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二人用声劇台本  作者: SOUYA.(シメジ)
台本一覧
50/84

★【正しく伸びぬ山茶花の音】

声劇タイトルは

【ただしくのびぬさざんかのね】と読みます



台本ご利用前は必ず『利用規約』をお読み下さい。

『利用規約』を読まない/守らない方の台本利用は一切認めません。


※台本の利用規約は1ページ目にありますので、お手数ですが、『目次』をタップ/クリック下さい。

 ♂2︰♀0︰不問0


 茂木(もぎ) ♂ セリフ数:18

新参しんざんの語り部。恐る恐る足を伸ばした先に待っていた世界に少しだけ安堵あんどして、やっぱり恐怖も覚えたけれど…両頬りょうほほを叩いてかつを入れた〉


 麒麟(きりん) ♂ セリフ数:18

中堅ちゅうけんの語り部。いつか「弟子」の彼が、自分と肩を並べるくらいの語り部になった時には、彼の師匠を思いっきりあおってやろうと思っている〉


[あらすじ]《4分半程度》

 世界各地を語り歩く(かた)()巨万(ごまん)と居るが、その中でも名が売れているのはほんのひと握り。これはそんな語り部達が不慮(ふりょ)の偶然で鉢合(はちあ)わせしてしまった時の物語である―――。










【茂木】

(鼻歌を唄いながら荷物整理をしていて)

 〜♪ 〜♪


【麒麟】

 ……アイツ、確か。


(茂木に近寄る)

 おい、お前。新参(しんざん)だったなァ。


【茂木】

 え…? …ッッイ゜っ!? き、麒麟殿…。

 えっと、すみません。場所、変えますね…。


【麒麟】

 随分(ずいぶん)愛想(あいそ)が無ェな。

 (アイツ)にゃァ鬱陶(うっとう)しがられるほど(なつ)いてたってのに。


【茂木】

 なっ…、えっ…何で、知って…!?


【麒麟】

 語り部ってのは「情報(じょうほう)(とう)」なんだよ。知りたくねェ事も、知りてェ事も、(ふさ)いだ耳に入ってくらァ。

 それよか、やっとダース地方を抜けたんだなァ。


【茂木】

 本当に…。何でも知ってんですね。


 えぇ、そうですよ。

 でもそれが何か。用がないなら―――。


【麒麟】

(茂木の肩を掴んで)

 まァ、そう固ェ事言うなよ。

 同じ「弟子同士」だァ。少し(くぎ)を刺してやるよ。ついでに質問にも答えてやらァ。

 同業(どうぎょう)の情報交換も仕事のネタんなる。


【茂木】

(ボソリと)

 うわっ! 力強ェ・・・。


 …麒麟殿は師匠と仲が良いんですか。


【麒麟】

 良くも悪くもねェ。

 そもそもアイツは、名の通ってる中堅(ちゅうけん)では一等(いっとう)年若(としわけ)ェ。だってのに語り部としては誰よりも先を行ってらァ。


【茂木】

 ……………。


【麒麟】

 …………。対するお前は「亀八郎(きはちろう)唯一(ゆいいつ)間違えた選択」、だろ?


【茂木】

 ……………っ!


【麒麟】

 好き勝手言いやがる。

 絶賛(ぜっさん)後釜(あとがま)酷評(こくひょう)とは。


【茂木】

 間違っては、いませんよ…。

 結局独り立ちまで、師匠に()められた事は一度だってありませんから。


【麒麟】

 ……弟子の(さが)なのかもなァ…。


【茂木】

 え…?


【麒麟】

 オレも昔は好き勝手言われたなァ。

 大剣(たいけん)なんぞ(たずさ)えて物騒(ぶっそう)(きわ)まりねェとか。粗暴(そぼう)だなんだと(わめ)いてたっけなァ…。


【茂木】

 麒麟殿にもそんな時代があったんですか。


【麒麟】

 誰にだって上手く生きれねェ時代はあンだよ。


【茂木】

 ……。

 麒麟殿から見て、師匠は上手いですか。


【麒麟】

 ……。



 あァ。上手ェよ、アイツは。

 「第二の咲鳥(さとり)」とは。よく言ったもンだ。


 たまたま語り(どお)りが重なった時、道を(ゆず)ったんだがなァ。

 勝ち負けなんぞ存在しねェのに、『負けた』。って思ったぜ。


【茂木】

(思わず口から出た、というように)

 ………すげぇ。


 ……やっぱ、師匠は……

 すっげぇ、…なぁ…っ


【麒麟】

 …。


【茂木】

 会う度に、安心するんです。

 あの人が居ない地方は、すごく怖くて。


 子供(ガキ)みたいですけど、本当で。


 ……でも、多分。

 あの人は、師匠は。

 全部知ってて、見抜いてて。


(悪いものを吐き出すように)

 ……オレの師匠、すっごくて、そんで格好いいんですっ


【麒麟】

 ……。

 チッ、お節介(せっかい)なんぞ焼くモンじゃねェな。逆にオレが(くぎ)刺されたようなもんじゃねェか。


【茂木】

 …あの、でも何でオレにそんな話をしてくれたんですか。麒麟殿ってもっとこう、勝手にしろ〜ってイメージがあるんですが。


【麒麟】

 言ったろ。同じ「弟子同士」だって。

 お(たが)い師匠は、世間の目を我が物にする(かく)()い語り部だしなァ。


【茂木】

 ……確か、麒麟殿のお師匠様は…、


【麒麟】

(相手の言葉をさえぎって)

 茂木。


【茂木】

 うぇ、あっ、ハイっ!


【麒麟】

 死ぬなよ。


【茂木】

 えっ…


【麒麟】

 人はいつか死ぬ。

 でも死ぬまでに(のこ)せるモンはいくらでもある。

 だから、…死ぬなよ。


【茂木】

 え、あっ…ちょっと! ………。


 言うだけ言って、行っちゃった…。

 …………。


 …同じ「弟子同士」か。

 「語り部同士」、じゃないんだ…。


 …っ(くや)しい…! オレだって、いつかちゃんと…。「亀八郎の弟子」じゃなくて「語り部の茂木」を名乗れるように…。


 うん、…頑張ろう。


【麒麟】

(茂木からだいぶ離れてから)


 慣れねェ事はするもんじゃねェな。

 アンタみたいにやってみようかと思ったけど、オレにゃァむず(がゆ)くて仕方ねェ。


 ……、

 ……………、


 アンタの事、すげぇなんて思った事なかったなァ。…ただ、『天才』だって思ってたぜ、……師匠。











STORY END.

一人用声劇台本ページの語り部シリーズより。

それぞれ初登場台本を掲載しておきます。


語り部茂木〜鉢合わせ編〜

https://ncode.syosetu.com/n0087fo/30/


語り部麒麟〜遭遇編〜

https://ncode.syosetu.com/n0087fo/39/

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