★【舞う羽凍る鳳仙花】
台本タイトルは【まうはねこおるほうせんか】と読みます。
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♂1:♀1:不問0
亀八郎 ♂ セリフ数:20
〈中堅の語り部。弱音も本音も誰にも吐かないつもりだったけれど、今後二度と会わない「誰か」になら、「亀八郎」以外になれる気がした〉
千輪 ♀ セリフ数:20
〈最も旧い語り部。別れも出逢いも死ぬほど済ませてきた。二度と会えない子も居るけれど、二度と「会わない」子は彼が初めて〉
[あらすじ]《4分半程度》
世界各地を語り歩く語り部は巨万と居るが、その中でも名が売れているのはほんのひと握り。これはそんな語り部達が不慮の偶然で鉢合わせしてしまった時の物語である―――。
【亀八郎】
(とても疲れた様子で)
―――・・・、隣、失礼しやす。
【千輪】
おや、この時代一番のお喋りが何の用だ?
【亀八郎】
これを、渡しに来やした。
【千輪】
(手渡されたものを見て、驚いて)
…お前、これを何処で?
【亀八郎】
……、とある伝手に頼まれやして。
(嫌そうな顔をして)
後、悪いとは思ってやすけど、あっしはコレを『届けただけ』でやす。コレとアンタらの関係性について、何か言うつもりもないんで、このまま踵を返して良いですかい。
【千輪】
(合点がいって)
…なるほど、そういう事か。
(悪い顔をして)
まあそう、急かしなさんな。こんな代物を誰にも悟られずに持ってくるのも大変だったろうさ。
駄賃ぐらいはくれてやろう。
【亀八郎】
(とんでもなく嫌な顔をして)
い゛ぃぃ〜〜…らないでやす。帰ります、帰ります。あっしは今日、語りもせずに宿屋でぐうたらする予定なんでやすっ…!
【千輪】
(だらしなく悪い顔をして)
まあ、まあ、まあ、まあ。ほら、騒ぐな。何の為に語り追達を撒いてきたのか分からなくなるだろう。
【亀八郎】
クソッ、力強ぇ…! 離せこの女狐! あっしはアンタと関わる気なんて無いんでやすよ!
【千輪】
お前さん、そっちの性格晒した方が、よっぽど人気出ると思うけどねぇ。
【亀八郎】
(腕を引っ張られながら)
人の話をっ、聞けっ……!!!
**** **** ****
【千輪】
いつまで不貞腐れてんだい。魚が冷めちまうよ?
【亀八郎】
はあ〜〜……、何でこんな事に…。
【千輪】
お前にお使いを頼んだ奴を恨むんだね。どうせあの騎士崩れだろう? お前を待ち伏せするんだって、前の語りで言っていたらしいし。
【亀八郎】
…………。はあ…。
アンタ達古参で好きにやってりゃあいいのに、何でこんな若輩者を巻き込むんでやすか。
【千輪】
若いのを弄くり回したい年頃なんだよ。
【亀八郎】
何が年頃だ。
【千輪】
ふはは、猫が逃げ出したお前は辛辣なこって。その猫被りがあったから世の人の心を掴んだのか、他の要因か…。
ま、全て瞬きの事柄か。
【亀八郎】
無粋な詮索屋は嫌われやすよ。
(一気に酒を呷って)
…んん、ぷは。
これ、どこの酒です? 口当たりがスッキリしてやすけど、栗透の百合酒じゃあ…ねえでやすね。
【千輪】
おや、飲んだことないのかい。鹿華のお勧めさ。
【亀八郎】
(名に驚いて、喉を詰まらせる)
ろっ・・・!? げほっごほっ。
……ま、あのお人の紹介なら、変な酒でもねえか。
【千輪】
信頼が篤いねえ。話した事は?
【亀八郎】
鹿華殿とでやすか? 数回きりです。あっしが中堅になって、暫くも経たないうちに、その背中が見えなくなりやしたから。
【千輪】
そうか、そんなに早かったか。
置いていかれる者達が多い奴は、幸せなもんだけどやっぱり少し寂しいもんだ。
そういえば、お前。咲鳥とは話した事あったかい。
【亀八郎】
・・・一度も、ありやせんよ。背中を見ることも無く、訃報だけ聞きやした。
【千輪】
なるほど、避けられてた訳だ。
ま、咲鳥のやりそうな事だよ。彼女にはそういう風情とか、倫理とかが通じないからねぇ。
【亀八郎】
どんな、お人でした?
【千輪】
おや、気になるのかい。他人に興味のないお前が珍しい事だよ。
【亀八郎】
・・・参考までに。
【千輪】
(鼻から息を漏らして)
他人を心の底から嘗めてたな。彼女は死ぬまで生意気だったよ。
昔から病持ちだったからな、自分が長くないと悟って、自分勝手に生きてやろうと思ったのやもしれんが、まあ…あれは元からああだったのだろうな。
【亀八郎】
・・・似てやすか。
【千輪】
誰と?
【亀八郎】
あっしと。
【千輪】
・・・・・、いいや。全く。
と、言ってやりたいところだが、他人に興味のない所も、逃げ足が早い所も、…どの世代も押し退けて語りが一等に上手いところも、
(長いため息を吐いて)
ため息を吐きたくなるほど、よく似ているよ。
【亀八郎】
………。
【千輪】
ま、お前を最初に「第二の咲鳥」、なんて呼んだ奴は、そんな事考え至りもしなかったろうさ。
ただの嫉妬と、自らの名が時代の壁に掠りもしない事への焦燥だろう。
似ていようが、似ていまいが、お前がさして気にする事じゃないさ。
【亀八郎】
なら、いいでやす。
……美味い魚と酒の対価は。
【千輪】
余に「これ」を渡してくれた駄賃が、この店の個室での食事さ。
どうしてもって言うんなら、お喋りの珍しい弱音で手を打とうかね。
【亀八郎】
…じゃあそれで。
あっしはこれで失礼しやす。
また、…いや。これにて。
【千輪】
…嗚呼、その方がいいな。
愉しかったよ、有り難うね。
STORY END.
一人用声劇台本ページの語り部シリーズより。
それぞれ初登場台本を掲載しておきます。
語り部亀八郎〜生い立ち編〜
https://ncode.syosetu.com/n0087fo/9/
語り部千輪〜惚れ薬編〜
https://ncode.syosetu.com/n0087fo/29/




