003・中編─回想其の貳
「ほっ、と」
床にひれ伏した状態から体を起こす(ちなみにこの位置からだとパンツは見えなかった)。
「んじゃあちょっくら行って来るか」
「んー、いってらしゃーい」
と、三つ目のエクレアを頬張りながら見送る青華の言葉を受けながら廊下に出た。
むぐう! という青華の叫び声が後ろから聞こえてきたが聞こえなかったことにする。誰かが水を与えてくれると信じながら。
──教室を出てから五分も歩けば校長室の前に到着した。
五分も歩かなきゃ着かないってどういうことなんだよ。広すぎんだろ。
しっかし……
「でけえなあ……」
一体何メートルの巨体が通る事を想定しているのか。
校長は化物なのか。
女子小学生はいないのか……俺、女子小学生とお話できると思ってきたのに……。
……ここで落ち込んでいても仕方ない。とりあえず中を覗いてみるか(⁈)。
こっそりと、ひっそりと、むっつりと、女子小学生が居る事を願って扉を少し開けて中の様子を見る。
一瞬のうちに目に入った光景に思わず二度見どころか四度見位してしまったが、それも仕方ないだろう。
中に広がっていたのは目も眩む純白の空間。清らかな水の音と植物の緑に彩られた白い部屋。
うわあ、あのソファーとか絶対高いやつだ。俺みたいな庶民には一生縁のなさそうな世界だ。机も大理石だし。
こんな中に入ったりしたら高級感の光に滅されて消えたりしないだろうか。
それはそれで心地よく消える事ができそうではあるが。
もういっそのこと、このまま入らずに帰ろうかと思い始めたその時、急に目の前の扉が勢いよく開かれた。
当然、その扉に体重をかける形で覗いていた俺は前のめりに倒れる事になった。
「ぃってえ!」
俺は何度痛い目に遭えばいいんだ!
と、悲鳴にも似た感想も言わせてもらえぬまま──
「は、ちょ、ま」
両サイドから飛び込んできたガチムチで筋肉モリモリマッチョマンたちになす術無く拘束された。
うわ、何この筋肉の塊共! 体が健康的に日焼けしてらっしゃる!
「うわうわうわうわ! 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!」
SPか⁈ これが噂のSPってやつなのか⁈ 俺はボディーガード的な人たちに拘束されたのか⁈ 俺は何も怪しいことはやっていないはずなのに!
ガチャリ、と重苦しくも軽やかな金属音と共に俺の四肢──両腕、両足首──に何かを付けられる感覚。その後、三人いた筋肉の内、二人がうつ伏せの形になっていた俺の上から退いていく。
(チャンスだ──!)
上の俺を押さえつけている筋肉を吹き飛ばそうと掴まれた腕に霊力を集める。
が、
「あ、あれ」
腕に集めた霊力が集まった途端に霧散した。
別の部位にも霊力を集めるもやはりそちらも霧散してしまう。
……俺はこの現象を知っている。文字通り身をもって知っている。
数日前の襲撃事件の襲撃犯の一人。爆発を起こす能力を持つウルスという男が持っていた武器も同じ現象起こしていた。
(つまりこれは同じ素材でできてるって事かっ?)
もはや拘束から抜け出す事を諦めて状況把握に努める。こんな時、あの頭のいい平坂あたりなら簡単に今がどういった状況にあるのか分かるのかもしれないが、残念ながら頭の出来が悪い俺では皆目見当もつかない。
呼び出されて校長室に言ったら、急にガチムチのおっさん共に拘束されておまけに変なアクセサリーまでつけられた……もう後半から訳分かんねえよ。
しかし、そんなことを言っても何かが変わるわけではない。かといってどうして今このような状況に陥っているか分からない俺に何かができるわけではないが。
俺が完全に大人しくなると若干拘束と力が緩められる。
いやあ、結構苦しいし、痛いし、重いし。拘束とか緊縛とかは俺の趣味には合わなかったようだ。
俺の小さなうめき声を最後に部屋が小さな静寂に包まれる。
時間にして数秒。永遠に続くとも思われた沈黙の時間は、果たして、簡単に壊された。
「うん。今の私の状態じゃ人を見下ろすという状況もなかなかないけど、これはこれで嫌いじゃない。むしろ好きだよ、私」
校長室の奥にある机(これは大理石では無く木製。やっぱり白いが)の奥。いかにも偉そうな人が座っていそうな椅子に腰かけたままその人は言った。
その人は、と言うか有り体に言って幼女だった。
小学生くらいの幼女があらわれた。
前の話から呼んでみると放送の時と口調があの一言だけでも違う感じでしたけど、それは仕様です。
さあ、「おもしろ……かった……?」や、「ロリっ娘ktkr」などと思っていただけましたら、ブクマ、ポイント評価よろしくお願いします。




