001─凍羽青華と羽重千鳥
さ、い、か、い、だああああああ!
凍羽青華と羽重千鳥は所謂、幼馴染、と言うやつである。
そして、犬猿の仲、である。
有り体に言って仲が悪い。
片方がああ言えばもう片方はこう言う。
お互いがお互いを常に牽制し合っている。
しかし、それでもお互いに実は相手が嫌いではない。
むしろ、相手の事を無意識にでも認めているからそれだけ仲が悪くなれるのだ。相手を認めなければ喧嘩など起こりようもないのだから。
その二人の間にはある種の友情さえあるだろう。
お互いに憎からず思ってる。
炎の『紅榴』、土の『琥珀』、氷の『凍羽』、重の『羽重』、風の『風脚』、水の『水脚』から成る六名家。そのうちの『凍羽』と『羽重』の令嬢である二人には幼馴染と言うだけあって、幼い頃からの面識、幼い頃からの関係があり、幼い頃に確執を作る出来事があったらしい。幼い頃にできた確執だからこそ今の間柄なのだろう。
お互いによく知っているから、譲れないものがある。
凍羽青華。
かつて、世界に、人間に、己の周りに、そして己に絶望し、自ら心を凍らせた少女。
人の醜さを知り、美しさを知り、弱さを知り、そして誰よりも強さを知っている。
だからこそ彼女は、何もかもを背負って生きていける。何もかもを背負って生きている。その小さな体には大き過ぎる程の重荷を、苦しい顔一つせず、弱音一つ吐かず、背負って。
それがいつか、破綻すると知っていても。
誰よりも優しく、誰よりも強い。
だからこそ誰よりも強情で、誰よりも脆い。
切っ掛けさえあれば、悪にも善にも染まってしまう。
どちらにでも堕ちてしまう。
危うく、幼い。
白くない、あるいは、黒くない。
何にでも染まってしまうし、何にも染まることができない。
白くない。
黒くない。
赤くない。
青くない。
白くて、黒くて、赤くて、青い。
なんでもできて、なんにもできない。
それでも、確固とした強さを持った少女。
羽重千鳥。
なによりも正しさを重んじ、悪を許さない。弱きを助け、強きを挫く。どこまでも白い少女。
白くて、白くて、眼が眩むほどに眩しい。
どこまでも正しい。
どこまでも白い。
白以外の何者でもない。
白以外の何色にもなれない。
白いからこそ『正義』を掲げる事を許されている。
その精神性には、黒さも無ければ裏も無い。裏がないという事は、表しかない。
いや、裏が無ければ表は存在しない。表裏が一体だと言うのなら、片方が無ければもう片方は成立できないのだから。
感情を表すことがない。
それはもはや、人ではなく機械のようにも見える。
心はある、感情もある。なにせ彼女は前に青華が嫌いだと言ったのだ。心も感情もあるのだろう。それでも、感情など無いように感じてしまう。
あの、窮屈な正義についてもそう。
青華が言うには、あの子の言う正義には、あの子の正義は存在しない。あるのは親に刷り込まれた作り物の正義だけよ、ということらしい。
作り物のよう、とも言っていた。
親からの教えというのは子供の人格形成に大きく影響する──あの無表情も、抑揚のない声も、感情に揺れる事のない瞳も、全て周りの環境によって作られたのだ。
親に押し付けられた正義は、子供の人格を人として破綻させる程に重かったのだろう。それで、唯一と言ってもいい程希少な、感情を表せる相手が犬猿の仲というのは、彼女が不運だったと言うしかない……むしろ犬猿の仲だからこそ、なのかもしれないが。
重さに潰されてしまったが故に同じように重さを背負っているはずの青華に感情を表せるのだろう。
自分は潰れてしまったのに、青華は潰れていないから。
彼女は重さに耐えきれなかったから。
彼女は正義によって潰されたのだ。
正しさに潰された少女。
それこそが、羽重千鳥という一人の人間を表すに相応しい言葉だろう。
もちろん、俺程度の頭で思いつく最適というのがこれであって、本当に相応しいかは、分からないが。
ある二人の対立はその周囲の人間関係にも影響を与える──最も近い位置から順番に。その関係を強くしたり、逆に破滅させたりして、人間関係を掻きまわしていく。
凍羽青華と羽重千鳥の対立でも例外ではない。例えば俺──暮木鈴人もその影響を受けた。いや、別に誰かと仲が悪くなったり良くなったりしたわけじゃない。それに関しては元の鞘に収まった、あるいは、関係が増えた、だけである。
それでも、ただ、言えることは──その影響を受けるのは周囲だけじゃなく、対立している本人達もまた、その例に漏れないという事である。
ひぐらしのなく頃にが録画できていなくて朝から放心しました。面白いですよね、ひぐらし。かっこいいですよね圭一。皆殺し編での、町会の説得と鬼婆の説得。めちゃくちゃかっこよかった!




