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研究職の中年が研究もせずに魔法でああだこうだでキリキリ舞い  作者: ディ・オル
第二章~学校編 vol.1~
18/28

町へ

前回のあらすじ。

臨時講師を務める事になった。

 暫くすると、時計は夜の九時を回っていた。トランプを止め、音無に明日の用意をさせる。学校に行く訳だが、教科書や体操着、そう言った物は所持していない。必要だとしても、あちらで貸して貰えるだろう。学習体験のようなものだから、座学が殆どだろうけど。但し、泊まり込みで講師を務める事を聞いているので、音無にも衣類や日用品を用意しておくように伝えておく。

 ……まぁカームシティから村まで、そう距離がある訳ではないから、土曜日や日曜日には帰省して支度を整えて、また町へ戻るつもりなのだけど。

 音無はリュックに必要なものを詰めていく。


 遠足気分なのか、大量のお菓子をリュックに詰め込んでは「あれ、パジャマが入らない」と呟く音無を見て、何だか大変になりそうだ、と俺は溜め息を吐いた。だが、それも一興だ、とも思う。


「あ、またこんなに食い散らかして……ゴミはゴミ箱へ!」


 ふと休憩室にあったテーブルを見やると、空になったお菓子の袋があったので、全てゴミ箱に捨てておいた。音無が学校という集団生活で溶け込めるか、不安でしか無い。あわよくば協調性やマナー、モラルといった諸々を学んでくれれば良いのだが……。

そう思いつつ、この日、俺は就寝した。



 そして次の日の朝。

 今朝は取り立てて忙しかった。俺は六時に起床すると、朝一番でコンビニまでダッシュしてきた。そして朝食を研究所で音無と食べながら過ごした。この後、すぐに学校まで出発して、校長へ挨拶し、朝会で全校生徒の前で挨拶をするのだとか。――昨夜の遅くに村長から電話が掛かって来て、「そういや、全校生徒への口上があるって言ったっけ?」と、超ド級の爆弾を投下してきたのだ。俺はブチ切れ寸前で声を荒げながらも、詳細を聞き、最後は唖然としながら通話を終えたのだった。

 寝る間も惜しんで、文言を考えようかと思ったのだが、もう今更、どうにでもなれ! と投げ出し、寝たのである。


「音無! ごはん食べ終わったか?」


「食べ終わったぞ美崎。そして、出来れば死ね」


「……まだ怒っているのか。ハァ、ごめんって言ったじゃないか」


 彼女はとても不機嫌だった。というのも、前日、音無が大事にとっておいた、まだ中身が残っているでん七豆の袋を俺が捨てたからだ。入っていないと思い、ゴミ箱に捨ててしまった。どうやら豆の外側の白い部分をガリガリと削り取って、豆だけを袋に蓄えていたらしい。なんとなくナッツ入りのチョコを食べる時、外側のチョコだけを溶かして食べ、ナッツを生かしておく的な。あの感覚に近いのだろうか。気持ちが分からなくもない。俺は謝罪をこめて新しく買い、ご機嫌斜めの女王へと献上した。そう、朝一番のコンビニへの全力疾走は、でん七豆を買ってくる為であった。目を血走らせたイカついオッサンが、ヒューヒューと息を切らしながら、でん七豆をコンビニまで買いに来たのだ。店員には「ヤバい奴が来た」と思われているだろう。


「また新しく買ってきたやつでガリガリすればいいじゃないか!」


「うるさい! 人の労力を台無しにしたことを恥じろ!」


「分かったよ! じゃあ俺が全部ガリガリしとくからっ!!」


「うわぁぁッ!?」


 俺はそう言って袋からでん七豆を掻き集めて口の中へ突っ込むと、舐めまわしまくった。音無の悲鳴が聞こえる。クソ! 自棄だ。こうなったら全部やってやる!


