015・前編─ガリガリとしたソーダ味の氷菓子
こうして静かに一人、落ち着いてものを考えるのは久しぶりな気がする。
尤も、メデスがいるため厳密には一人とはいい難いが、彼女に関しては最早一心同体も同然なので特に問題はない。なにせ、俺の体の隅々どころか魂までも知られている間柄だ。
この不思議島に来る前からもそうではあったが、上陸してからは特に青華の無視による俺への精神ダメージが増大してきている事に気づいた人もいたのではないだろうか。俺の発言に対する無視が酷くなってきている。最低限の会話もしてくれない。
一昨日に青華の机に手紙と大量のエクレアを置いて機嫌を取ってから謝罪に移ろうという大変素晴らしい作戦──オペレーション・Eを行ったのだが、結果は惨敗。エクレアと狛人の財布の中身(もちろん借りただけだ。返済期日は未定)とエクレアだけが消える結果となった。
一切の関係改善を行う事が出来ずにここにきてしまったわけだ。
罵倒暴言よりも無視の方がキツイ。しまいにゃ死ぬぞ。コレ。いや、流石にそんなことはしないけれど。
まあ。
まあまあまあ。
しかし。しかしだよ? 流石の青華とも言えどその辺のストーカーなんて目じゃないレベルで付きまとわれたらどんな形でも反応するだろう。
そのついでにパンツの色とかもリサーチしてしまうかもしれないが……、まあ気にすることでもないだろう。それが暮木鈴人の、いやさ、男の習性だ。
悲しいな……。
と、こんな下らない事を考えてる場合じゃなかった。もっと真剣に仲直りの方法を考えなければ。
単純に謝罪しても取り合ってもらえない。さらにはそもそも謝罪をしようとしても一言発した瞬間には俺の後ろにいる。さながら修行直後の孫悟空の戦闘のように。
それはもう逆に無視できていないのではないかというような行動もちらほら。
なんだかんだで甘い青華ではあるが。
いくら俺がこうやって言い訳を並べたところで何も変わらない事くらい分かってる。ただ俺がヘタれているだけの事くらい分かってる。
最初はあれだけシリアス醸し出していたのに後からはコメディ、なんて事は無い。シリアス続行だ。
だからこうやって色々集落を見回りしながら関係改善の方法を考えている訳なのだ。何も思いつかないが。
難しく考えすぎなのかもしれない。
話を整理しよう。
先日、青華をある行動によって怒らせてしまった。ある種、裏切りとも言える行動だっらことがその要因である。
凍羽青華を裏切る事。
それはもともといい意味では使われることのないその言葉では表しきれないほどの重みをもつ。友達とゲーム内で手を組んで裏切る、なんて軽いものでは到底ない。
あの小さな体でその身に受けた嫉妬も、蔑みも、憎悪も、嫌悪も、敵意も、害意も、全部纏めて背負って飲み込んだ少女──心が強い。気にしない。踏みつぶす。傲岸不遜なイメージが強い彼女ではあるが。それでも、一人の女の子。一人間だ。何も思わない訳なんてない。何も感じない筈もない。傷付くし、悲しむんだよ。
かつての彼女は誰とでも仲良くできる純粋な女の子だった、と話に聞いた。
真偽こそ今となっては不明だが、それが今の性格に変わったのは、一種の自己防衛なのだろう。そう俺は思っている。
実を言うと、そうせざる得なくなってしまったことに対して、俺もいくらかの責任を感じている。俺と出会ってから、なのだ。今の彼女の性格が完成したのは。その原因の場にも居合わせた。
まあ、話すと長くなってしまうからまた今度として。
なんだっけ……? そうだ、話を整理するんだったか。
つまりは、かなりまずいことをやっちまったから詫び入れようって事だ。エンコとかそういうことはしないのでご安心いただきたい(決して流血沙汰にならないという保証ではない)。
しかしもう俺としては万策尽きた感じなんだよなー。今の、にわかヤンデレ式ストーカー作戦を続行するしかないよなー。
(え、キモ)
酷い言葉は何も聞こえない。脳内に直接響いてても何も聞こえない。もう歌も聞こえない。
とは言え、本当に何も聞こえないんじゃあ話にならないが。波の音くらいは聞こえるとも。
時刻は午前九時三十分。日も高くなって随分暑くなってきた。
どこかに冷たい水を出したりしてくれる人はいないだろうか。
「なあメデス」
「さっきまで一人でいることに対してなにやら思いを馳せていたようだけど、もういいのかい?」
「ふっ、お前だけは……特別なんだ」
「水を出すのはいいけど、やめておいた方がいいよ」
「やめておいた方がいい?」
「僕の出す水ってつまりは僕の霊力から生成されるわけなんだけど、それってつまり──僕の体液という事のになるんだよね」
「なるほど?」
「僕の体自体が霊力とその他の混合物なわけだけど、それってつまり霊力そのものが僕なんだよ」
「え、いいよ」
「説明した上でそれって……」
「ロリの体液とか、ゴクリ」
「所で君の鞄の中にアイスが入っていたと思うけど」
「ん? ああそういえば……」
鞄の中に更に保冷バッグが入っててその中に更にアイスが入っている。ソーダ味の当たりが付いてるかもしれないガリガリとした氷菓子が。
「弓良が狛人に買わせてあったのをパクってきたんだよなぁ……ん? あれ」
あれ。
ライトグリーンにアイスクリームの絵が描いてある保冷バッグを開ければ口のでかい坊主頭が出迎えてくれるはずだったのだが、そういう手筈だったのだが。
隣でメデスもあらあらというような反応をしている。
今度こそ端的に言えば。
アイスが食べられていた。
前回の放送におきまして、電波に乗せるにはあまりにも問題のある放送事故が発生したため今週の放送はお休みとさせていただきます。
是非に来週の放送をご期待ください。
※ラジオのタイトルや質問を大募集しています。




