表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/107

009・後編ー約束よ!

 「……驚いた」


 ようには見えないが本来ありえない事だけに本当に驚いているのだろう。

 もうちょっと表情に出してくれればいいんだけどな。なーんか反応しずらいっていうか。なあ。

 こんなにも反応に困る相手は初めてだ。


 「驚いたんならもっと驚いた反応しろよ」

 「わー」

 「馬鹿にしてんのか!」

 「?」

 「首傾げてんじゃねえよ! 俺かっ? 俺が悪いのかっ?」


 これは期待した俺が悪いのかっ?

 ……それにしても、どうする? こんな下らない話で時間を稼いだところでいい考えは浮かんでこない。

 いくら単純なパワーがこちらの方が上でも、もうさっきみたいな手は使えない。

 あの反応速度だと真正面からさっきと同じ事をやっても防ぐか、避けるかされるだけだ。

 羽重さんの反応速度より速く攻撃するか、また何かしらの方法で気を逸らすかしない。

 反応速度より速く……。

 ん?あれ?そういえば俺……!

 ふと、あることに思い当たり胸の内ポケットに手を当てる。

 有った! そうだよ! 俺、銃持って来てたじゃないか!

 そうと決まれば。直ぐさま大きく距離を取り、胸の内ポケットから銃を引き抜き構える。ちなみにこれは実弾じゃなくてゴム弾を打ち出す。


 「ただし! スピードは実弾並みだがなあー!」


 銃声。銃口からゴム弾が実弾と同じ速度で撃ち出され、直進していく。

 直進——した。直進したのだ。直進()した。

 直進はしたが、当たることは無かた。

 銃弾は羽重さんの右に大きく外れ、見えなくなった。

 しかし、効果は有った。殴り飛ばしても、自分の能力が効かなかった時も眉一つ動く事の無かったその表情に一瞬、驚きの色が見えた。

 構えてから撃つまでの一瞬その間に表情が大きく変わったのだ!

 当たりはしなかった。だが、隙は作れた。

 今だ! 今を逃すともう恐らくチャンスは無い! 俺にはその確信が有る!

 

  「ふっ!」


 この隙は逃さない!

 足に霊力を溜め、一気に解き放つ。大きく前方に距離を詰めるがまだ足りない。撃つときに大きく距離を取り過ぎた!

 足りない分を走る。走る。靴が脱げたが気にしている暇は無い!

 ほんの数秒。僅か数秒だった。およそ1秒位の時間だった。

 それが10秒にも20秒にも感じた。不思議な感覚だった。この世のあらゆる物から切り離されたような感覚。この世が俺から離れたような感覚。

  後はこの勢いのまま、拳を振るうだけ。それだけだった。たった、それだけ。

 しかし、やはり距離が遠すぎた。僅か数秒、ほんの数秒。その間に羽重さんは硬直を解き対処に動きだしていた。

 間に合わない──!


 「っおお!」


 拳は止められなかった。いや、止めなかったのかもしれない。

 少なくとも、今! この拳を止めようなんて思わないっ!

 気温が下がった。

 分かる。この冷気が何なのかを。

 解る。この冷気を()が発生させているのかを。

 青華!

 羽重さんが後ろから凍り付く。ただ、俺の拳の軌道の先と顔以外が。

 ガラスが割れるような澄んだ音が辺りの静寂しじまに響く。

 拳がシールドを破ったのだ。

 今頃は失格のブザーが氷の中で鳴っているだろう。


 「鈴人!」

 「青華!」


 青華がこちらに走って来る。

 今回は真面目に褒めてやろう。何せ今回のMVPだからな。

 青華は走ってそのままジャンプ……ジャンプ!?

 

 「鈴人! 食らええええ!」

 「何い!?」


 ゴチン!

 真っすぐに飛んできた青華の膝が額に衝突。そのまま後ろに倒れてしまった。

 もちろん地面はアスファルト。


 「痛ったあ! 何すんだこの野郎!」

 「何すんだはこっちのセリフよ! 人の事投げ飛ばしておいて! 何で一人で突っ走ってんのよ! 二人だったもっと楽に、あんたも私も余計な怪我を負わずに済んだかもしれないのに!」

 「いや、まあ、それは……ごめんなさい」


 実際、今回は俺が悪いので何も言えない。投げ飛ばした時も結構高めに投げたから、案外死ぬ思いだったかもしれない。


 「何よ……、そんなに素直じゃ張り合いがないじゃない」

 「お前……!」


 そんな事を思ってたのか……。

 なんか嬉しいような、こそばゆいような。


 「素直過ぎて、気持ち悪いわね」

 「お前、人の謝罪を何だと思って……」

 「でも。今回はあなたのおかげよ。私だけだったら倒せなかったもの。だから、これは二人の勝利よ。──だから、ナイスファイト。鈴人」


 青華がその小さな拳を突き出してくる。


 「っ……! おう」


 拳を突き出す。

 ゴチン。

 今度は、さっきと違い小さい音だった。

 さっきより響く、優しい音。

 青華の顔もまた優し気な微笑みを浮かべていた。

 そして、その微笑みは──


 「約束よ。今度、一人で勝手な事したら許さないんだから!」


 花が咲いたような笑顔へと変わった。

 約束しよう。


 「分かった、約束だ」


 この笑顔を守りたいから。

鈴人じゃなければ、千鳥を追い詰める事はできなかったし、青華がいなければ結局鈴人は負けていた。

これは二人の勝利と言ってもいいのでしょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