020−一面記事
生徒会長に時間がないとか、ゆっくりしていて青華に何かあったらどうすんだ、とか色々言った俺は絶賛(だからやっぱり絶賛はされて無い)歩いている。
……仕方ないじゃん。かっこつけたかったんだもん。地の文で。
まあ、俺が歩いて行くのは走っているとき走ることについてに考えていたからという以外にも俺が行くまでは少なくとも殺されることは無いだろうという考えもあっての事だった。
殺して、居るか居ないかはぐらかす、という手もあるが、校庭に殺した後に死体を隠す場所なんて無いからそうされる可能性は低いだろう。
他にも冷静になって対策を立てるという目的もある。作戦も何も、相手の特徴も能力も外見も知らないんでは突っ込んでぶっ飛ばすしか作戦の立てようがないが。
若干焦るように歩調が速くなった所でそこでもやはり、知り合いに遭遇した。
というか霧島だ。
こっちも俺を探していたのか、俺を見つけるなり直ぐに駆け寄ってきた。
「暮木君! 大変ですっ! 凍羽さんが攫われてしまいました!」
「知ってるよ」
「知ってる⁈ なら何でそんなにゆっくりしてるんですか⁈」
「なんで、と言われてもなあ」
かっこつけてるだけ、なんて流石に恥ずかしい。
しかしまあ、息切れしてるのにキレのいいツッコミだ。これは一緒に芸人を目指すしかないのでは。
俺がボケ。
「それより止まって話している時間は無いから、歩きながら話そうぜ」
「歩いて行く余裕はあるのですか……?」
とりあえず、ここに至るまでの事の顛末を霧島に話した。
「いやあ、馬鹿ですね暮木君」
「酷い! 味方にも敵が居る!」
傷ついた! しかも霧島に言われるとなぜかすごく悲しい!くそう、この傷をどうしてくれるんだ。癒やしてくれるんだろうな。
と、さすがにこんな茶番をしている暇は無いか。
「そんな事より、霧島。お前何か敵の情報持ってないか」
「はい、モテますよ」
「なに? モテるのか? ってだから茶番はやってる暇は無いんだっての。もう直ぐ校庭に着いちゃうぞ。雑談して終わっちゃうぞ。ここ、お前から敵の情報を得る為だけに書かれているんだぞ」
「本当ですか⁈」
本当だ。
後は霧島と会話させたかったらしい。
本当に関係ない事だが、後半になるほどメタ的な発言が多くなってきてやしないか?
「ショックです……。まさかこの真のメインヒロインたる私が情報を得る為だけの都合のいい女扱いだなんて……」
「いや、メインヒロインはお前じゃねえし」
メインヒロインが誰とは別に言わないけれど。お前じゃないとだけは言っておく(多分)。
「お前なんて精々女子生徒Dだ」
「私出てくるのも稀なキャラだったのですかっ!」
なんて、やっぱり雑談茶番に話が変わってしまうのはなぜだろうか。
どうしよう。霧島が相手だとついボケてしまう! 霧島が新聞部だから、ツッコミやボケの引き出しが多いからだろうか(新聞部が理由になるかは現在調査中)。
「そんな事より情報をくれよ。青華を連れて行ったのはどんなやつだった? 人数は? 能力は? 見た目は?」
「ああ、ああ、待ってください。写真出しますから」
「写真?」
写真なんてどうやって。首から下げてるカメラで撮ったって現像してる時間なんて無かったはず……。
「あれ、言ってませんでしたっけ。私の能力、記憶したイメージを紙に写す事なんですよ。っと、はい、これです」
「へえ、そんなことができたのか。便利だな」
受け取った写真には霧島の水着姿が。
赤い水着にオレンジのパレオ。短いショートカットを後ろに小さくまとめ、やけに扇情的なポーズをとっている。
「……おおっ」
いや、いいんだよ? 霧島って普通にかわいいし。以外に胸あるし。
けど、今の状況でこれはさあ。どうなんですかね。
「あ、間違えた」
と、小声でつぶやき顔を赤くする霧島。