「朝からなんの騒ぎですか!」


 朝早くから研究所へ来ていた長谷部君が、休憩室へと入ってきた。


「先生、音無ちゃんに何かしたんですか?」


「フン、勘違いしないでほしいな長谷部君。いくら音無が可愛いからと言って、君みたいに手を出した訳じゃない! ……あれ? そんなこと考えてない……!? 長谷部君が!? そんなことを考えて―――」


 俺は動揺していた。ロリコン界を大震撼させたあの長谷部君が? あの「猟犬」とか「ロリコンの雄」とか「犯罪者予備軍」とか数々の異名を持つ長谷部君が、ムシケラを見るような目で俺を見ている? この状況で俺が音無に性的なイタズラをした、と推測しないだと!? その危険さ故に“性犯罪対策本部”を設置させた張本人とまで揶揄された、あの長谷部君が……?


「ちょっと待ってください。今、凄く失礼な事、考えていません?」


「いや、決してそのような事はございません……」


「何で敬語なんです? あ、またおやつで揉めているんですね。しょうがないなぁ。ハイ! 音無ちゃんコレあげる!」


 そんな俺の思考回路をよそに、長谷部君は音無にドライフルーツをあげていた。

 ありがとう、とお礼を言って受け取る音無。駄目だ、それを受け取っちゃ!! 知らない人(長谷部)から貰った物は食べちゃいけないんだ! ……でも機嫌を直してくれたみたいだし、まぁいいか。

 ていうか、皆チョイスおかしくない? なんでドライフルーツ?


「……音無。そろそろ出発しないと」


「んー、わかった」


 嬉しそうに頬張る音無に、俺は語りかけた。音無は適当に相槌を打つと、貰ったドライフルーツをリュックに仕舞い込む。


 研究所のスタッフが何人か受付で見送ってくれた。俺と音無が今日出発すると聞いて、来てくれていたのだ。実は長谷部君も、見送りに来てくれた一人である。こいつらなら安心してココを任せられる。


 *


 美崎は音無と一緒に町、つまりカームシティの学校まで、あまり整備されていない街道を歩く。距離はそんなに遠くないので、数十分も歩けば到着するだろう。

 美崎達が居た村には何もないので、町からやって来る人間は殆ど居ない。前日から用意していた生活用品、着替え、貴重品などが入ったバッグ。それから、研究所にあると皆が危ないかもしれない、と持ってきていた妖刀が入ったギターケースを揺らしながら、そんな閑散とした一路を辿る。

 「町」というが実際のところ「都市」に近い。美崎も頻繁に行くのだが、ただならぬ広さとひしめき合う高層建築物、そして人の多さ、店舗や会社、施設の数々……。一つの国家として完成していると言っても過言ではなく、日進月歩する様相には敬嘆せずに居られない。

 そびえ立つ摩天楼は村からでも見えるのだが、村から暫く歩くと、その途轍もない高さを美崎達へと曝け出した。同時に、町の囂囂とした様子が薄らと聞こえて来る。町の入り口――住宅が連なっているので、どこからが入り口なのかは判然としないが、カームシティの商店街がある大通り付近――が見えて来ると、音無が美崎へと語りかける。


「泊る所はどこなんだ? 美崎」


「ああ。学生寮の一部屋を貸してもらえるそうだよ。二人部屋らしい」


「成程。相部屋か。美崎が変な事を考えなきゃいいのだが」


「考えるか! 年の差いくつあると思ってんだ! ほぼ親子レベルだぞ!? ……まぁ、一旦荷物はそこに置いてから、今後の流れを決めようかね」


 町の入り口を過ぎる。朝早いのだが、学生、会社員、主婦など、既に大勢の人で賑わいを見せている。

村長に学校までの地図を貰っていたのだが、学生時代はその学校に通っていたので、大袈裟だと思った。道も分かる。それに、丁度学校へと登校する少年少女達が大勢見て取れた。マンモス校、という奴だろう。まだ時刻にして七時頃なのだが、その膨大な人数である学生の流れに乗っていけば、そのまま目的地に辿り着けると思われた。


中途半端な所で終わってしまいました。。。

次回からは学校の内部へと、入ります。

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