021・中編其の二―常人? 超人? 鉄人!
先日、投稿するお話を間違えていたことをご指摘くださった方、本当にありがとうございました。
爆発。
そうか、これがこいつの能力——!
今思えば確かにおかしかった。ウルスが棒を出した時も、変形させた時も、一切霊力も粒子も発生していなかった。
妹が土系統だから騙されてた。
つまりこいつの能力は、武器を作る事じゃなくて——爆発を起こす事だったのか!
(避けられない!)
かつて感じたことがない程の高温が俺の全身を包み込み、直後、爆風により後ろへ吹き飛ばされていた。
「があああああ!」
「ヒハッ、ヒャハハハハハ! いイ声で鳴けエ!」
背中から強く地面に叩きつけられ、肺から一気に空気を吐き出してしまう。口の中も……少し切ったな。血の味がする。
以外にも、幸いにもダメージは少ない。制服のなぜかブレザーの下半分ぐらいがボロボロになって消え去っているくらいだ。
立ち上がって口の中の血を吐き出す。
「……ふう」
落ち着こう。
今、憤慨して突っ込んでもまた爆発に包まれて返り討ちだ。今の感じだと、爆発の熱によるダメージはあまりないが爆風には簡単に飛ばされてしまう。
どうしようか、なんて考える暇は無いらしい。
ウルスが余裕の笑みを浮かべながら近づいてくる。
「ハハッ、ぼろぼろだなア。今ならまだギブアップしたっていいんだぜエ? 能力使う分霊力が無駄になっちまうからな」
「……ハッ、お前こそ降参するんなら今のうちだぜ。俺の怒りと勇気に火傷すんぞ」
「ほざけ、火傷すんのはテメエだけだ……よオっ!」
再び爆発。
横に跳んでそれを回避する。
正面からの攻撃を何度も食らうほど、俺も馬鹿じゃあない。見た感じ、あの爆発はあいつの上げた腕、手の平が起点になっているようだ。そして、爆発させるのに少しの溜めがある。
なら、狙うのは爆発の直後。
つまり——
「今だ!」
爆炎の真横すれすれを走り過ぎ、ウルスに向かって霊力を噴出させて飛び込む。
拳の内も外も防護した完全大勢だ。さっきと違って、殴るのにも霊力を大量に込める。
男の時は連打の為に一回一回の霊力のチャージ量はかなり少ないものだったが、今回は違う。正真正銘。今の俺の全力。かなりのダメージを負ってしまってはいるが、人一人をぶっ飛ばすくらいだったら──できる。
懸念事項はウルスが常人ならぬ超人であることだ。と言うかこれに耐えられたら超人と言うよりは鉄人である。
「なっ」
「あああああああああらあ!」
手ごたえあり。間違いなくウルスの悪人面を捉えた。
そして、その手ごたえの通り、ウルスは後方に電車ばりの速さで吹き飛ばされていった。これで耐えていたら、本当に超人どころじゃねえ。
先程の爆風と今の衝撃で上がった土煙が晴れる。
果たしてそこでは、一人の青年が立ち上がろうとしていた。
「嘘だろ……」
思わず口に出す。
普通なら死んでしまったっておかしくない攻撃だった。それが気絶はおろか立ち上がってくるなんて。
「鉄人かよ」
ここまでくると、ロボットやら機械やら、そのあたりの方がしっくりくる。
まあ、まっとうな人間ではないのだろうけど。何かしらの強化を受けているのだろう。
ありえない話ではない。
過去の特異犯罪の事例にも謎の薬や、改造手術、人体実験などによってありえない強度や身体能力をもった犯人がいたらしい。
立ち上がったウルスは、先程の攻撃で口内を切ったりしたのだろう。口から血を吐き出した。
「ア˝ア˝ア゛、てめえ、よくも……! 殺す、絶対に殺す!」
余裕の笑みや不敵な笑みは消えていた。そこに有ったのは純粋な殺意。
「いいやア、簡単には殺さねエ。体の骨を何本もへし折って、切り裂いて、砕いて、つま先まで恐怖と苦痛を味あわせてからぶっ殺してやる!」
「それはご免被るな」
痛いのは嫌いなんだ、と俺。
こんな風に言ってはみるが、内心余裕はない。ただの強がりだ。お茶目に見栄を張ってみる。
爆発と謎の武器。あれがあるせいで迂闊に近づけない。
「……ん? あれなんだ?」
「ア?」
俺がウルスの後ろ側を指さす。
まあ、何もない、ただのブラフなんだが。それでも、こういった真剣勝負の場合では以外にも効果的だったりする。前にも青華を捲いた時にも使った手だ。
作れるのはほんの少しの隙。
だが、それで充分。
それでも余るくらいだ。
いつもならこうはいかないが、今は切羽詰まったギリギリの状態。突っ込むのにも全力の力を込める。出し惜しみなんかしている余裕は無いのである。
霊力を固めて殴り飛ばすのでは間に合わない。遠距離攻撃より、近接攻撃の方が速いし強い。
一気に距離が詰まる。
「——っ!」
驚いた——のは俺の方だった。
息をするのも苦しい状態で息を呑んだ。
後ろを向いているウルスの腕がこちらに向いていたのだ。
チイッ、青華のようにはいかないか……!
オレンジ色の粒子が収縮する。
ダメだ、避けられない。この勢いじゃ方向も変えられない。
「くっ」
せめて防御くらいは!
攻撃用に霊力を溜めていた腕で防御の構えをとる。
ドッ、と強い衝撃が体を襲う。
ダメージは少なくても勢いや衝撃は消せない。
「また距離を取られんのは面倒だからなア……ヲイ!」
爆発に飲み込まれた、が、吹き飛びはしなかった。いや、吹き飛ばされなかった、のだ。
作為的に、故意的に。
「そオら、まずはそのうざってエ脚からぶっ潰してやる」
ウルスが棒を振り上げ、振り下ろす——と同時に、乾いた轟音が二人しかいなかったはずの校庭に響いた。
甲高い金属音と共にウルスの〝武器〟が弾き飛ばされる。
そして歩いてくる一つの影。
「まったく、私一人の為だけにこんなことして——」
聞き慣れた可愛らしい高い声。
俺とウルスの間に青い氷の壁が展開される。
「——ホントに、バカなんだから」
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