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008・中編─不覚

 「言い訳を聞こうじゃないか、メデス三等兵」

 「言い訳の余地もなくごめんなさい」


 ノータイム即答のメデス。

 そりゃそうだ。そりゃそうすぎる。そうでなかったらなんだという話である。

 与太話。

 夜もすっかり遅い時間なのか俺とメデスが発する音以外は何も聞こえない。ここには俺とゴスロリ美少女(驚)しかいない。

 馬鹿な。なぜ俺は縛られているんだ。これじゃあ舐められないじゃないか! 舐め回すことができないじゃないか! 暮木鈴人、一生の不覚である。


 「いや、そんなことを一生の不覚にされてもねえ」

 「おや」

 「そもそも、人生の先輩として言わせてもらうけれど、一生ものの不覚なんてそれこそ、一生に一度のものだよ。一概にそう、とも言い切れないけれど、それでも一生の不覚と言うものには必ず──」


 命、あるいは人生が賭かっているものさ。

 と、メデスはそう言った。わざとらしく微笑みをたたえて、そう言った。

 一生の不覚。取り返しのつかない失敗を指すその言葉には確かに、命や人生、それらに類する重いものが賭けられているのかもしれない。どうしようもなく、一度失敗すれば元には戻らない。

 だからこそ一生に残る失敗なのだから。


 「……まあ、一生の不覚ではないにしろ、不覚ではあるわけだ。俺は今、失敗したんだよ」

 「やめて、そんな話聞きたくない。君が僕を舐め回せないから失敗だなんて話聞きたくない」

 「この俺が不覚をとるなんて……一体誰がこんなことを!」

 「なんで泣いてるの……」


 恨みの涙である。

 血涙。

 本当に誰が何の為にこんなことをしたのだろうか──


 「ん?」


 一体誰が、と考えたところで何かが頭の中で引っ掛かった。

 何だ? なにが引っ掛かった?

 今の所、疑問に思ってばかりだな。


 「あ、俺今、拉致監禁の上拘束されてんじゃん!」


 そうだ、すっかり忘れてた。

 いや、別に拘束されていることを忘れていたわけでは無いけれど(むしろ、拘束されている事が一生ものの失態になるところだったのだ)、状態と言うか、状況を忘れていた。

 重要なのは拉致監禁の拉致。

 拉致。

 誘拐されたのである。

 つまりは俺を誘拐した何者かがいるという事であり──その何者かが近くにいる可能性、危険性もあるという事だ。


 「おいメデス──」

 「ん? 今周囲に特に気配はないよ」

 「そうなのか?」

 「もちろん。おじいちゃんを信じなさい……あっ」

 「どうした、おばあちゃん」

 「おばあちゃんって言わないで、じゃなくて」

 「あれ? おい、おーい!」


 何か意味深な発言を残しておばあちゃんは急に消えてしまった。俺の中に戻ったのだろうが……。


 (メデス! メデス! メデ────ス!)


 「ダメだ、通じない」


 無視してやがる。急に出てきて(俺が呼び出したが、メデスが勝手に出てきたのだ。俺は、悪くない)、急に戻っていきやがった。

 なにがおばあちゃんだ。もう少し老獪さを見せろ。

 その後も大声でメデスを呼び続けたが結局もう出てくることはなかった。寝たのだろうか? あの状況で?

 老獪さは無くともおばあちゃんだったという事か。


 「……まあ、メデスに頼りっきりなのも悪いしな」


 と、そのとき。

 まるで俺の呟きに合わせたかのように、音が聞こえ始めた。

寮へのパソコンの持ち込みがグレーゾーン。

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