【紡ぐ唄、繋ぐ御伽】
声劇タイトルは
【つむぐうた、つなぐおとぎ】と読みます。
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♂0:♀2:不問0
ドラゴン使いの少女 ♀ セリフ数:18
真面目な剣士 ♀ セリフ数:17
[あらすじ]《6分半程度》
世俗から離れた長閑なドラゴンの里。ドラゴンに殺されかけドラゴンに育てられた少女は死にかけの剣士を見つけたのだった―――。
【ドラゴン使いの少女】
・・・川岸にゴミとは久しい、と思ったがヒトか。…うむ、まだ息をしておる。コルフィルス、長と私の番を呼んできておくれ。
*
【真面目な剣士】
……うっ……、ここは……。
【ドラゴン使いの少女】
目を覚ましたかの。
【真面目な剣士】
(突然話し掛けられた事に驚くが動かない身体で警戒して)
ぐっ……! アナタは…。私は確か敵陣に捕らわれていたはずだ……。
【ドラゴン使いの少女】
ここは世間の目から離れしドラゴンの里。川岸に落ちていた其方を拾ったのは私だ。
【真面目な剣士】
そうか……私は、助かってしまったのか…。
【ドラゴン使いの少女】
まだ傷も治りきっておらん。里一番の治癒の腕を持つドラゴンが里に帰るまで眠っているがいい。
【真面目な剣士】
治らなくていい…私を、……殺してくれ……、
【ドラゴン使いの少女】
命乞いではなく死を望むか。
残念だが、それは叶えられん。
私も元は人間でな。
救える命は救いたいのさ、高慢ながら。
【真面目な剣士】
(傷が痛むのか苦しみながら)
私は、……主を…、王を……守れなかった…、守れ、……なかっ、た……!
主を守れぬばかりか…国を…国の為に、戦うことすら、出来ず…無様に、も…敵陣に、捕らえられ…、挙句……! 助かっ、て…しまった……!
殺してくれ…こんな、役目も果たせぬ、役たたずを…早く、……早く……殺してくれ……。
【ドラゴン使いの少女】
・・・・・・・・・。
助かる命には理由がある。
助からぬ命にもまた、悲しい理由がある。
其方が助かった理由は私には分からない。だが、今。其方の心臓は動いている。呼吸をしている。喋れている。僅かながら動けている。
少し、眠りなさい。
助かった其方の道はここで閉ざしていいものではない。
*
【ドラゴン使いの少女】
ああ、コルフィルス。長は何と? ……私の好きにしろ、か。当人である私が言うのもなんだが…長は私の事を甘やかし過ぎではないだろうか。
ハハッ、まぁいい。彼女は殺せと言ったが生憎殺してやるつもりもない。
コルフィルス、シュリーナはいつ戻る? そうか、戻り次第こちらに来るように言ってくれ。彼奴の治癒ならヒトにも効くだろう。
*
【真面目な剣士】
・・・・・・・・・。
【ドラゴン使いの少女】
おや、起きていたのか。
【真面目な剣士】
(掠れた声で)
何故……殺してくれなかった、
【ドラゴン使いの少女】
其方を拾った意味が無くなるからだ。其方を拾った川岸では時たまゴミが落ちている。その中にも服や少し壊れた装飾品があってな。よく直すのだ。
其方はそんな、拾われた物達と同じ。使わない物を直す必要は無い。死ぬしか運のない者を助ける必要も無い。
【真面目な剣士】
私は!! 生きる、資格なんて……無い……!!
【ドラゴン使いの少女】
・・・主君を守れなかったから、国を守れなかったから、だから殺せと其方は言ったな。
其方にとって、主君とは…国とは何だ。
【真面目な剣士】
・・・私の全てだ。・・・私が私である為に必要な私の、…私の全てだったんだ…。
出来損ないの私の頭を主はよく撫でて下さった。
王の近衛剣士である自分に国の民は感謝を向けて笑ってくれた。
私は……そんな主に…民に、国に……、…っにも、何も返せなかった…!
【ドラゴン使いの少女】
・・・・・・、少し。私の話をしよう。
【真面目な剣士】
…………?
【ドラゴン使いの少女】
先も言った通り、私は元人間でな。
もう滅びの道を辿り、なくなってしまった小さな村の出身だった。
長閑で平和な村だった。
そんな村にある日突然魔物の群れが押し寄せてきた。
業火の海に荒らされた私の村は一日も持たずに燃え尽きた。
私は炎の中で母を亡くし、父とはぐれ、兄を殺され、弟を死なせた。
ボロボロになった私は自分も魔物に殺され、死ぬのだと思いながら…それでも必死に走った。
気が付けば、ここにいた。
死にかけた私を警戒したドラゴンに一度は殺されかけたが何とか生きた。死にたくなかった。
私は・・・ドラゴンの里で彼らに育てられた。気が付けば、ドラゴンの里の濃い空気に順応し、歳を取らなくなっていた。
そしてまぁ……番なんてのを作ってしまって…とっくの昔に湧いていた愛着に乗っ取ってここにいるって訳だ。
・・・さあ、少しは落ち着いたか。
【真面目な剣士】
・・・・・・すまない、長い事、取り乱していたようだ。
【ドラゴン使いの少女】
気にしていない。元より私は其方を殺すつもりだってなかった。
言ったろう、助かる命には理由があると。
其方の後悔に涙があるのと同じだ。
【真面目な剣士】
・・・・・・アナタは・・・、主と少し似ているな。
【ドラゴン使いの少女】
これは光栄な事だ。
【真面目な剣士】
え?
【ドラゴン使いの少女】
其方が命を投げ出す程に信頼し、守っていた主君に似ているなど身に余る光栄というもの。
【真面目な剣士】
…………言葉が、上手だな。
【ドラゴン使いの少女】
伊達に何百年も生きておらんからな。
【真面目な剣士】
(言葉の途中で盛大に腹が鳴って)
え、いま何……て……、……あっ……
【ドラゴン使いの少女】
くははっ、愛らしい催促だ。今、コルフィルスに…私の愛息子に飯を持ってこさせよう。
たくさん飯を食って、たくさん寝て。少しずつ傷を癒そう。これからの事はそれから考えれば良い。
【真面目な剣士】
そ、うだな……感謝、する……。
【ドラゴン使いの少女】
お安い御用だ。
おーい、コルフィルスー! 腹ペコの患者が一人居るんだー! 私の番に言って飯を頼むー!
【真面目な剣士】
あ、わわっ・・・! あまり、そう大きな声で言わないでくれぇっ・・・!
STORY END.




