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017・後編─ポニテもツインテもだいすき

 「じゃあ髪型変えていこうか」

 「なにがじゃあ、だよ。……何にする?」

 「やってくれちゃうのかよ」

 

 じゃあポニーテール!


 「それより大丈夫なの? あの子人殺しそうな目でこっち睨んでるけど」

 「大丈夫じゃないだろうな、いつもなら。けど今は俺シカトされてるから大丈夫……あれ、なんか泣けてきたんだけど」

 「哀れだね」


 崩れる俺。

 蹴りつけるメデス。

 永久機関が完成したかもしれない瞬間だった。


 「って、コラコラ蹴るんじゃない。こんなとこ人に見られたらどうする。変態だと思われてしまうだろう」

 「いや、バッチリ見られてるけどね」

 「おっと?」

 「ばっちり変態だけどね」

 「おっと?」


 しまった。もうすぐ前方に彼女たちがいることを忘れていた。自分の頭の悪さをつくづく実感させられる。

 もっとも、実感してからでは遅いのだけれど。

 もう色々遅かった。

 俺とメデスが馬鹿な事をやってるのには気づいていた彼女たちではあろうが、しかし、その二人の間にはどこかやはり険悪な雰囲気が流れていた。ロックすぎるぜ。


 「遅い。遅れたら氷漬けって言ったでしょ」

 「いや、これには大分深めのやむを得ない事情があって、だから氷漬けは勘弁──ん⁈ あれ?」


 さっきメデスに「大丈夫か?」と問われたとき、「(シカトこかれてるから)大丈夫だ問題ない」と答えてしまった俺であるが。

 あれ? 前提を覆されてしまった。

 え? あれ? うん?


 「せ、青華……? お前……」

 「何よ」


 気のせいでも幻聴でもない。

 不機嫌なままではあるがの言葉に返答している。

 彼女のツリ目を見つめて二秒。


 「がばあっ」

 「ぷっきゃう!」


 膝を曲げて大きくジャンプ。ここまでで三秒。カエルもビックリだ。青華もビックリだ。

 頬擦りすりすりすりすりすりすりすりすり。


 「この間あんなことしたから嫌われちゃったんじゃないかって不安だったんだけど、良かったぁ! やっと口きいてくれた!」

 「うぁううぁうぁう」


 ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。


 「小さいなあ、軽いなあ、かあいいなあ! もう!」

 「ふあうふあうふあう」

 「あはははははは、あはははははは!」

 「いい加減に──」


 上に跳んで拳を振るう。その小さな体躯からは考えられない力強さだった。


 「しなさい!」


 首を落とされるかと思うほどの衝撃。それと共に全身に広がる冷たい感覚。

 これも久しぶりだ。

 しかしこれは新パターン。

 いつもなら全身かなり厚い氷で覆われるが、今回は全身が薄めの氷で覆われている。硬度は変わらないという技巧……職人芸だ。


 「ふっ……また腕を上げたな」

 「うっさい! 喋んな!」

 「………………」


 多分、今回の任務中だけでも話を聞こうと考えたか、羽重に説得されたのだろう。いや、どっちかは分からないが。

 傍から見れば、最近の俺たちの仲違いの理由は良く分からないものかもしれないが、当人たちからすればトラウマに触れるどころか鷲掴みするレベルの暴挙だったのだ。その辺よく理解してほしい。

