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016─あなたは影で、私はだあれ

 「……お?」


 どうにも、同じような事というのは連続して起こりやすいらしい。

 この島が別世界だったり──唐突に人影を見つけたり。

 俺たちの目先。

 民家のブロック塀の影の中に人影を見つけた。

 第一村人発見である。

 肩幅的に男性と推定できるが……どうしよう。あれが幼い少女だったり、素敵なお姉さんとかなら話しかけられるんだけど、男だとどこか怖いというかなんというか。そもそもが人見知りなのだ。

 メデスを見る。

 メデスが見る。

 目だけで会話だ。

 その内容はただの押し付け合いだけれども。


 「あ、あのすいません」


 俺が圧の掛け合いで勝てるわけなかった。どうやら覇王の素質は持ちえないようだ。

 意を決して声をかける。影の中に居るので全貌がよく見えないが、振り返ってはもらえたように見える。


 「ちょっと聞きたい背骨が⁈」


 声をかけたが後ろからとてつもない衝撃を受けて倒れてしまう。メデスがイノシシさながらに突っ込んできた。

 直後、俺が何が起きたか理解しない間に倒れた俺たちの上を何かが超スピードで通過する。

 

 「……は?」


 黒い。黒い何かが直前まで俺が居た──俺の頭部があったであろう位置を貫いていた。

 いや、何か、じゃない。それが明確に何なのかというは説明ができる。

 腕だ。

 人の腕、である。

 影そのものを腕にしたような黒い腕。

 その出所は俺らの正面の人影。


 「逃げるよ!」


 メデスに引き上げられて、引っ張られて、その場を逃げ出す。

 走って曲がって飛んで伏せる。

 いや、つーか──


 「増えてないか⁈」


 腕が二本までなら分かる。でも三本四本と段々増えていくのだ。戦慄である。


 「ぃい?」


 少し振り返ってみる。

 増えていた。腕が阿修羅みたいになっていた。しかもそれが五人も六人もいる。やっぱり、顔は見えないが。

 いや、影の中に居るから見えないのだと思っていたが……違う。腕を見た時に気づくべきだったが、アレは恐らく全身がそうなのだろう。全身真っ黒で多分全身伸びるんじゃねえかな。

 伸びるし、全身真っ黒でいかにも犯人な感じでしかも増える──属性盛りすぎだろ。今の所うちのヒロインよりもキャラが立ってる。


 「飛んで!」

 「飛ぶ⁈」


 前を向く。

 眼下には数十段の階段が。

 いや、いやいやええ⁈

 怖っ!


 「せーのっ!」

 「いやー!」

 

 怖い! 眩しい、高い、怖い!

 メデスに抱えられて宙を舞う。

 たっぷり十数秒は舞った気がする。いつの間に抱かれたかは分からないが、そのままメデスは走り続けて──海岸まで来てしまった。

 いつの間にか影は居なくなっていた。


「はぁ、ふぅ……。なんだったんだあれ」

「最後は抱きかかえられてただけなのになんでそんなに息切れてるの?」

 「ちょっとな」


 興奮していただなんて言えない。


 「あれは影、だね」

 「影?」

 「見た目からのイメージとかじゃなくて、正真正銘、影だよ」

 「影って……確かにそんな見た目はしてたけどさ」

 「それかある意味では幽霊といってもいいかもしれない。僕の親戚みたいなものさ」

 「親戚が居るのか。星霊のお前に」

 「比喩だよ。あの影も霊力や星の力で形作られたものなんだ」

 「それで……親戚」

 「決定的に違うところは自我や理性の有無とか、そもそもの出自。僕が星の意思にとって正規の星霊だけど、影は違う。偶然やキチンとした手順を踏まずに作られたり……そういう非正規の星霊だね。もちろん僕みたいな正規の星霊の方が格も強さも上なんだけど」


 最期にしっかりとマウントを取ってくるメデス。


 「え、じゃあお前の腕も伸びるの?」

 「伸びないよ。僕はメデスという存在が固定化されてるからね。あっちはただの影だから存在が不定形だからね」


 メデスはぐにゃぐにゃしないのか。

 なぜだろう。どこか残念だと思ってる俺がいる。

 そろそろ自分が自分で心配になってくる。


 「まあ、元は生きていた人間だったっていうところは一緒かな」


 元は生きていた人間だった。

 というのはメデスもいつかの時代にはこの世界に生きていた一人の人間だったという事だ。

 想像つかないな。


 「そもそもあの影は、死んだ人間の魂の影なんだ。死んだ人間本人ではないから、自我も理性もない。存在としては人と影という概念の融合体だよ」


 そう話すメデスの表情はどこか暗く見えた。

許されよ。許されよ。私の罪を許されよ。

ラジオは気力が足りない。

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