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017・前編─新設提唱

ケテ…タスケテ……


 「とにかく、青華達と合流しよう」


 場面を切り替えるためにそう話し出す。

 うんと頷くメデスを見るに賛同を得られたようだ。


 「日が沈む前に合流した方がいい。あれは闇が深くなるほどに行動範囲が広くなるし、強くなる」


 もう日没の時間も近いらしい。まだ十一時くらいなのに。

 この異常な時間の進みの速さもここがそもそも別空間──メデスの話だと別世界の一つの法則ルールなのだろう。

 十一時といえば集合時間を過ぎてしまっている。そもそもまだあそこにいるだろうか。今の俺をガン無視している状態の青華ならば羽重が来た時点で移動してしまいそうなものだ。


 「………………」


 ……流石に無いと信じたい。

 なるべく日の当たっている道を進む。

 メデスは──今は話しかけない方がよさそうだ。何かを考えこんで、ずっと俯いている。俺を先導しながら、器用なものだ。

 じゃあ俺はこの時間に小休憩を、なんて気を抜いても居られない。いつどこで影と出くわすか分からない今の状況じゃ、常に辺りを警戒していなければならない。そう考えるとメデスは俺を先導しながら辺りを警戒して、その上考え事をしているのだから、その辺は流石は人外といったところだろうか。人間技じゃねえ。


 しかし、このまま俺が戻って話をしようとしても青華は聞かない可能性がある。今回の任務中だけでも最低限の会話をしてもらえるようにしなきゃな……気が滅入るなあ。先生の教員室や、先輩の教室を訪ねて金の無心をするような気分。

 気まずいどころの話じゃない。

 よくよく考えてみると今回のメンバーは色々な部分で不安な要素が多すぎる。俺と青華は喧嘩中だし、青華と羽重は仲悪いし、羽重は意思の疎通が難しいし。まともな人間が俺しかいない。そもそも人間じゃないもいるし。アイスも消えるし。不安も問題も多すぎる。

 俺も不幸系主人公の仲間入りを果たしてしまうのか。


 それでいくと青華なんかはどこか問題の中心からは離れているように思える。この際メタに触れていってしまえば、出番が少ない。俺の話の中には多く出て来るも、実際の出番としては今回は羽重の方が多い気がする。何故か目立たない。今の所萌える要素が少ないからだろうか。

 彼女について俺が話すことは簡単だが、やはり、それではほとんど伝わることはないのだろう。

 その苛烈さも、華麗さも、可愛さも、儚さも、毒性も、攻撃性も、脆さも、強さも、第三者である俺の語りだけではその多くが伝わらないのだろう。

 直接見ない事には。


 まあ、それは後々本人が見せてくれるだろう。拙いながら俺もできるだけ伝える努力をしよう。

 何をおいても先ず今は青華に許して貰える方法だけを考えなければ。

 土下座じゃダメ。そもそもただの謝罪じゃダメ。詫びのお菓子もダメ。ならもう、指でも詰めようか──って前にも考えた気がする。青華が望むなら小指の一本くらいと考えてしまうあたり、俺も重症だな。

 小指の一本くらい。

 そう。青華の為ならなんだって、それこそ指だって詰める。

 自分でも分かるくらい重い。

 けれど、重くなければ青華とここまで付き合ってはこれなかったと思う。重い石は風に飛ばされたり、波に攫われたりしない。


 理不尽な目に遭うことは多々あるが、それらの仕打ちが時々見られる可愛い部分への照れ隠しだと思えば、そんなの萌えるだけじゃないか。凍羽青華ツンデレ説を提唱する。アレでそこまで俺のこと嫌いなワケじゃないと思うってのが俺の考えだ。


 さて、新たな学説を提唱したところで、もう現実逃避の時間も終わりに近い。もう先の方に二人の姿が見える。顔もしっかりと見える。二人の美少女の顔と、隣の美幼女の顔が。

 だから、ここからは現実の時間。

 いつまでも可憐な少女たちに見とれては居られないのだ。


 現実問題その一。

 前述の通り、今のメンバーでは意思の疎通その他が難しい。理由も前述である。


 現実問題その二(というかこれで最後だ。わざわざナンバリングなんていらなかった)。

 メデスの扱いについて。今後の影に対する対策を立てるにあたってメデスの知識は必要だ。そのメデスについて彼女たちに説明をするという事は則ち、例の王権戦争に少なからず巻き込んでしまう事を意味する。

 するしかないのだが、それでも心苦しい所がある。話を聞くだけでも危険しか感じられないようなもの──本来なら知る必要もない事だ。

 というか知らせたくない。何も聞かずに受け入れてはくれないだろうか。そうはなってくれない事が解っているからこうやって問題として提起しているわけだが。


 メデスを見やる。

 もう考え事は終わったのか、俯かずに前を向いて歩いていた。

 ……まだ少しだけ距離があるな。


 「メデス」

 「ん」


 ちょこんと首を傾げて目をくれる。

 可愛い。

 いやいや、そんなこと言ってる場合じゃない。


 「わかってるよ」

 「お?」


 メデスのゆびをふる。


 「事の説明は僕がやるし、アイスについても問い詰めるから──安心して」

 「なんも分かってねえじゃねえか……。あー、お前がそういうこと言うから、なに言おうとしたのか忘れたじゃん」

 「そういう心無い罪の擦り付けが誤認逮捕や冤罪を生んでいくんだろうね。嫌だ嫌だ、現代社会怖い」


 時代に置いて行かれた老人みたいな事いいやがって。

 なんだか色々馬鹿らしくなってくる。

 まあいいか。メデスに関しては神出鬼没の薔薇乙女とでも言っておくか。


 「メデスは星雲乙女ニーベル・メイデンの第一ドールだよ」

 「何っ⁈ 俺は知らぬ間にゼンマイを巻いてしまっていたのか⁈」

 「ぱしっ」


 はたかれた。

 そこまで再現しなくていいんだよ。


 「もしかして髪色とか変えられたりする?」

 「金髪にも赤いドレスも難しいかな。髪型はともかく」

 「ふーん」


 自由度が高いんだか低いんだか良く分からないな。

 そもそもが(分かりやすい)謎の多いメデスだが……本人が何も話してくれないんじゃどうしようもない。

 謎で思いついた。メデスの説明はやっぱり謎の美少女メデスちゃんでいこう。俺も何も分からないという設定でいけば大丈夫な気がする。事実、全く嘘というわけでもない。一緒に住んでるけど。住んでるどころか一心同体だけど。朝起きたら同衾してたりするけど。

 俺は何も知らない。

 これでいこう。

 

課題が……課題が……襲ってくるよぅ

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