 今の青華の精神状態は間違いなく中学時代のそれだ。つまり恐怖の化身である。


 「んんっ! そろそろいいかな?」

 「アンタは……」


 毛を逆立てるネコ科の如く警戒心を露わにする凍羽青華とううせいか

 やはり何を思ってるか分からない羽重千鳥はねおもしちどり

 そして余計なマネをと視線を送る暮木鈴人くれきすずと


 「うん、三者三葉のいい反応だね。とりあえず鈴人君は死んだ方がいいと思うよ……。僕の事については後回しだ。今は一秒だって惜しい」


 そう言って、メデスはここまでの経緯いきさつを語り始める。

 アイスが消えていたこと。

 人影を見つけたこと。

 その人影が本当に影だった(?)こと。

 影の特性について。


 「当面の目的は朝までどうにか凌ぐことだ」

 「でも、どうやって?」


 氷に体温を奪われながらも問いかけてみる。声に震え一つないところ、流石俺というところだ。

 そして誰かそこで俺の氷を削って氷像創ってる羽重と氷を継ぎ足し続けてる青華を止めてくれ。

 片足立ちで首を下げた、転ぶ寸前のドリフみたいになってんだぜ。どんな像だよ。


 「何で参加してんだよ止めろよ。水でエフェクト付けんな、俺を何にしようとしてんだお前ら」


 メデスまでも参加しだしたら止まんねえじゃねえか。


 「全く、しょうがないなあ鈴人君は。今回だけだからね」

 「お前はドラえもんか?」


 途端、ほとんど氷像と化した俺の背後から水の翼が大きく広げられる。

 ……なにこれ。

 言葉も出ないとはこのことだ。アホ面晒して氷像やってるくらいの事しかできない。


 「すごい、綺麗……」


 あっという間に出来上がった水のドームに、流石の青華も呆けざるを得ないらしい。

 青華のこんな表情を見るのは久しぶりだ。だいたい一から二週間ぶりくらい。

 ……いや、あいつは甘いもの食ってる時はすごくいい顔してるから割と頻繁に見れるんだよ。(ごく)最近はそうでも無かったけど。


 「これで大丈夫。影はこの中には入ってこれない」

 「大事な事ではあるけどさ」

 「大事なのはこっち」

 「そうだよねえ、水でできる物だったらどんなパーツだってつけるから言ってね」

 「そんな馬鹿な」


 もう既に聖衣クロスみたいになってるのに、まだ追加されるというのか⁈

 いいのか⁈ 今の体制でそんな格好させて⁈


 「鈴人」

 「え?」


 可愛らしいアニメ声。

 思わず狂喜乱舞するところだった。


 「別に、アンタを許したとか、寂しくなったから会話してあげてるんじゃないんだからね。ただ任務の間だけは話さないと私が困るから口聞いてあげてるだけなんだから、勘違いしないでよねっ」

 「お前──」


 少し、その目が潤んでるように見える。

 ──涙。

 理解した瞬間、原因にも思い当たる。感動、悲痛、屈辱、そのどれでもない涙の理由ワケ

 青華、お前──


 「さてはお前、目に氷入ったな?」

 「うっさい! 放っておきなさいよ!」


 「大分間が空きましたラジオ! メインパーソナリティはこの私!」

 「この私! じゃなくて名乗れよ。初自己紹介を代名詞だけで済ませようとしたのは君が初めてだよ」

 「芥川賞とかもらえますかね?」

 「芥川賞は難しいかなあ……」

 「では改めて、本作の主人公、霧島写です。皆さん、私、覚えてますか?」

 「全部に突っ込んでいると話が進まなくなることに気が付きました。ゲストの野沢です」

 「野沢、覚えてますか?」

 「失礼だな。そして呼び捨てにするな」

 「いやでも実際かなり久しぶりの登場ですよね。絶対覚えられてないですよ」

 「うぐっ」

 「もう自分がどんな感じに喋っていたかすら覚えていないんじゃないんですか?」

 「うぐっ」

 「ならもう少しちゃんと自己紹介無さった方がいいんじゃないですか?」

 「そ、そうか……。なら、えーと、特異高専教員、暮木鈴人たちの担任の野沢です。野沢先生と呼んでください」

 「先生呼びを強制とか図々しいですねえー」

 「さっきからだいぶ失礼だな。……っていうか大分間が空きましたラジオってなんだよ」

 「今そこ拾うんですか⁈」

 「あと主人公はお前じゃない。俺だ」

 「さて今回は何がありましたっけ」

 「クララが立った」

 「端的で素晴らしいですね。五十九点」

 「赤点じゃねえか」

 「まあ、今回はクララは立ったんですけども。あれですね、暮木君はテンション上げさせちゃいけないタイプですね。変態度が上がります」

 「あれには俺もドン引きだな。単位取り上げようかと思うレベルには引いたわ。後はメデスちゃん? も結構、影についての説明面倒くさがってる感もあるよな」

 「なんで真面目に振り返ってるんですか?」

 「暮木はいつもこんな世界で生きてるんだなあ」

 「遠い目をしてますねえ……。っとちょっと早いですが、先生は使いにくいという事でお開きになります」

 「えっ、ちょ……」

 「それでは皆さんここまでお読みいただいてありがとうございました! お相手は本作主人公、霧島写でした」

 「ゲストの野沢もでした!」

 「また来週あったらいいね!」


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