【胸焼けする想い 前編】
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♂2:♀0:不問0
相野 十彩 ♂ セリフ数:32
〈22歳。消極的でネガティブな青年。最近割り箸が上手く割れない事を気にしている〉
原 研二 ♂ セリフ数:32
〈22歳。明朗快活な青年。最近彼女に振られたが特に気にしていない〉
[あらすじ]《6分半程度》
「そう言えばさ、」と続く言葉にパスタを巻く手が止まる。ネガティブな僕を何度も強引に救ってくれた親友は僕の変化を見逃さなかった―――。
【原 研二】
そう言えばさ、神埼と会ってんの?
【相野 十彩】
……、神埼、…ああ。…神埼ね。
【原 研二】
何。何もないって感じじゃねーじゃん。
【相野 十彩】
…いや、ほら。彼女も町田も東京の大学行っちゃったし…連絡先も、知らないし。
……懐かしいな、って思って。
【原 研二】
ああ、お前高校の頃、ケータイ持ってなかったもんな。
【相野 十彩】
…だから、自然消滅、みたいな。
【原 研二】
(相手の言葉に笑いながら)
自然消滅ってカップルかよ。
【相野 十彩】
他に何て言うの。…というか、急に何。
【原 研二】
いんや? 最近ウワサ聞いてさ。
オレも連絡先知らねーし、確認しようはねーけど。
神埼、結婚すんだって。
【相野 十彩】
…! ……そ、っか…。
【原 研二】
(少しため息を吐きながら)
…なあ、いい加減教えてくんね? 神埼と何かあったの?
【相野 十彩】
別に、神埼とは何も。…僕が勝手に色々考えちゃった、だけで。
【原 研二】
ああ、お得意の“考え込み”ってやつ?
【相野 十彩】
何それ。…そんなんじゃ、ないと思う、けど。
【原 研二】
おい、20年も一緒に居んだぞ。
それくらい分かるっての。…んで? 何をンな考え込んじまったんだ?
【相野 十彩】
……高校生の頃は、その。やっぱり男女で友人っていうのは…おかしかった、のかな。
何かある度に付き合ってるのか、とか。好きなんじゃないか、とか。…言われちゃって、さ。
【原 研二】
ガキはそういう話題好きだかんなあ。何でもそうやって結びつけたがるし。
んで、それがヤだったのか?
【相野 十彩】
イヤっていうか。…何だろ、神埼とはそういうのじゃないし、言われ過ぎるのは億劫だったんだけど。
そんなに、気を病むほどじゃなかったんだ…。
ただ。僕が、嫌な事考えちゃって。
【原 研二】
…………。
【相野 十彩】
……。
気持ち悪いなって。
思っちゃって。
………。
あっ、イヤ! 神埼が、じゃなくて! そういう感じのが!
【原 研二】
そういう感じの?
【相野 十彩】
そういう、…恋愛関係…。
神埼の事、そういう目で見てなかったし、多分、だけど。神埼も同じだったろうし…。
ただ、そういうの。いざ考えてみたらさ。
すごい、…すっごく…気持ち悪くなってきて。
【原 研二】
…………。
【相野 十彩】
何その顔。
【原 研二】
いんや? ただ何か…、“考え込み”って奴ァ侮れねーなと思って。
【相野 十彩】
それ毎回言ってんね。
【原 研二】
毎回心底思ってっかんな。
そんで? そういう事考えて、そういう気持ちになったのが神埼に申し訳なくなったとかそういうオチ?
【相野 十彩】
オチって言うなし。
…まあ、でも。そういう事。
知ってるだろ、僕がそういうのだって。
【原 研二】
アセクシャル? だっけ?
【相野 十彩】
お、すごい。あの研二が覚えてた。
【原 研二】
何だよ、あのって。
【相野 十彩】
高校生の頃だって散々言ったのに忘れてたろ。
はあ。…つくづく自分が恋愛出来ない人間なんだなって思い知ったというか。
神埼の事は友達として大好きだったけど、それが恋人、ってなったら途端に、こう…胸焼けがするみたいで…、
【原 研二】
ふーん。そういうもんかね。
オレは別に神埼と付き合うにしても町田と付き合うにしても何も気にしねーけどな。
【相野 十彩】
お前はな。
【原 研二】
お前の方こそ気にし過ぎだっての。
例えさ、お前が神埼との仲をそんな風に考えて吐きそうになったとか、そういうのを神埼に言ったとしてもアイツ気にしねーだろ?
【相野 十彩】
………そうかも。…うん、今考えれば“そうだね”って言えるのにな…。
昔は、というか今まで…こういう考えがもし、何かの弾みで神埼に伝わっちゃったら…彼女は、どんな顔するんだろうって。
…そう思ったら神埼と目を合わせるのもすごく怖くなって…。
【原 研二】
(長い長いため息を吐く)
はああああぁぁぁ〜………。
【相野 十彩】
な、何。
【原 研二】
ぶぁぁぁぁか。
【相野 十彩】
だ、だから何。
【原 研二】
こんな話に付き合ってんの馬鹿らしくなってきた。ああ゛、もうマジで大馬鹿野郎だな、お前っ
【相野 十彩】
…はっ?
【原 研二】
いいか、十彩。思い出せよ。
お前のその“考え込み”のせいで頭からすっぽ抜けちまったらしい記憶をさ。
【相野 十彩】
記憶?
【原 研二】
考えすぎてネガティブになる奴は最終的に自分の事しか考えなくなる。周りの人間が何言ったって雀の涙ぐらいしか効果ねーってのもお前のお陰で痛感したわ。
【相野 十彩】
そ、それはごめん…。
【原 研二】
…はぁ。高校の頃。
馬鹿なお調子者共がお前と神埼の仲を冷やかしてた時、神埼いつも何つってた。
【相野 十彩】
え?
【原 研二】
『やめてよ、吐き気がする』
…、お前これ聞いた時どう思ったんだよ。
【相野 十彩】
(高校の頃の記憶が鮮明に蘇って嬉しくなり)
…ああ、そ、っか…はは、
すごい、良かったって思ってた。…僕の事、そういう目で見てないんだっ、て…すごい、安心してた…。
【原 研二】
なら相手もそうじゃね? つーか、冗談にしろ本気にしろ本人の前で“吐き気するー”とか宣って後で謝りにも来ねぇ奴だぞ? お前がそう思ってたとして傷つく奴じゃねーよ。
【相野 十彩】
は、はは…そうかも…。
【原 研二】
んじゃ、もう話せるな。
【相野 十彩】
ん………ン? 話せる? 誰と?
【原 研二】
神埼と。
【相野 十彩】
は?
【原 研二】
じゃーん。何とオレのケータイには神埼 真梨花の連絡先がなぜか知らねえーけど入ってまーす。
【相野 十彩】
んん? へ、はぁ? 待って、だってさっき連絡先知らないってっ…!
【原 研二】
いやぁ、オレもついさっきまで知らなかったんだけどなぁ。これってさ、神様のイタズラってやつかなあ?
【相野 十彩】
白々しい…!
騙したな!?
【原 研二】
イヤイヤ、本当だって。マジでついさっきまで知らなかったんだって。
つー事だから、ちゃんと話してみろよ。
【相野 十彩】
(相手の番号が表示されているケータイを差し出されて)
ウッ……、何で、今なの…。
【原 研二】
ゆっくり話せんのなんて結婚前の今しかねーだろうよ。
じゃあ、オレちょっと便所行ってくっから!
【相野 十彩】
えっ!? ちょ、っと待っ…! 研二!
…………えぇぇぇ…………。
どうしろってんだよぉ…。
STORY END.




