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013・後編─これは……ギャグパート⁈

 そんな俺に一瞥もくれずにガン無視の彼女もどうかと俺は思うけれども。


 「ええ、こんにちは凍羽さん。どうぞお掛けになってください。来ていただいておいて申し訳ないのですが、まだ全員揃っていないのでもう少しだけお待ちください」

 「はい、では失礼して」

 「………………」


 ダメだ。笑っちゃダメだ……! ここで笑ったらもう笑い止む気がしない……!


 「──それで、凍羽さん。全員が揃うまで時間があるという事で暮木君と一つ雑談をしていたのですが、凍羽さんも何か面白いお話を聞かせてはくれませんか?」


 おっと。

 なんてことだ。

 俺以上に友達もいない青華にそんな『面白い話』なんてあるはずもない。

 あったとしてもそれは──


 「そうですね……、あまり面白い話ではないんですけど、私が中学生の時に友人と喧嘩してしばらく口を聞かなかったことがあったのですけれど──」


 俺と同じ話だろう。

 そりゃそうだ。

 中学時代。青華に俺以外にまともに関わっていた人間なんて彼女の家族とうちの家族くらいのものである。

 中学を卒業し、一つ上の学校に上がったばかりの今の時期に話題なんて出そうとしても中学時代かそれ以前の話になってしまう。

 その頃の話題なんて、当時青華以外に友人と呼べるような人間が他に居なかった俺と、ほとんど被ってしまうようなことだって、そりゃあ、あるだろう。

 個人的には校長(自称)に有料とした話をされないかの方が心配だったが。

 つーか、青華は自称校長の容姿やらなにやらに一切のツッコミを入れなかったな。

 自分も似たようなものだからだろうか。


 「ひと月くらいでしょうか。ある日あるメッセージが送られてきて思わず沈黙を断ってしまったんです」

 「なんと、送られてきたんですか?」

 「──『今日は味噌汁が濃い目だったから中吉記念日』」 


 けど、なんだろう。

 視点が違うだけで俺と全く同じ話をしている筈なのに青華の話の方が面白く聞こえる。

 なんだろうかこの敗北感は。


 「フフフ、なんですかそれは」

 「おかしいですよね。私も分からなくてつい返信しちゃったのです」

 「ええ、とても面白いお話でした……、ああ、丁度お茶とお茶請けが来ましたね。どうぞ召し上がってください」

 「ええ、いただきます」


 いつもの黒服が銀の盆にティーポットやカップなんかを乗せて持ってくる。俺の時は無かっただろ。何故かずっと睨んでくるし。

 睨み返してやれ。

 しかし……。

 先程のノックや普段の行動、言動からは考えられないほどにお淑やかなその所作に正直この今の雰囲気をぶち壊してやりたくなる。

 「ポポポポーン!」とか叫んでやろうか。

 この二人、猫どころかレオポン被ってやがる。

 普段なら絶対あんな笑い方しねえもん。手を口元に持って行ったりしねえもん。


 「オホホホホホホ」

 「ウフフフフフフ」


 気持ち悪いなあ。

 どうすんだよこの空気。

 俺はいつ起き上がったらいいんだよ。

 あ、でもここからなら青華のスカートの中が見える気がする。

 匍匐移動。匍匐移動。匍匐移動。

 見え、見え見え見え──ねえ!

 なぞの暗黒空間に邪魔されて見えねえ! ス〇エニの映像技術がこんなところに。


 「──どうやら来たようですね」


 ノックノック。

 さて、筋太郎の話ならもう一人呼ばれてるのは羽重って話だけど。

 いや、溜めなくていいや。羽重だ。

 入って来たのは紛れもなく羽重千鳥。

 違うところなんて一つもない。

 違うところはないけれど、おかしなところはあった。

 まずは持ち物。

 刀腰に差して校長室に入ってくる学生とかありえないだろ。

 次に視線。

 ただ一直線に青華に向けられている。

 最期にその手が腰の刀に掛けられていること。

 ここまで言えば詳しい描写なんて必要ないだろう。

 つまり──羽重が青華に切りかかった。

 簡潔過ぎてノーベル賞ものだ(もう色々頭がおかしくなってきてる)。


 「って! やってる場合かあ!」


 少なくともやってる場合では無かった。

 跳び上がり、青華と羽重との間に入る。目をしっかりとかっ開いて、真剣白刃取り。

 これが今ギャグパートじゃ無かったら恐らく最低でも手のひらが切れたりしていただろう。

 ギャグパート以外での怪我とムービー銃はダメだとあれほど……。


 「まったく、物騒ですね。いきなり友人に切りかかるなんて。元気が有り余ってるようで大変結構」

 「そんな事言ってんだったら取り合えず助けてくれよ……。羽重もコレ収めてくれ」

 「………………」


 静かに、その手を引いてくれる羽重。澄んだその瞳には一切の邪気も淀みも見られない。

 刀を収めた羽重を校長はソファーに座るように促す。促されて無いけど俺も座る。


 「では、皆さんお揃いになりましたので、早速お話させていただきますね。お茶とお茶請けはどうぞご自由に召し上がり下さい」

「さあ始まりました。思い付きで始まってしまったこのラジオ企画。タイトルは──そのうち募集しましょう。担当するのは特異高専新聞部のエース記者にしてこの作品の裏ヒロイン、霧島写きりしまうつしです。そして本日、記念すべき初のゲストは捲ったスカートとその裏で流した涙は数知れず。ビンタされ師・暮木鈴人くれきすずとさんです!」

 「──はい、ただいまご紹介にあずかりました暮木鈴人です、って俺の紹介酷過ぎんだろ! そんなにスカート捲ったことねえよ! そしてお前は裏でも表でもヒロインじゃねえよ!」

 「まあそれでも捲ったことはあるんですよね?」

 「いやあ、それにしても気持ち悪かったなあ」

 「気持ち悪かったですねえ」

 「人間の二面性の深淵を覗いたっていうかさ、人ってあんなに外向きに性格変えられるんだなあ」

 「ええと、何でしたっけ、レオポン被ってるんでしたっけ? わっかりにくいですねえ、何ですか? レオポンって」

 「知らない」

 「知らないで使ってたんですか、哀れで無様でゴミクズみたいですね」

 「すっげえボロクソ言うじゃん……」

 「因みにレオポンはヒョウの父親とライオンの母親から生まれた雑種のことらしいです」

 「知ってんのかよ」

 「いえ、そこのカンペにそう書いてあるので」

 「もしそうだとしてもそれは言っちゃいけなことなんじゃないのか?」

 「あっ、そろそろお別れの時間のようですね!」

 「ガン無視かよ……今回俺必要だったか?」

 「何を言いますか、暮木君のツッコミあってこそですとも」

 「そうかあ?」

 「そうですとも!」

 「そうか、そうだよなあ! あっはっは!」

 「ではでは! 最期までお読みくださりありがとうございました! お相手は、この作品の真ヒロイン・霧島写と」

 「特技は透けブラを即座に発見すること、暮木鈴人でした」


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