。
………………。
「いや無理!」
目を開ける。
皆がグルグル回ってる。
「「「かーごーめーかーごーめー」」」
「怖い怖い怖い……!」
ってかお前ら実は仲良しだろ。
その籠の中の鳥は今冷凍チキンになってて動けないんだぞ。
でやれねえよ。
籠の中の鳥は決して自分の意志じゃあ外には出られない。だからいつかその扉が開かれる時を、己を囲む格子を見つめてじっと待つのだ。
籠目、籠目と。
「後ろの正面だあれ」
さて、誰だったのだろう。とにかく分かるのは俺の視界が急に大きく開けたことくらいのものである。
なべなべそこぬけ。
絶対に
あると思うな
あとがきラジオ
畠鈴、心の川柳




