【錆耽る】
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♂1:♀1:不問0
着物の青年 ♂ セリフ数:14
寝たきりの老女 ♀ セリフ数:13
[あらすじ]《3分程度》
夜の病室のベッドの上。たくさんの管が繋がれた老女の隣には、古風な着物を身に纏った青年が座っていた。窓から聞こえる花火の音に、青年が感嘆のため息を零した―――。
【着物の青年】
…見たかったな、花火。
【寝たきりの老女】
…ええ、そうですねぇ。
【着物の青年】
あの河川敷んとこ、今でもよく見えんのか?
【寝たきりの老女】
…そうですねぇ。でも近頃は、人が多くて全然穴場じゃなくなったんですよ。
【着物の青年】
ああ、そりゃいけねえな。
花火ってのは、静かに見るのがいいんだ。
…またイイとこ探しといてくれよ。
【寝たきりの老女】
…元気になったら、それもいいですねぇ。
【着物の青年】
……。
【寝たきりの老女】
……。
【着物の青年】
…、なあ。
【寝たきりの老女】
はい?
【着物の青年】
いつになったら、良くなるんだ?
もう何年も、寝たっきりだろ。
【寝たきりの老女】
…さあ、いつですかねぇ。
もういっそ、このまま儚くなってもいいんですけどねぇ。
【着物の青年】
ンな寂しい事言うなよ。
お前にゃあ、…生きてて欲しいんだ。
【寝たきりの老女】
あら、こんな老婆に酷な事を言いますね。
アナタはさっさと、何処ぞの米兵に撃たれて死んだっていうのに。
【着物の青年】
残念ながらそりゃあ、お国の嘘だな。
実際は…錯乱した味方の馬鹿に撃たれて死んだよ。
【寝たきりの老女】
(微笑みながら)
それはお可哀想に。
【着物の青年】
(真面目な声で)
可哀想なのは、お前の方だ。
【寝たきりの老女】
あら、どうしてです。
【着物の青年】
戦争に行って、帰ってこねえ馬鹿を待ってたせいで結婚も出来ねぇで、こんな、誰も来ない寂しい病室で、何年も寝たきりで。
死んだって悲しんでくれる奴は居ねえだろうよ。
【寝たきりの老女】
一人居ますよ、此処に。
【着物の青年】
生きてる奴って意味だ、阿呆。
【寝たきりの老女】
…ふふ、でもいいんですよ。私はこれでも…ちゃんと幸せでしたから。
【着物の青年】
……………。
【寝たきりの老女】
そんな顔、しないでくださいな。
アナタが死んだと聞かされて、だけれど骨も何も帰ってきてはくれなかった。
空襲で母も妹も死んで、家も燃えて、生きている事自体、馬鹿みたいに思えて。
なのに、今でもこんな風に生き長らえてる老婆を、どうか笑ってくださいな。
【着物の青年】
…笑わねえ、笑わねえよ。
好いてる奴が、まだ生きてくれている。
それだけで、こんなに、幸せだ。
【寝たきりの老女】
…もう、相変わらず安い方。
もっと、望んでくれてもいいのに。
花火、また見に行きましょうよ。
良い所、今度は二人で探して。
【着物の青年】
…ああ、そうだな。
STORY END.




