000-夕暮れ
最初は作品全体のストーリー全体の設定の根幹の前置きからです。
ちなみにここの語りは主人公の暮木君。まあ、全てが終わった未来からの後語りです。
この世界を空とするのなら、命あるものは星である。
かつて、遥か遠い昔でそう語ってくれた人の話を語ろう。
俺たちの物語を語るには、まずこの話をしなければならない。なにせ、俺たちの物語の根幹には必ず、その男が関わってくるのだから。語らなきゃいけない。
俺たちの物語と、男の物話。どっちが偉大で、壮大な物語かと言えばもちろん男の話の方で、ここでだって男について話すのはほんの一部。この後に語られる俺たちの物語だって劣るつもりは無いが、それでも勝っているとは言えない。むしろ贔屓目が勝っている。それでも、語ろう。千年前の、王になった男の話を。
前述のとおり、男は王だった。偉大で、賢明で、強い王様だった。けど、だからと言って、男は最初からそうだった訳では無い。そもそも男は貴族とか王族とかの出身ではないのだから。男はある貧しい小さな村の一際貧しい家で生まれた。服どころか食料もまともに買えないような家だったそうだ。
そうだ、というのはこの話も、やっぱり俺が聞いて、ある種見てきたとも言えることだが、やはり聞いた、というのが正しいことだからだ。
男は家には恵まれなかったが、親にも恵まれなかった。別に親が暴力を振るってきたとか、食事を与えてもらえなかったとか、そういう訳では無い。むしろ逆ですらあった。優しい、優しすぎる親だった。だからこそ、死んでしまったのだ。自分たちは何も口にせず、男に与え続けていたから。
男が生まれて初めて見た死体は、限界まで痩せ細り、骨が浮き出て、ストレスで、髪が所々無い、白髪の生えた両親の死体だった。
人が死んでもほっとかれるような所だ。当然差別なんかもあった。
子供は石を投げる。
大人は言葉を投げる。
年寄りは唾を吐く。
子供が一人で生きていける環境では無かった。幸い、村を通ったどこかの教会の神父だか神官だかが拾ってくれたおかげで命を落とすことは無かった。
その後も、こうやって話していては本一冊掛かったって終わらないような、それこそその話で一シリーズ書けるような本当に壮大な話になってしまうのでそろそろ省かせてもらおう。それでも重要なことは語るが。
男は王になり、崩御する寸前、自身の最も信頼する十二の臣下を呼び、己以降の王を強い者とする為、資格を持った十二の候補を争わせ、勝者にその王権を譲るものと宣言した。
その戦いこそ、十二の王の候補者による王権の争奪戦。後に、それは『王権戦争』と呼ばれるものである。
そしてその男は、星の光を身に纏い、世の魂あるものの頂点に立ち、『星王』と呼ばれた男は、その死以後、歴史からその姿を、痕跡を、存在を抹消された。
これが、男の人生の終わり。
その人生はある種劇的で、星のように輝き、夜が明け太陽の明かりに星が見えなくなるようにに幕を下ろした。
そして──ここからは俺たちの話。
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