とりあえずポケットに写真をしまって文句を言おう。
「おい、霧島。写真が違うようなんだが」
「違うと言いながら写真をしまうのをやめてください! それ私の水着写真でしょう?! 返してください!」
……そもそもなんで自分の水着写真を持っているのかそろそろツッコんでいいだろうか。
するまいと思っていたけど、むう、返せというなら仕方ない。くっくっく、後悔するんだな、霧島。
「水着? 写真? なんの事か分からないな。もしそんなものが有ったらお前は自分の水着写真を持ち歩いている奴という事になるが……」
「むむっ! 言ってはいけないところを」
やってくれたなとばかりに恨みがましい目を向けてくる。
「仕方ないですね。ちょっと待ってください、今写真を出しますから」
そういって仕切り直す霧島。
霧島の 水着写真を 手に入れた、だ。
霧島はごそごそとポーチの中を探っている。……やけに深くまで手を入れて探っているが、明らかにポーチの容積に収まっていない。
どうなってんだ、その中。
「ありました、これです。これ」
「本当だろうな。実は今度は一糸纏わぬ素敵な姿の霧島とかじゃないのか」
「期待してるのが丸わかりですよ……」
しまった! ヌードを期待しているのがばれてしまった。
いや、まだだ。まだただ疑っているだけという体もとれる。
諦めるな! 暮木鈴人!
「ななな、なにを、いて、いっているんだ、こんなときに、そそ、そんなきたいなんてするわけないじゃないかあ!」
だめだった。
嘘、隠し事は苦手な俺だった。
しかし、写真は本物らしい。
映っているのは黒くくすんだ赤髪の白人の目つきの悪いの青年。口を裂くように笑ったらさぞ悪人面するだろう。
そしてもう一人。長い金髪の姉ちゃん。こっちも外国人だろう。
どっちも外国人……あの男も日本人じゃ無かったな。多分、イギリスかアメリカか……いや英語使う国は他にもたくさんあるんだっけ。という事はこいつらも英語を使うのに日本語ペラペラなんだろうなあ。
不思議だよな。一般人よりこういった危ない奴らの方が優秀なんだから。
「さて」
霧島は、一番緊張の高まる位置。つまりは校庭に着く直前。あと一つ角を曲がれば目的地というところで足を止めた。
「もう、到着です」
さっきまでとは違う、真面目な表情。
ここでなにかふざけるのは間違いなんだろう。
「暮木君は、きっとこれから、本当の意味での命がけの戦いに行くんでしょう。捕まるにしても殺されるにしても、凍羽さんを助けてからの話ですから」
「まあ、な」
「でも、せっかく知り合えたんですから、死なないでくださいね」
「ああ——大丈夫だ、今回、俺は死ねないんでな」
「そうですか」
なら良かったです。
と、霧島。
……ああ、恵まれているな、俺は。
本当に、そう思う。
自分の事を心配して怒ってくれる人がいて。
いい友達がいて。
そして、守りたいと思える奴がいる。
それはきっと、誰よりも恵まれてて、幸せなことで、幸運な事なんだろう。
だから、俺はその幸福を守る為に戦える。それを守る為に戦える。
たくさんのものを貰って、守られているんだから、俺も守ってやらなきゃ、おかしいもんな。
「終わったら是非取材させてくださいね。新聞の一面に掲載してあげますから。題は、そうですね……『無能力者・暮木鈴人、単独で襲撃者撃退!』なんてどうでしょう」
「……いいな——それ」
これから死ぬかもしれない、帰ってこられるかも分からない、命懸けの戦いに行くっていうのに、自然、笑みが漏れる。
「よし、取材の準備をしておけよ。俺の武勇伝を嫌と言うほど聞かせてやるからさ」
「——はい。楽しみに待っていますね」
そして、霧島の笑顔に背中を押され、俺は前へ一歩を踏み出した。
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