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027・中編─その時は訪れた

祝、100部

 「うぉんっ……!」


 ふわり。ぐるり。

 転んだと思ったら今度は上方向の力を受けた。下へ移動中のエレベーターのような感覚。重力がついにが仕事を放棄したらしい。

 激しい上下運動に正直吐きそう。

 その上無理やり体をひっくり返されたものだから余計に三半規管に負担をかけられることになった。


 「うっ」

 「ここでは吐かないで」

 「羽重……?」


 目を開ければ、透き通るような美しさを持った端正な顔。真っ白な髪。

 自分よりも幾分か小さな女の子に横抱きにされていた。お姫様抱っこである。そして宙に浮いていた。現在、上昇中。

 なんだこの状況。

 転んだと思ったら女の子にお姫様抱っこされて宙に浮いてる。何だこの状況。

 脳が処理しきれない。

 てか待って、めっちゃ吐きそう。

 吐く。吐く吐く吐く吐く──いや、まだいける。

 ちょっとマシになってきたかもしれない。


 「いやごめんやっぱ吐きそう」

 「吐かないで」

 「でももう限k」

 「吐かないで」

 「あ、はい」


 気合で吐き気を抑え込む。

 そりゃあ息も荒くなるってもんよ。

 うん。

 どんなに吐きそうでも、精神的にいろいろとキてても、五感ははっきりしてるわけでね。

 密着した体はやわっこいし、なんかバニラみたいな匂いするし。

 鼻息も荒くなってきた。


 「………………」

 「あれ、羽重さん? なんか落ちてってません? ちょっと落ちる速度早くなってない? ここ結構な高さありますよね? ちょっと? 羽重さん? 羽重さん⁈ 羽重さーん⁈」


 地球の重力加速度9.4m/s。人間二人がこんな高さから落ちたら羽重の細い御御足ではポッキリいってしまうかもしれない。

 と、心配を募らせたその時。


 「えっ──」


 俺の体は、支えを失い、羽重の両腕から離れていた。というか、横に投げ捨てられていた。


 「羽重さーーん⁈」


 結局落ちるのかよ!

 体を回転させるのはもう間に合わない。なら……!

 手のひらを地面に向けて、全力で霊力を逆噴射させる。


 「ぬぬぬぬぬー!」


 その後数秒、体が完全に落下を終了したところで──何かが、降ってきた。

 俺は気づいていなかった。天井を塞いでいたフタが、まるでポップコーンでも弾けたかのように膨らんでいたことに。

 黒く、大きなソレは正に俺とメデスが遭遇した──落下した時に潰れたのか、丸い塊になっているが──影そのものに他ならない。夕日も入らないこの地下ではより一層黒々として見える。

 そして影は一体だけではなく、ボトリボトリと落ちて来る。ちょっとした恐怖映像だ。

 ついでに羽重もふわりと落ちてきていた。


 「くっ、やはり私の糸では押し留められななかったですわ……!」

 「こんなにいるのかよ」


 ゆうに十数体はいるぞ。何を言っていたかは分からないが、視界に入ったラウルムも動揺しているように見える。


 「──堕ちろ」

 「きゃあっ!」


 動揺し完全に油断しきっていたラウルムはメデスの水に足を捕まれて目にもとまらぬ速さで床に激突していた。ああはなりたくねえな。


 (って、危なっ!)


 真上から迫る黒い影、黒い姿のガッチャ……ではなく影。

 急いで飛び退きメデスの後ろに隠れる。

 ──思わずとった行動に自分で自分が情けなくなる。自分よりも小さな女の子の背に隠れるなんて……。

 次第に落ちて来る影の数も少なくなり始めた今、作戦の第二段階が発動する。


 「三、二、一、ゼロゼロゼロゼロ! 青華ちゃん今!」


 メデスの合図と同時に、青華の周囲に()()霊子が発生し、部屋のあちこちに立てられた氷柱からは蒼い光が発せられる。

 そんな光景を見て、なにより、その中心にいる青華を見て、やはり俺はこう思う。


 (──綺麗だ)


 その場の寒気も吹き飛ぶほどに俺は彼女に見惚れていた。


 「『蒼氷縛陣そうひょうばくじん』!」


 俺、メデス、羽重の青華を除く三人が同時に跳び上がった瞬間(実は俺だけ一拍遅れた)地面が影やラウルムごと蒼い氷で包まれる。

 青華は僅か三秒ほどでこのホールをその名の色で染め上げて見せたのだ。

 

ゆっくりではありますが、そろそろ今までよりペースを上げて更新しようと思います。乞うご期待下さい。

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