【陽だまり喫茶の幽霊談1】
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♂1:♀1:不問0
タシギ ♂ セリフ数:16
〈喫茶店のオーナー。時折訪ねてくる客の相手をしながらカウンターでホットミルクを飲むのが至福のとき〉
常連の女性 ♀ セリフ数:16
[あらすじ]《3分程度》
喫茶店『陽だまりのレクイエム』にて。色白のオーナー、タシギは成仏できない幽霊を客として迎え、満足出来るようなサービスを提供していた。さあ、今日は誰が来ているのだろうか―――。
【常連の女性】
そろそろいこうと思ってるの。
【タシギ】
……。そう言い続けて?
【常連の女性】
15年かしら。早いものね。
【タシギ】
のんびりし過ぎじゃあないかな。
僕だったら欠伸どころじゃなくすっかり寝こけてしまってるよ。
【常連の女性】
タシギは相も変わらないわね。
いいのよ、のんびりで。待ち続けるのも、存外悪くないしね。
【タシギ】
ねえ。
【常連の女性】
ん?
【タシギ】
妻を病気で亡くした男が居たんだけど。その少し後に子連れの女と再婚したんだって。
男は死んだあと、前妻と後妻、どちらと死の道を歩くと思う?
【常連の女性】
……………。
最も愛した方じゃないかしら。
…でも、きっと。前の『好き』は選ばれないわ。男って、好きな物は先に食べてしまうタイプだもの。
【タシギ】
随分な偏見だな。
僕は好きな物は後に食べるタイプだけれど。…そんな男が居てもいいでしょ?
【常連の女性】
タシギみたいな男ばかりじゃないのよ。
選べない男もいるし、さっさと乗り換えちゃう馬鹿もいるの。
【タシギ】
恋だの愛だのは僕には分からないや。
【常連の女性】
ふふ、タシギはまだお子様だものね。
【タシギ】
(相手に笑いながら)
酷いな。
…まあ、でも君らしい。
さあ。そろそろラストオーダーの時間だよ。何か食べる?
【常連の女性】
そうね、じゃあ。
カラメルソースのかかったパンケーキと紅茶を。シュガーは要らないわ。ミルクだけもらえる?
【タシギ】
(わざと演技がかった声で)
ご注文、承りました。
…少々お待ちください。
【常連の女性】
ふふ、タシギのそれ、久しぶりに聞いたわ。
★
【タシギ】
(料理を作りながら)
そう言えば、アカネちゃんが催促しに来てたよ。
【常連の女性】
催促?
【タシギ】
そろそろ来てくれないかなあって。
【常連の女性】
……。
そうね、アカネちゃんにはあの時もお世話になったし、いってあげたいのは山々なんだけど…。
もう少し、待ちたいのよ。
【タシギ】
あの子も他の仕事がある。
近いうちに来るとは言ってたけどそれもいつになる事やら…。
早めに見切りをつけなね。
【常連の女性】
……、善処するわ…。
【タシギ】
だけどね、不謹慎にも君が来れなくなると淋しくなるよ。
【常連の女性】
あら、嬉しいこと言ってくれるわね。
【タシギ】
僕がこの店を継いで10年でしょ?
その前から……前の彼の時から来てくれてる常連が来れなくなるっていうのは不謹慎でも淋しいよ。
【常連の女性】
何だかそれって、私が近いうちに『いってしまう』みたいね。
【タシギ】
さっきそろそろいこうと思うって言ったのは誰だい?
【常連の女性】
あら、ふふ。そうだったわね。
ねえ、そろそろお湯が沸く頃じゃない?
【タシギ】
(途端にあわてて)
わっ、そうだった!
っあぁ、少し待ってて。すぐにとびきりのものを作って持ってくるから!
【常連の女性】
ふふ、ゆっくりどうぞ。
待つのは得意だから。
(キッチンに消えるタシギを見送って)
……、あんな風に慌てるタシギも久々に見たわね。
これが、もう見れなくなるのね。
…それは、少し…淋しい気がするわね…。
TO BE CONTINUED...




